電気と電子のお話

2. 電流と電流を流す回路

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2.2. 電気には直流と交流がある


2.2.(4) エネルギーを蓄えるリアクタンス

2.2.(4-A) 2〜3 の用語について

◆ さて、いよいよりアクタンスのお話に入ります。リアクタンスという言葉は、ちょっと聞き慣れない言葉ですが、コンデンサコイルと言えば、名前だけは聞いたことがあると思います。コンデンサやコイルが持つ性質を総称した名前が、リアクタンスです。
リアクタンスのお話に入る前に、2〜3 の用語について、解説しておきます。

2.2.(4-A-a) 電荷を誘い出す静電誘導

◆ 電気の導体を、帯電した物体に近づけると、電気の導体に、静電気を誘起します(図 2.2.15)。

[図 2.2-15] 静電誘導

静電誘導

◆ 図の場合には、+ に帯電した物体 A に、帯電していない物体 B を近づけると、クーロンの法則によって、自由電子が移動して、物体 A に近い端が − に、他端が + に帯電する現象です。この現象を、静電誘導 と呼んでいます。
なお、1.1.(2-C-a) では、静電気の定義を、「動くことができない電子」としました。ここの電子は、自由電子ですから、動くことができます。しかし、図の状態では、一時的に、動けなくなっていますから、静電気とみなすことができます。

2.2.(4-A-b) 電流と磁気との関係を示す右ねじの法則

◆  磁石のところで予告したように、電流磁気の間には、交互作用があります。
導体に電流が流れると、電流によって、磁界が発生します。導体に流れる電流によって生じる磁界の方向は、右ネジの法則 によって決まります(図 2.2-16)。

[図 2.2-16] 右ネジの法則

右ネジの法則

◆ また、このときの、磁界強度 H は、電流 I に比例し導線からの距離 r に反比例し、
     磁界強度の式
です。

2.2.(4-A-c) 発電機と電動機の原理 電磁誘導

◆ 磁界の中で、導体が動くと、電圧が発生します(図 2.2-17)。この原理を応用したものが発電機 ですから、図も発電機の例で、示してあります。

[図.2.2-17] 発電機の原理

発電機の原理
起電力

◆ 逆に、磁界の中で、導体に電流を流すと、が発生します。この原理を応用したものが、電動機 (モータ )です(図 2.2-18)。電動機と発電機は、構造的には同じであり、正反対の用途に利用できるわけです。

[図 2.2-18] 電動機の原理

電動機の原理

◆ 上記の 2 つの原理を合わせて、電磁誘導と呼んでいます。

2.2.(4-B) コンデンサやコイルの原理 リアクタンス

◆ さて、リアクタンスのお話に入ります。リアクタンスとは、エネルギーを蓄えておくことができる素子です。と言うと、何だか難しそうですが、また水でたとえましょう。図 2.1-3 のタンクでは、水を蓄えています。水を蓄えているということは、位置のエネルギーを蓄えていることでもあります。リアクタンス は、同様に、電気エネルギーを、損失無しに、蓄えたり、放出したりすることができます(図 2.2-19)。

[図 2.2-19] リアクタンスの働き

リアクタンスの働き

◆ 水が蓄えるエネルギーは、位置のエネルギーの他に、運動のエネルギー があります。水流の例では、水路を流れている水流が持っているエネルギーが、運動のエネルギーです。質量 m、速度 v の物体が持つ、運動のエネルギーは、1/2・mv2 です。
リアクタンスにも、位置のエネルギーに対応する、キャパシタンスと、運動のエネルギーに対応するインダクタンスとがあります(図 2.2-20)。

[図 2.2-20] リアクタンスと水流の対応

リアクタンスと水流の対応

あらゆる導体は、キャパシタンスを持っています。とくに、キャパシタンスを利用するように作られた素子を、コンデンサといいます。コンデンサは、水流の例 では、タンクに相当します。
あらゆる導体は、インダクタンスを持っています。とくに、インダクタンスを利用するようにつくられた素子が、コイルです、水流の例では、水路中の水流が、運動のエネルギーを持っています。しかし、この水流の例では、水流が運動のエネルギーを持っている、ということだけです。運動のエネルギーを利用しているのでは、ありません。
機械系で、運動のエネルギーを利用している例としては、フライホイール (図 2.2-21)があります。フライホイールは、機械系において、電気における、コイルに相当するものです。

[図 2.2-21] フライホイール

フライホイール

◆ フライホイールは、自動車のクラッチ で、使用されています。走行中(すなわちエンジンが回転中)に、フライホイールは、運動のエネルギーを蓄えています。クラッチを踏むと、フライホイールに蓄えれていたエネルギーによって、走行を継続します。もっとも、最近では、オートクラッチが多くなっていますが。

[コラム 2.2-3] 心理的リアクタンス

★ リアクタンスは、エネルギーを蓄えます。しかし、リアクタンスの元になる言葉、リアクトは、反作用する、反対する、反抗する、逆行する、などの意味です。
★ 電気以外の分野でも、リアクタンスの言葉が用いられていますが、上記の、本来の、リアクトの意味で使われています。
心理的リアクタンスという、言葉もあります。心理的リアクタンス とは、次のようなものです。 ★ たとえば、勉強しようと思っていたところに、親から「勉強しろ」と言われた場合に、勉強するどころか逆に反発して勉強しなくなります。これは、自分からすすんで勉強する、という行動の自由を、親によって脅かされたためです。勉強しないという行動をとることによって、脅かされた自由を回復したわけです。
北風と太陽の童話も、心理的リアクタンスです。

北風と太陽の童話       ロミオとジュリエット

★ 心理学者のドリスコールは、シェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」の物語の心理を科学的に分析する実験を行ないました。カップル 140 組からアンケートをとり、2 人の相性を「熱愛度」、両親の反村を「妨害度」として相関関係を調べました。その結果、親の妨害度が高いほど、それに比例して 2 人の熱愛度も高くなる傾向があることが分かました。妨害されると愛が深まるという心理を「ロミオとジュリエット効果」といいます。
この「ロミオとジュリエット効果」が、心理的リアクタンスです。

ロミオとジュリエット効果

★ コンデンサは、電圧を上げようとして、電流を流し込んでも、電圧の上昇を押さえる作用があります。コイルは、電流を流そうとして、電圧を掛けても、電流の増加を押さえます。
コンデンサやコイルの作用を総称して、リアクタンスと呼んでいるのは、この作用によって、名付けられたわけです。


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