電気と電子のお話

2. 電流と電流を流す回路

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2.2. 電気には直流と交流がある


2.2.(1) 交流とは

2.2.(1-A) 流れる向きが変わる交流

◆ 今度は、交流のお話です。私たちの家庭で、日常使っている電気は、交流 100V です。電気には、直流と交流があります。いつも使っている電気が交流だということは、交流が、使いやすい便利な性質を持っているからです。たとえば、交流は、トランスによって、電圧を容易に変えることができます。
直流 (DC )は、一定の電流値が続く波形です。身近な直流の代表例が、電池 (バッテリ )です(図 2.1-1)。また、パソコンなど、多くの電子機器は、直流で動作しています。これらの機器を、交流の 100V 電源に接続して、使用するときは、機器の内部で、交流を直流に変換しています。

[図 2.2-1] 電池

電池

◆ 交流 (AC )は、プラスとマイナスが、交互に繰り返す波形です(図 2.2-2)。分かりやすいように、動画を入れてあります。右記の、「交流」をクリックしてください。戻るときは、ブラウザの「戻る」を使ってください。

[図 2.2-2] 直流と交流の波形

直流と交流の波形

◆ 上図の交流は、波形が正弦波形
     v = Vm sin(ωt)
で表される、最も普通の交流です。ただし、交流は、正弦波形には限定されません(図 2.1-3)。交流波形の条件は、
  (a) 繰り返し波形であること。
  (b) プラス/マイナスに変化し、平均値がゼロであること。
の 2 つです。平均値がゼロで無い波形は、平均値がゼロである交流波形と、直流との和で表すことができます。

[図 2.2-3] いろいろな交流波形

いろいろな交流波形


2.2.(1-B) 交流の特性を示すいろいろな値

◆ 交流は、時々刻々、その大きさが変化しています。交流の電圧は、以下に示す特性値によって、表わすことができます。
 (a) 周期 T、周波数 f と角速度 ω 周期 T は、交流波形が、1 回繰り返す時間で、図 2.2-2 または 図 2.2-3 の T の値です。周波数 f は、周期 T の逆数で、単位は [Hz  ヘルツ ] です。角速度 ω は、回転速度で、角度を [rad   ラジアン ] で表したとき、rad / 秒です。私たちは、通常、角度を「°」(デグリー )で表しますが、理論的な場合には、ラジアンを使用します。
     周波数の定義
の関係があります。
なお、交流の、1 周期のことを、サイクル といいます。
 (b) 瞬時値 v 任意の時刻における、その瞬間の値です。
 (c) 最大値 Vm振幅 A 1 周期 T 内の最大の値です。振幅も最大値と同じです。プラスの最大値と、マイナスの最大値とが、あります。プラスとマイナスの最大値は、同じ大きさです。
 (d) 平均値 Vav プラスの半周期の間の平均値です。マイナスの半周期の平均値と、同じ大きさです。
 (e) 実効値 Vrms 負荷抵抗に、ある大きさの交流を流したときと、直流を流したときに発生する電力(熱量)が同じであるとき、その直流の値を、交流の実効値 といいます。

[図 2.2-4] 実効値

実効値

◆ この定義から推測されるように、実効値を使用することによって、直流のときに成立した、オームの法則や、ジュールの法則は、そのまま、交流でも成立します。交流において、単に、電圧とか電流などと、言ったときは、実効値を意味します。数学的には、実効値は、瞬時値の 2 乗を平均した値の平方根です。2 乗しているのは、式(2.2.12) によります。
     実効値(1)
正弦波形の場合には、実効値は、次のようになります。
     実効値(2)
◆ その他の波形の特性値を図 2.2-5 に示します。

[図 2.2-5] 各種波形の特性値

各種波形の特性値


2.2.(1-C) ディジタルにはパルス波形を使う

◆ 交流ではありませんが、交流と似たような波形に、パルス波形があります。私たちは、アナログ の世界に住んでいます。しかし、最近は、あらゆる分野で、ディジタル (デジタル )化が、進んでいます。信号にも、ディジタル信号 が、多く使われています。ディジタル信号は、電圧のハイとローとによって、2 進数の 1 と 0 とを表します。このような、電圧のハイとローとを識別するための波形が、パルス波形 (パルス )です(図 2.2-6)。パルス波形の中には、交流と同様に、プラス/マイナスに、振れるものもありますが、多くは、図のように、ゼロから、片方向に振れます。

[図 2.2-6] パルス波形

パルス波形

◆ パルス波形の特性は、次の通りです。
 (a) 振幅 V0-p ゼロ ツ ピーク 電圧
 (b) 周期 繰り返し周期 T
 (c) 周波数 繰り返し周波数 f [PPS Pulse per second]、 f = 1 / T
 (d) パルス幅 tp
 (e) デューティー比  単にデューティー ともいいます。周期 T に占めるパルス幅 tp の比、tp / T で表します。
ただし、図の波形は、理想波形です。実際の波形は、図 2.1-7 のように、信号の立ち上がり tr、立下り tf が、鈍ります。

[図 2.2-7] 実際のパルス波形

実際のパルス波形

◆ パルス波形の特性値を、次に示します。
 (a) 立ち上がり時間 (ライズタイム ) tr
 (b) 立下り時間 (フォールタイム ) tf
 (c) パルス幅 (半値幅 ) tp

[コラム 2.2-1] 商用電源

★ 私たちが日常使っている交流電気は、電力会社から買っています。これを、商用電源 と言います。商用電源の仕様は、国によって異なります。各国の商用電源の電圧周波数を示します。

各国の商用電源

★ 上記のように、商用電源の仕様が国によって異なりますから、日常使用する電気器具が、そのままでは、海外では使えない場合があります。その、電気器具の、電源電圧や周波数の範囲が、その国の商用電源で使用可能であったとしても、コンセント (差込み)の形が同じでないと使えません。
このための、アダプタ が、旅行用品の売り場で売られています。

各国のコンセント

★ 日本の商用電源は、電圧は、100V に統一されていますが、地域によって、周波数が異なります(50Hz と 60Hz)。当初、発電設備は輸入でしたが、その相手国が、ヨーロッパと米国の両方だった、ためです。
大雑把にいうと、図のようになります。ただし、細かな例外があります。

日本の商用電源

★ 商用電源の周波数が、電気器具の所定の周波数と異なっても、そのまま使用できる場合が多いのです。しかし、モータを使用しているものでは、モータの種類によっては、そのままでは使えない場合があります。掃除機や、ジューサーミキサーなどは、整流子モータという周波数に関係ないモータを使用しているので、影響はありません。
製品に、50Hz 用、60Hz 用などと書かれているものは、多くは、そのままでは、異なる周波数では、使えません。動作はしても、モータの回転数が異なったり、出力が低下すことが、あります。



[コラム 2.2-1a] アナログとディジタル

★ データには、アナログ のデータと、ディジタル (デジタル )のデータとがあります。たとえば、時計には、アナログ時計 ディジタル時計 とがあります。

アナログ時計とディジタル時計

★ アナログ量 は、たとえば、長さ のように、その大きさを問題にする量です。そして、アナログは、連続 していて、切れ目がありません。切れ目が無いということは、どこで切っても、そこには値があるということです。
★ 連続であるということは、逆に、連続で無いケースを示す方が、分かり易いでしょう。アナログ信号で、連続していないところは、その端を除けば、特殊な場所です。

連続でないとは

★ ディジタルは、1 つ、2 つと、数を数えることができる量です。1 と 2 との間は飛んでいて、その間には、値が存在しません。

アナログとディジタル

★ ディジタルの 数には、小数 があります、小数を使えば、間を縮めることができます。しかし、1.01 と 1.01 との間は、空いています。小数の桁数は、無限に大きくすることができます。しかし、小数の桁数を、無限大にしても、依然として、切れ目が存在します。

★ 時計を例にして、アナログとディジタルとを、比較して見ましょう。
今の時刻を知りたいとき、時計を見ます。このとき、正確な値を読み取りたいときは、ディジタルが優れています。しかし、今何時ごろかな? というときは、アナログの方が、分かりやすいでしょう。
★ 表示 に関しては、正確に読み取るという点では、ディジタルが勝っています。しかし、概略値を、瞬間的に読み取ることに関しては、アナログが優れています。
ディジタルは、数字 を、一桁ごとに、読み取る必要があります。アナログでは、時刻を読み取るのではなく、パターン として認識できます。
★ 私たちが、時計を見るとき、時刻を秒まで知りたいことは、少ないでしょう。それよりも、「いま何時ごろかかな?」、「 もう 12 時を過ぎたのかな?」 ということの方が、多いでしょう。
ディジタルの時計であれば、このようなときでも、数字を一つ一つ読み込んで、さらに頭の中で、引き算をする必要があります。

★ データ処理 を行う立場から、アナログとディジタルとを、比較して見ましょう。
データ処理を行う装置に、コンピュータ があります。このコンピュータにも、アナログコンピュータ と、ディジタルコンピュータ とが、あります。下図は、アナログコンピュータです。

アナログコンピュータ

★ アナログコンピュータは、以前使われていましたが、最近では、あまり見かけません。アナログコンピュータで使われる変数は、主に電圧(V)で、時間(t)の関数 V(t) です。アナログコンピュータは、時間 t を独立変数 とする、微分方程式 を解くのが、得意です。
アナログコンピュータでは、実際の独立変数が時間で無い場合も、その、実際の独立変数を、時間変数に変換して、微分方程式を解きます。
★ 現在使われているコンピュータは、ほとんどが、ディジタルコンピュータで、単にコンピュータというと、ディジタルコンピュータを、意味します。
ディジタルコンピュータは、パソコン の名で、広く使われています。また、マイコン の名で、家電 などに組み込まれており、コンピュータを意識することなく、利用しています。
ディジタルコンピュータついては、後に、詳細に、説明します。


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