◆ 信号は、2本の信号線を通って伝わります(図.1)。
◆ 信号線の、往きと復りとで信号が一巡し、回路 △を構成します。日本語の回路、英語のCIRCUIT は、信号が一巡するところから、名付けられたものです。信号が一巡する回路が構成されなければ、電流は流れることが、できません。
信号線は、1本だと思うかも知れません。確かに回路図などでは、多くの場合、信号線は、図.2(a) のように、1本で表わされています。
◆ 図面の上では、1 本線であっても、実は別にグラウンド線があり、このグラウンド線 が共通の戻り線 になっているのです(図.2(c))。しかし、回路図の上では、このように書かれることはありません。高々、図.2(b)のように、グラウンド記号が書いてある程度です。
信号線 は、理想的には、自分自身ガ、往きと、復りとの 2 本の線を持っていることです。実際にも、ノイズに対して、厳しい条件のときは、このようにします。
戻り線が全く無い、1 本線では、信号は伝わりません。しかし、共通であっても、とにかく、戻り道さえあれば、信号は伝わります。
◆ 経済性を考えれば、線の本数は、少ないほど良いのですから、ほとんどの場合は、共通線方式が使われています。共通線方式の欠点は、ノイズに強くないことです。したがって、高い耐ノイズ性が要求されるときは、各信号ごとに 2 本の線を使用します(4.(1)参照)。
この、共通の戻り線である、グラウンド線は、電子回路が動作する基準になる電位を与える場所でもあります。この、電子回路が動作する基準になる電位を与える場所のことも、グラウンド と言います。
◆ 通常は、同じ、一つのものが、信号の共通の戻り線と、電子回路の動作の基準となる電位を与える場所と言う、2 つの役割を兼ねているのです。
上記の、2 つの役を兼ねていると言うことが、実は、ノイズ発生の原因になります。信号線は、回路図上は、理想的な ゼロインピーダンスですが、現実には、インピーダンスを持っています。インピーダンスに電流が流れれば、電圧が発生します。この電圧は、ノイズです。
◆ グラウンドは、アース とも言い、その日本語は接地です。これらは通常同じ意味に使われています。ただし、この講座では、アースの言葉は、原則として使用しません。また、グラウンドと接地の意味を使い分けています(2.(5-B)。この使い分けは、この講座特有のことです。一般性は、ありません。
グラウンドは、ノイズ対策上、極めて重要です。グラウンドに関しては、第 9 章 〜 第 11 章で、詳しく、解説します。
◆ 信号が伝わる様子を、さらに詳しく眺めてみましょう(図.3)。
◆ (欲しい)信号は、線が2本必要ですから、信号源 △ ES から線を2本引いて、信号を、レシーバ △に伝えます。
基準電位 ER=0 からの、2本の線の電圧を、それぞれ EA および EB とすれば、2本の線間の電圧 EN は、
で表わされます。
◆ この、2本の線間を電圧の形で伝わる信号をノーマルモード 信号と呼びます。
また、2 本の線には、共通な電圧が存在します。2 本の線の電圧が等しくない場合には、共通の電圧を、次のように定義します。図.3において、2 本の線は、それぞれ基準電位から、電圧 EA および EB です。このとき、2 本の線に共通な電圧 EC は、
で定義され、これをコモンモード 信号といいます。コモンモード信号は、2本の信号線に共通の電圧です。
◆ ノーマルモードは、2 本の線の間における電圧で、ディファレンシャルモード または正相 とも言います。コモンモードは、同相 とも呼んでいます。
[注]
一般に信号には、電圧が使われることが多いので、信号のモードを、電圧で説明しましました。
電流にも、電圧と同様に、モードがあります。2本の線を流れる電流は、互いに逆方向に流れる電流をノーマルモード電流、同一方向に流れる電流をコモンモード電流といいます。
◆ 信号を2本の線で伝えるときは、信号のモードは上記のように表わすことができ、コモンモードは、(1) 式のように定義されています。
信号線を、2 本引くときは、この定義どおりで、問題ありません。
しかし一般には、信号の戻り線が、共通の戻り線になっています。このときは、図 4のように考えて、
コモンモード 信号を、
のように表わした方が、分かり易く実用的です。
◆ この講座では、両方の定義を使用します。
信号を2本の線で伝えるときは、(2)による定義を、共通のグラウンド線を使用しているときは、ここに示した定義を使用するのが便利です。
◆ コモンモード信号も、信号源からレシーバに伝わります。この意味では、信号線が、真に1本だけでも、原理的には、信号は伝わります。
ただし、このときでも、信号の戻り線は、必要です。信号線が 1 本だけのときは、基準電位を与える場所としての大地が、戻り線になります。
◆ しかし、信号を誤差無く伝えるという点では、このような 1 本線の、コモンモード信号は、2 本線を引くノーマルモードに対して、遥かに劣ります。
信号の戻り線としての大地は、基準となる電位を与える場所として利用できます。しかし、その電位は、場所によって異なります。このことが、信号にとって、大きな誤差になります。
◆ 以上の理由から、(欲しい)信号は、2 本線のノーマルモードを使用して伝えます。1 本線のコモンモードを使用することはありません。
これに対して、ノイズは勝手に乗ってきますから、ノーマルモードノイズ、コモンモードノイズの両方があります。
◆ ノーマルモードノイズは、信号も、ノーマルモードですから、同じ性質です。信号と見分けることはできません。ノーマルモードノイズが有害であることは、当然です。
では、コモンモードノズは有害なのでしょうか。信号とモードが異なりますから、モードの違いを利用して、無害にすることが、可能です。しかし、実際には、有害なコモンモードノイズ と無害なコモンモードノイズ とがあります。
◆
図 4の表わし方で説明した方が分かり易いので、これで説明しますが、図 3の表わし方でも同じことです。
図 4は、コモンモード電圧の定義を示すための図ですから、信号線は、ゼロインピーダンスとして書いてあります。しかし、実際の信号線には、インピーダンス △がありますから、図 5のようになります。
ZA、ZB は信号線のインピーダンスです。
◆ ノイズは勝手にどこにでも乗ってきます。図では、コモンモード電圧は、EC1 と EC2 との 2 個所に乗るものとして、示してあります。
まず、EC2 が無く、EC1 だけの場合を考えます。レシーバのインピーダンスが実用上無限大であれば、インピーダンスZA、ZB には電流が流れません。電流がゼロであれば、インピーダンスの両端には電圧は発生しません。
◆ 結局、EF = EB = EC1、 ED = EA = EN+EC1 であり、コモンモード電圧が加わっても、レシーバには、ノーマルモード電圧 EN が掛かります。
すなわち、誤差は発生しません。
◆ しかし、コモンモード電圧 EC1 だけでなく、さらにコモンモード電圧 EC2 が、レシーバ側に加わったときは、レシーバの電圧 EF は EC2 になります。
このとき、EF = EC2、ED = EA = EC1+EN ですから、レシーバには、
   
ED-EF = EN+EC1-EC2
の電圧が掛かります。
◆ EC1 = EC2 であれば、レシーバはノーマルモード電圧 EN だけが掛かります。これは無害です。
しかし、EC2≠EC1 であれば、レシーバには、コモンモードノイズ (EC1-EC2) が加算されて、誤差が発生します。
◆ 以上から、次にことが言えます。
コモンモードノイズが加わっても、コモンモードのイズが、システム全体を一様に変化させるように働く場合には無害です。
これに対して、場所によって異なるコモンモード電圧が加わるときは、害を与えることがあります。
◆ 2.(2)に示したように、コモンモード電圧は、基準電位からの電圧です。具体的に、基準電位 をどこに取ったら良いのでしょうか。
高さの基準として使用されているのは、海抜 です。
しかし、実際に海抜を意識することは稀です。建物の高さを考えるときは、その建物が建っている地面が基準になります。
◆ その場所が平坦でなければ、その中のどこか1点を基準にします。
これと同様に、基準の電位は、そのシステムを考える範囲で、基準と見なすことができる場所にとります。
一般には、そのシステムの付近にある大地 の電位を基準に取ることが多いでしょう。
通常は、これで差し支えはありません。
◆ ただし、地面に凹凸があるのと同様に、大地の電位も、場所によって異なります(図 6)。
◆ この差を防ぐためには、対象とするシステム内の、どこか一箇所を選んで、その点を基準点とします。
この基準点は、安定した、電位の基準と見なすことができる個所であればよく、大地に限定する必要はありません。
◆ 電子回路には、信号の戻り線としての、グラウンドがあります。
このグラウンドは、回路動作の基準となる電圧を与えるところでもあります。
電子回路は、電源を必要とします。グラウンドは、電源電圧の基準点でもあります。
信号を2本線で伝える方式の場合においても、電源電圧の基準点であり、回路動作の基準となる電圧を与えるところとしての、グラウンドが、必要です。
この、回路動作の基準となるところが不安定では困ります。できるだけ安定していることが望まれます。
◆
大きな重い石は、小さな軽い石よりも安定しています。
これと同じように、寸法が大きな電気の導体はキャパシタンスが大きいのです。
寸法が小さく、したがってキャパシタンスが小さい、電気の導体よりも、寸法が大きく、キャパシタンスが大きい電気の導体の方が、電気的に安定しています。
この意味で、回路動作の基準となるグラウンドは、できるだけ大きな電気の導体であることが望ましいのです。
◆ また、回路動作の基準となるグラウンドの安定性が、自分だけでは不充分なときに、その安定性を高くするために、回路動作の基準となるグラウンドを、付近の大きな電気の導体に電気的に接続することも、有効な方法です。
世の中で、最も大きな電気の導体の塊は、大地です。回路動作の基準となるグラウンドを、大地と電気的に接続することが有効です。
回路動作の基準となるグラウンドを大地に電気的に接続することも、通常グラウンドまたはアースと呼んでいます。
このように、同じ言葉が、2つの意味に使用されているため、混乱を招いています。
◆ 通常は接地もグラウンドの同義語ですが、この講座では、とくに、大地との接続を「接地 」と呼ぶことにします。回路動作の基準となる電位の場所は、グラウンドと呼びます。(図 7)。図のように、記号も、区別します。ただし、両者を区別して呼ぶ必要がないときや、両者を兼ねるときもあります。このときも、グラウンドと呼びます。とくに、区別を明確にする必要があるときは、説明で補足します。
◆ 大地は、最も大きな電気の導体です。この意味では、接地の対象として理想的です。
しかし、大地の導電率 は、あまり高くありません(導電率を s、抵抗率△を R とすれば、s = 1/R です)。大地に電流が流れれば、場所による電位の違いが発生します。
また、大地は、電解質を含んでいます。したがって、電解質による電池作用もあり、これによっても、場所による電位の違いが生じます。
◆ 大地は、場所によって電位は異なりますし、同一場所における電位の安定性も高いとは言えません。この意味では、大地は、電位の基準となる場所として、決して理想的ではありません。しかし、身近に得られるものの中では、最も安定した存在です。
◆ 回路動作の基準となるグラウンドを、接地する、すなわち大地に接続する目的は、自分よりも、安定した電位の場所に接続することによって、自分の電位の安定性を高くすることにあります。
この目的を達成できるなら、大地への接続に限定する必要は、ありません。
電子機器自身のグラウンドよりも、十分に大きな電気の導体であれば、そこに電子機器自身のグラウンドを、接続することによって、電子機器自身のグラウンドを、より安定させるという、目的を達成することが、できます。
◆ この目的を達成できるのであれば、大地への接続以外の手段であっても、接地と呼ぶことにします。
たとえば、航空機では、大地に接地することは不可能です。航空機で得られる最も大きな電気の導体は、機体です。
航空機では、機体に接地します。
◆ 電子機器の接地は、必須ではありません。電子機器を接地する目的は、電子機器自身のグラウンドの電位を、より安定させることが目的であり、それ以上のものではありません。
携帯機器は、接地しませんが使用できます。
[注]
接地は、ここに示したのとは、別の目的でも使用されています。保安を目的とした、フレーム接地と呼ばれるものです。
フレーム接地と区別するために、電子機器の電位を安定させることを目的とした接地のことを、シグナル接地と呼びます。
◆ システムが互いに離れた場所にある2つの機器から成り、機器相互を信号線で接続した場合を考えます(図 8)。
◆ 図.6 に示したように、離れた場所の大地の電位は等しくありません。機器 A の接地点の電位を EA、機器 B の接地点の電位を EB とすれば、機器 A 内のドライバ DA と機器 B 内のレシーバ RB との間には、コモンモード電圧(EA-EB)が掛かっています。
このコモンモード電圧によって、レシーバ RB の入力電圧が、レシーバの動作範囲を外れれば、レシーバは誤動作します。信号は正しく伝わりません。
すなわち、接地電位の差が、有害なコモンモードノイズになり得ます。互いに離れた場所にある機器を、それぞれの場所で大地に接地すると、このような危険性があります。
[注] 互いに離れているなどの、原因によって、大きなコモンモードのイズが存在するときに、正しく信号のやり取りを可能する手段があります。絶縁と呼ばれる手段です。絶縁は、第 19 章で解説します。
◆ (欲しい)信号は、ノーマルモードです。ノーマルモードノイズは、信号とモードが同じです。
モードが、同じであると、乗ってしまったノイズを、信号から除去することは、本質的には、不可能です。
したがって、ノーマルモードノイズ対策の第一は、ノーマルモードノイズを、乗せないようにすることです。
◆ ただし、信号とノイズとの、周波数帯域が異なっているときは、周波数帯域の差を利用して、信号からノイズを除去することができます。
一般に、ノイズの周波数帯域は、信号の周波数帯域よりも高周波です。したがって、ローパスフィルタ △を使用します(図.9)。
★ フィルタ △とは、何らかの目的で、何かを濾しとる(濾過する)ものです。最も普通には、汚いものを濾しとってきれいにします。たとえば、車には、いろいろなフィルタが、搭載されています(下図左)。ウェブフィルタもあります。ウェブフィルタは、特定の内容のものをフィルタします。ウィルス対策フィルタは、ウェブ上のウィルスを除去します。子供に見せたくないものをフィルタする、ウェブフィルタもあります(下図右)。
★ さて、電気のフィルタは、入力信号のうち、ある特定の周波数帯域の信号をそのまま通過させ、その他の周波数帯域の信号を減衰させて除去する要素です。
低い周波数帯域をそのまま通し、高い周波数の信号を取り除くフィルタが、ローパスフィルタ (低域通過フィルタ )△です。
逆に高い周波数帯域を通過させ、低い周波数を阻止するのが、ハイパスフィルタ (高域通過フィルタ )△です。
また、ある中間の周波数帯域の信号を通過させ、それより低い周波数と高い周波数を共に阻止するフィルタもあります。これをバンドパスフィルタ (帯域通過フィルタ )△といいます。
★ ノイズは、一般に信号よりも高周波ですから、ノイズ除去にはローパスフィルタを使用します。簡単なローパスフィルタに、抵抗△とコンデンサ△を使用した RC フィルタ △、インダクタ△とコンデンサを使用した LC フィルタ △があります。
★ これらのフィルタは、コンデンサが、高い周波数でインピーダンス △が低いことを利用して、高周波のノイズを、コンデンサにバイパスさせ、フィルタの下流側に行かないという効果を利用したものです。
一般にフィルタは、抵抗、コンデンサ、インダクタの組み合わせで構成されます。これらの素子だけで構成したフィルタをパッシブフィルタ (受動フィルタ )△、増幅回路を使用したものをアクティブフィルタ (能動フィルタ )△と呼んでいます。
★ アクティブフィルタの方が,より性能が高いものを作ることができます。しかし、通常のノイズフィルタには、アクティブフィルタは不向きであり、パッシブフィルタを使用します。
ノイズは、非常に高い周波数まで含むことがあります。アクティブフィルタは、フィルタが動作する周波数帯域に限界があるからです。
★ フィルタにおいて、信号を通過させる周波数帯域を通過域 △、通過するのを阻止する周波数帯域を阻止域 △といいます。理想的には、周波数特性は、
のように、通過域では完全にフラット、通過域と阻止域との境界は垂直になっていて欲しいわけです。
★ しかし実際には、
のようになります。一般に通過域の低い方の周波数ではフラットになりますが、阻止域との境界付近では、特性に、凹凸が生じる場合があります。阻止域は、垂直にはならず、有限の傾斜を持ちます。
★ 周波数特性は、図に示したように、横軸を周波数(対数)、縦軸を入出力の振幅比デシベル(dB)で表わすのが一般です。この縦軸のことをゲイン (利得 )△といいます。
一般に、通過域から阻止域にいたるゲインの変化は、連続的です。通過域と阻止域との境界を、定量化するために、カットオフ周波数 (遮断周波数)△ fc を定義します。カットオフ周波数 fc は,図に示すように、通過域のフラットな部分から 3dB 下がった点の周波数です。
★ 上図の RC フィルタは、1次フィルタ ともいいます。この場合、抵抗を R、キャパシタンスを C とすれば、T=RC をフィルタの時定数 △といい、fc=1/(2πT) の関係があります。
なお、横軸は周波数 f の代わりに、角速度 △ ω も多く使用されています。角速度は、正弦波形を正弦関数で表わしたときの、sin(ωt +φ) の ω です。ω=2πf であり、周波数 f と角速度 ω は比例関係にあります。したがって単位は異なりますが同じことを表わします。
★ このように、周波数と同じ意味に角速度が使用されることから、角速度 ω のことを角周波数 の名でも呼んでいます。
周波数特性を横軸を周波数(または角速度)の対数、縦軸をデシベルで表わした図をボード線図 △といいます。
★ なお、フィルタの特性は、フィルタ単体だけでは、決まりません。フィルタの前後の特性に依存します(10.[コラム.1]参照)
フィルタに関して、さらに定量的なことは、下記の自動制御 WEB 講座の記事を参考にして下さい。
自動制御WEB講座「3.1.1.(4)、3.1.1.(5)、3.1.2.(2)、3.1.2.(3)」
◆ コモンモード △ノイズも、信号とノイズの周波数帯域が離れているときは、周波数帯域の差を利用して、フィルタ △によって、ノイズを除去することができます。
ただし、[コラム 1]の図に示したフィルタは、ノーマルモードをフィルタすることができますが、コモンモードを除去することはできません。
これらのフィルタの効果は、高い周波数の信号を、コンデンサを通してバイパスさせ、フィルタの下流に行かないようにすることによるものです。
図のフィルタは、ノーマルモードをバイパスさせる道はありますが、コモンモードはバイパスされません。
◆ コモンモード用フィルタ は、コモンモードをバイパス させる通り道がある、フィルタです(図 10)。
[注] この図では、コモンモード信号の戻りは、接地になっています。コモンモード信号の戻りは、コモンモードノイズの発生源に戻します。この戻り道は、接地であることが多いのです。しかし、異なることもあります。
◆ コモンモードノイズは、信号とモード△が異なりますから、モードの違いを利用して除去することができます。
その代表例が、ディファレンシャル形レシーバの利用です(図 11)。
◆ ディファレンシャル形レシーバ △は、2つの入力信号の差電圧を検出します。
図のように接続すれば、原理的にノーマルモードだけを受け入れ、コモンモードはキャンセルされます。
ただし、レシーバは、そのレシーバによって決まる入力電圧範囲を超えると動作できません。すなわち、大きなコモンモードノイズには,対応することができません。
◆ レシーバ には、シングル形と呼ばれるものがあります(図 12)。
◆ シングル形レシーバ は、コモンモードを除去することができません。
シングル形レシーバの入力は、1 つだけであり、グラウンドとの差電圧を検出します。
2本線で信号を導いても、レシーバとの接続は、図.12 のようになります。
信号線は、さきに述べたように、(インピーダンス △)を持っています(図のZ1、Z2、Z3)。
信号源△ ES のところのコモンモード電圧は EN ですが、レシーバのところでは、E2=0 となります。
一方レシーバのインピーダンス ZR は大きいので、レシーバ入力は、E1=ES+EN となって、信号 ES にコモンモードノイズ EN が加算されてしまいます。
◆ 信号源の電圧は、レシーバのところでは、信号源からレシーバまでのインピーダンス Z1 と、レシーバのインピーダンス ZR とによって、分圧されます(図 13)。ただし、通常は、レシーバの入力インピーダンス△ ZR が、Z1 に比べて大きいので、図に示したように、無視されます。
◆ コモンモードノイズは、非常に大きな値になることがあります。
このようなときは、ディファレンシャル形レシーバを使用しても、レシーバの入力電圧がレシーバの動作可能範囲を超えてしまうために、誤動作します。
非常に大きなコモンモードノイズに対しては、別の手段が必要です。
たとえば、絶縁と呼ばれる方法で対応することができます。