電気と電子のお話

4. 半導体の働き

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4.3. トランジスタ

4.3.(4) トランジスタ回路

4.3.(4-A) 概   要

◆ ここでは、トランジスタを使用するための、基本回路について、説明します。
トランジスタは、アナログ連続制御と、ディジタルオンオフ制御の両方に、用いられています。しかし、アナログの連続制御には、オペアンプ IC を利用することが多いでしょう。汎用のオペアンプ IC は、低価格で、かつ使いやすいので、わざわざ、トランジスタ回路を組む必要性は、あまり無いと思われます。
ディジタルのオンオフ制御においても、IC 化された製品があり、便利に使用できます。これらの IC を使用するときは、トランジスタ回路としての設計は不要です。
◆ しかし、インターフェースにおける、スイッチングには、トランジスタを使用することも、多いと思います。

4.3.(4-B) 基本回路

◆ トランジスタには、ベース(B)、コレクタ(C)、エミッタ(E) の 3 つの端子があります。この、どれを、共通回路(共通回路は、一般には、グラウンドですが、グラウンド以外のこともあります)にするかによって、3 種類に分けられます(図 4.3-17)。図で、Vs は入力信号、RL は負荷です。

[図 4.3-17] トランジスタの基本回路

トランジスタの基本回路

◆ ベース共通回路 は、入力インピーダンスが低く、出力インピーダンスが高いことが特徴です。他の2回路に比べて周波数特性が一番勝れています。電圧増幅作用は、ありますが、電流増幅作用はありません。エミッタ共通回路と、カスケード接続によって組み合わせて、周波数特性の良い、高増幅率アンプを、構成することができます。
◆ エミッタ共通回路 の、入出力インピーダンスは、他の 2 回路に比べて、中くらいです。周波数特性は良くありませんが、増幅率は大きいです。現在、最も使われている回路です。この、お話でも、エミッタ共通回路が、主体です。
◆ コレクタ共通回路 は、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いことが、特徴です。電流増幅作用はありますが、電圧増幅作用はありません。インピーダンス変換 (図 4.3-18)やバッファー として使用することができます。

[図 4.3-18] インピーダンス変換

インピーダンス変換

◆ バッファも、インピーダンス変換を行う素子です。入出力の電圧が等しく、出力インピーダンスが、入力インピーダンスと等しいかまたは低いインピーダンスに変換するものを、バッファと言います。
バッファは、入出力の電圧が等しいという意味では、何も仕事をしませんが、インピーダンスを下げるという、効果のほかに、下流側の影響が上流側に伝わることを防ぐという、効果があります。

4.3.(4-C) スイッチ回路

◆ 図 4.3-17 は、接続のやり方だけを、示したものです。具体的なスイッチング回路は、エミッタ共通回路を例に取ると、図 4.3-19 のようになります。この回路の動作は、図に示した SW と等価です。

[図 4.3-19] 具体的なエミッタ共通のスイッチング回路

具体的なエミッタ共通のスイッチング回路

◆ 図で、入力 Vs がローのときは、ベース電流 IB はゼロで、トランジスタは、オフです入力 Vs をハイにすれば、抵抗 R1 を介してベース電流 IB が流れ、トランジスタは、オンになります。
抵抗 R1 は、トランジスタのベースに過大な電流が流れないために、電流を制限する抵抗で、ベース抵抗 といいます。
ベース抵抗 R1 の値は、必要なコレクタ電流 Ic と、トランジスタの直流電流増幅率 hFE とから求まります。しかし実用上は、コレクタ〜エミッタ間電圧の値を十分に小さくするために、ベース抵抗 R1 の値は、上記の計算よりも小さくします。たとえば、ベース電流 IB が、コレクタ電流 Ic の 1/10 程度になるように取ります。
◆ コンデンサ C1 は、トランジスタのスイッチング速度を速くするためのもので、スピードアップコンデンサ といいます。低速の場合には不用です。
◆ 抵抗 R2 は、入力 Vs の性質に依存し、必要なときと、無くても動作するときとがあります。入力 Vs がローのとき、入力 Vs が電流を吸い込む能力を十分に持っているときは、R2 は無くても差し支えありません。入力 Vs がローのとき、入力 Vs の出力インピーダンスが高い場合には、R2 が必要です。R2 の値は、適当で良く、たとえば、R1 と同じ値にします。
◆ トランジスタの負荷が、インダクタンス成分を含む場合には、トランジスタをオフするときに、インダクタンスによる起電力が発生します(コイルの作用)。インダクタンス成分を含む負荷は、リレー電磁開閉器モータなど、広く一般に存在します。この起電力は、大きなサージとなります。これを防ぐために、インダクタンスによる起電力をバイパスさせるという、対策が必要です(図 4.3-20)。この対策は、トランジスタに限らず、一般のスイッチでも必要です。トランジスタ回路の電源は、DC (直流)電源ですから、図の(C) が多く使われています。

[図 4.3-20] サージ対策の方法

サージ対策の方法

4.3.(4-D) 増幅回路

4.3.(4-D-a) 回路構成

◆ トランジスタ増幅回路について、説明します。先に述べたように増幅器として、トランジスタ回路を組むことは、少ないと思います。しかし、トランジスタの基本ですから、簡単に説明しておきます。
トランジスタ増幅回路 の例を、図 4.3-21 に示します。

[図 4.3-21] トランジスタ増幅回路

トランジスタ増幅回路

◆ 入力と出力との間には、コンデンサ C1 と C2 とが入っています。これは、直流成分をカットして、交流成分だけを通すための、ハイパスフィルタです。すなわち、トランジスタ増幅器は、直流成分を無視して、交流成分だけを増幅する、交流増幅器 として動作させます。これに対して、グラウンドからの電圧を増幅する増幅器を、直流増幅器 といいます(図 4.3-22)。すなわち、直流増幅器は、直流成分を含んで増幅するという意味です。交流を増幅することができないという意味ではありません。

[図 4.3-22] 交流増幅と直流増幅

交流増幅と直流増幅
4.3.(4-D-b) 回路動作

◆ トランジスタの特性は、各種の非線形性を持っています。しかし、増幅器は、線形として、動作しなければなりません。このため、トランジスタが、線形で動作するように、入力信号のレベルを調整します。これを、バイアス といいます(図 4.3-23)。

[図 4.3-23] バイアスを掛ける

バイアスを掛ける

◆ 図 4.3-21 の RB は、バイアスを掛ける役割を持っています。
トランジスタの増幅作用を、トランジスタの特性曲線によって示すと、図 4.3-24 になります。(a) は、ベース〜エミッタ間電圧 VBEベース電流 IB の関係で、(b) は、コレクタ電流 ICコレクタ〜エミッタ間電圧 VCE との関係です。なお、図で小文字は変数です。

[図 4.3-24] 増幅作用を特性曲線で見る

増幅作用を特性曲線で見る

◆ (a) で、入力vi (ベースエミッタ間電圧 VBE)は、抵抗 RB によって、バイアスが掛けられていますから、出力i b (べース電流 IB)は、入力に対して線形で動作します(動作点 (P) を中心に P1P2 の範囲)。
この出力 i b は、直流電流増幅率hFE 倍されて、(b) の i c (コレクタ電流 IC )になります。図は、見やすいように、ib の振幅と、iC の振幅が、同じに書いてありますが、実際は、ここで hFE 倍になっています。
◆ i c は、抵抗 RL を流れますから、出力電圧 vo を発生します。ic と vo の関係は、直線(A)(B) で決まります。この直線(A)〜(B)のことを、負荷線 といいます。(A) 点は、コレクタ〜エミッタ間電圧 VCE がゼロになる点です。コレクタ〜エミッタ間電圧がゼロということは、抵抗 RL の ic による電圧降下が、電源電圧 VCC に等しいということです。(B) 点は、コレクタエミッタ間電圧 VCE が電源電圧 VCCに等しくなる点です。

[コラム 4.3-4] 増幅のあれこれ

★ 増幅は、電気だけではありません。
まず、光の増幅があります。常識的には、光を受けて、それを電気に変え、電気で増幅して、再び光に変えます。

光を電気で増幅する

★ しかし、光は、光のままで、直接増幅することも、可能です。レーザー光 は、増幅の機能があるからです。図で、E1、E2 は、エネルギー順位と呼ばれるもので、E2 は、E1 よりも高い順位にあります。

レーザー光

★ 1. 光が入射されると、E1 の、エネルギー順位の低い状態(基底状態)にある原子(赤丸)は光を吸収し、E2 の、エネルギー順位が高い状態(励起状態)になります。これを吸収といいます。
★ 2. E2 の、励起状態(不安定な状態)にある原子が、ある確率(物質で決まる)で、E1 の基底状態になろうとする時に、その差のエネルギーを、光として放出します。これを、自然放出といいます。
★ 3. E2 の、励起状態にある原子に、自然放出と同じ波長の光が入射すると、励起状態の原子が刺激され、E1 の基底状態になります。その時に入射光と同波長、同位相の光が放出されます。すなわち、でて行く光は、2 倍に増幅されます。
★ レーザー光は、コヒーレンスという、普通の光とは、異なった性質を持っています。コヒーレンス (可干渉性 )とは、干渉を起こし得るという性質です。レーザー光は、空間的にも、時間的にも、コヒーレンスです。

コヒーレンス

★ レーザー光は、コヒーレンスであることから、次の性質を持っています。
  ・ 指向性があります(空間コヒーレンス) : 長距離を伝送しても広がりません。
    このため、測量や、距離測定に使用できます。
  ・ 集光性があります(空間コヒーレンス) : 非常に狭い範囲に集光できます。
  ・ 単色です(時間コヒーレンス) : 完全な単色光は、無限に連続する光です。
    ただし、実際には、若干の幅があります。
  ・ 超短パルスが可能です(時間コヒーレンス)。
  ・ 高い輝度、高いピークパワーが可能です(時間コヒーレンス)。


★ もう、1 つの話題は、遺伝子の増幅です。とくに、条件を整えれば、目的とする遺伝子を、数千万倍に増殖することができます。これを、遺伝子の増幅と呼んでいます。

遺伝子増幅の作業

★ たとえば、髪の毛 1 本から犯人を特定する、親子血縁の鑑定、大腸菌 O157 のような病原菌の検出、など様々な分野で、応用されています。

遺伝子増幅機構


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