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電球 (ランプ)は、発光体の発光原理によって、白熱発光の電球と、放電発光 の電球とに、大別されます。
白熱発光の電球を、図 9.1-48 に示します。
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白熱電球 (白熱灯 )は、エジソンが発明した電球で、最も早くからある電球ですが、現在では、効率を改善した、クリプトン球が、使われています(図 9.1-49)。白熱電球は、タングステン 製のフィラメント に電流を流して、白熱します(エジソンが発明したものは炭素でした)。
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高温のタングステンが蒸発するのを防ぐために、ガラス球内に、不活性ガスを封入します。この不活性ガスに、クリプトンを使用したものを、クリプトン球 といいます。クリプトン球は、現在の、最も普通の電球です。
図に示すように、クリプトンは、熱損失が、小さいからです。不活性ガスにアルゴンを使用した、従来球と比べ、10 % 以上熱損失が、小さくなります。
◆ コイルは、熱損失を下げるために、2 重コイルを使用しています(図 9.1-50)。図の左側は、1 重コイル、右側が、2 重コイル です。
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ハロゲン球 は、白熱電球に、微量の、ハロゲン族 元素のガスを封入したものです。ハロゲンサイクルによって、一般電球の、約 2 倍の長寿命が可能となり、かつ一般電球よりも、小形です。
ハロゲンサイクル とは、図 9.1-51 に示す、サイクルです。
◆ 放電発光 (放射発光)の電球を、図 9.1-52 に示します。
◆ ネオンランプ は、ガラス管内に、1 対の金属電極をもうけ、ネオンガスを封入した電球です。 電極に電圧を掛けることによって、グロー放電し、発光します(図 9.1-53)。消費電力が、微小なことが特徴で、パイロットランプ(表示灯 )などに、使われてきました。しかし、ネオンランプは、最近では、LED(発光ダイオード)にとって代わられる方向に、あります。
◆ ネオンランプと同じ原理の、ネオン管 は、広告灯 に使われています。ネオン管には、豊富な色があります。ネオン管と呼んでいますが、封入するガスは、ネオンだけでなく、アルゴン、アルゴン + 水銀、炭酸ガス が、使われています。これと、ガラス管の色との組み合わによって、各種の色が、できます(図 9.1-54)。
◆ 蛍光灯 は、現在最も一般に使われている照明です。元々は、直管形 でしたが、サークル形 (環形 )、電球形 、コンパクト形 など、いろいろな形のものが、使われています(図 9.1-55)。
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白熱灯も、点灯時に、フィラメントの温度が低いときは、抵抗が低く、大きな電流が流れるという特性があります(コラム 2.1-8)。しかし、白熱灯は、点灯時に、直接、電源電圧を掛ければ良く、パイロットランプ等を除いては、特別な回路は、必要ありません。
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しかし、蛍光灯(一般形)の場合には、安定器とグローランプが、必要です(図 9.1-56)。
◆ グローランプ (グロー球 )の電極は、バイメタルになっています。バイメタル は、互いに膨張率が異なる 2 枚の金属を貼り合わせたものです(図 9.1-57)。バイメタルは、図に示すように、温度変化によって、変形します。
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グローランプの電極は、定常時は、少し離れており、接触していません。
蛍光灯の電源スイッチをオンにすると、グローランプにグロー放電が起こります。
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この放電の熱によって、バイメタルが働き、グローランプの、電極が接触します。電極が接触すると、蛍光灯の両端のフィラメントに、電流が流れ、フィラメントが熱せられて、蛍光灯の管の中に、電子が飛び易い状態に、なります。
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一方、電極が接触したことによって、グロー放電は無くなり、バイメタルが冷えて、元の位置に戻ります。すなわち、電極は、再び離れます。
電極が離れると、電流が切れます。この電流が切れたことによって、安定器 のコイルに、高電圧が発生します。コイルでは、コイルを流れる電流が変化すると、その電流の変化を妨げようとする、電圧が発生するからです(レンツの法則)。
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安定器に発生した高電圧は、蛍光灯のフィラメントに加わります。このフィラメントは、蛍光灯の放電電極ですから、蛍光灯は、放電を開始します。
蛍光灯は、放電を開始すると、大きな電流が、流れる状態になります。安定器は、上述の、放電開始時の働きのほかに、放電電流を制限する働きがあります。蛍光灯の電源は、交流です。したがって、安定器は、インダクタンスとして働き、交流電流を制限します。
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以上は、最も一般的な、蛍光灯ですが、蛍光灯は、そのほかにも、いろいろな、機種があります。その中の、一つが、ラピッド蛍光灯です。ラピッド蛍光灯は、ラピッド蛍光灯用の安定器と組み合わせて使用します。ラピッド蛍光灯 は、グローランプが不用で、スイッチオンにより、通常の蛍光灯よりも、速やかに点灯します。
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三波長蛍光灯 は、RGB の 3 原色に、強い発光のスペクトル分布を持つ、蛍光灯です(図 9.1-58)。図 9.1-32 に示したように、RGB の 3 原色があれば、全ての色を作ることが、できます。
三波長蛍光灯は、物の色の見え方、演色性、くっきり感が、向上します。また、発光効率が、従来形よりも高く、明るさもアップします。
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蛍光灯は、蛍光灯インバータを使用する方式が、あります。蛍光灯インバータ は、商用電源を、20〜70 kHz に変えて、蛍光灯を点灯します。安定器による点灯に比べて、次のような、特徴があります。
■ ランプ効率がアップし、高照度・省電力となります。
■ 蛍光ランプ特有のチラツキがありません。
■ 安定器の発する耳ざわりな音がありません。
■ 即時に点灯します。
■ 小形で軽量化が可能です。
■ 調光が可能なタイプもあります。
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高圧放電ランプ (HID ランプ )は、水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプの総称です(図 9.1-59)。
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水銀ランプ (一般水銀ランプ)は、長寿命のため、ランプ交換・取付などの保守が簡単で、経済的なランプです。工場、体育館、デパート等の屋内照明にも、道路、商店街、街路、港湾、競技場、投光照明等の屋外照明 にも、広く使用されています。
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バラストレス水銀ランプ は、一般水銀ランプが、安定器を必要とするのに対して、安定器が不用です。ただし、一般水銀ランプと比べて、明るさは、約半分です。
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高圧ナトリウムランプ は、色温度2100Kの黄白色の光を発します。演色性が比較的よく、色彩の識別は十分にできるので、道路の照明や、高天井の工場、スポーツ施設の照明に使われています。
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トンネルなどで、使われている橙黄色のランプは、低圧ナトリウムランプ です。低圧ナトリウムランプは、演色性は悪いですが、視覚度が高く人の目に色収差を生じさせないので、明暗の差がはっきりし、物の形や凸凹などを正確に見極めることができます。
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メタルハライドランプ は、ナトリウムやスズなどの金属ハロゲン化物を混入した水銀ランプです。高輝度で効率が良いことが特徴です。水銀と金属ハロゲン化物の蒸気の中で放電を行い、それぞれの原子を励起させて発光します。そのため、混入する物質により、色調が異なります。
色温度にすると3000〜5000Kに相当し、可視光スペクトルが太陽光に似ているため、照明用光源や、液晶プロジェクタの光源として利用されます。
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以上の、各種のランプには、寿命 が、あります。また、寿命までの間に、劣化して光度が落ちます。各種光源の光束維持率 を、図 9.1-60 に示します。
◆ 発光ダイオード (LED )は、従来から、各種の表示用に、多く使われてきました(図 9.1-61)。
◆ 発光ダイオードは、従来は、色光の 3 原色のうち、青色が、作れませんでした。青色発光ダイオード (青色ダイオード )が開発されて、青色と、白色(白色発光ダイオード 、白色ダイオード )を作ることが、可能となったことから、発光ダイオードの用途が広がり、一般の照明にも用いられるようになりました(図 1.9-62)。
◆ 発光ダイオードの原理を、図 9.1-63 に示します。ダイオードに順方向電圧を掛けると、電流が、流れます。すなわち、プラスの電極からは正孔が、マイナスの電極からは電子が流れ出します。この正孔と、電子が合体するとき、エネルギーを発生し、発光します。このとき、発光する光の波長、したがって、色は、発光ダイオードの材質によって、決まります。
◆ 発光ダイオードは、、白熱電球や、蛍光灯と比べて、発光体としての性質が、優れています(図 9.1-64)。
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発光ダイオードの、長寿命の特徴を生かして、かつ、青色ダイオードが実用化されたことによって、普及したのが、信号機です。そして、発光ダイオードは、図 9.1-64 に示した特徴から、次の時代の、照明の主力になると、考えられています。
図 9.1-65は、発光ダイオードを利用した照明のいろいろです。図の右上は、農業プラント です。植物の光合成 作用は、赤色が最も強いので、赤色光を使用しています。
★ 人間が、他の動物と、大きく異なる点は、2 つあります。第一は、言葉を持っていることです。いるかも、言葉を持っていて、会話するとも、言われていますが、はっきりしたことは、分かりません。犬は、人の言葉を理解しているように、思われますが、真に言葉として、聞き分けているのでは、無さそうです。まして、犬どうしの会話は、無理でしょう。
★ 人間が、他の動物と異なる、もう一つの特徴は、火を使うことです。焚き火は、調理 、暖房、照明と、多くの用途に、使われてきました。
そして、その焚き火が分化して、各種用途に、使い分けられるように、なりました。照明の変遷を示します。
★ 日本の古い あかり は、「日本の あかり 博物館」に展示されています。
★ 江戸時代の照明は、行灯 でした。行灯は、菜種油 を燃やします。
★ 明治に入ると、石油ランプ になり、行灯と比べると、遥かに明るくなりました。なお、ランプ の言葉は、石油ランプを意味する場合と、電球を意味するときとが、あります。
★ ガス灯 も ともります。
★ そして、終に、電灯の登場です。最初の電灯は、アーク灯でしたから、現在の街路灯 よりも、はるかに、明るかった、はずです。
★ 白熱灯は、かなりの期間、使われてきました。そして、蛍光灯へと移ります。現在は、蛍光灯が主力ですが、次は、発光ダイオードの時代と、考えられています。
★ 下は、人口衛星から写した地球です。未開の地を除いて、随分照明で、明るくなっていることが、分かります。
★ これを、逆にいえば、光、したがってエネルギを、無駄に、空に、捨てていること、でも、あります。そして、美しい星空を、私たちから、奪っていることに、なります。
★ ここで、各種光源の性能を、まとめて、示しておきます。
★ 放電 とは、帯電体が電荷を失う現象です。放電の、最も激しいものが、雷です。人がショックを受ける、静電気放電も、美しいオーロラ も、放電による現象です。
★ 放電は、放電の媒体が、気体、真空、物の表面の、いずれであるかによって、気中放電 、真空放電 、沿面放電 に、分けられます。
沿面放電は、ものの表面に沿って発生する放電です(下図)。
★ 気中放電は、見かけ上の形などにより、
アーク放電
コロナ放電
グロー放電
無声放電
などに、分けられます。
★ アーク放電 は、アーク灯 や、電気溶接機 (下図)に使われている放電です。
★ コロナ放電 は、先端放電 とも呼ばれます。避雷針 は、落雷 の放電を、避雷針に、誘導することによって、落雷による被害を防ぎます。また、避雷針は、コロナ放電によって、少しずつ空気中の電荷を中和して、落雷を防ぐ効果も、あります。
★ 高圧送電線でも、コロナ放電が起こりますが、電線を太くしたり、電線を 4 本、8 本に分けたりして、コロナ放電を、起こし難くしています。
★ コロナ放電は、プラスチック の表面改質装置 に利用されています。コロナ放電によって、プラスチックの接着力を高めます。
★ 蛍光灯のグローランプは、その名のとおり、グロー放電 ですが、蛍光灯そのものの放電も、グロー放電です。
無声放電 は、オゾン発生器 に、使用されています。無声放電は、図に示すように、放電柱を作って、放電します。