◆ 静電気 は、摩擦 によって発生します。これを摩擦電気 といいます。摩擦電気の発生の様子を、模型的に示すと、図 1.2-1のようになります。
◆ (a) 物体 A と物体 B とが別々に存在するときは、プラスとマイナスの電荷は、同数であり、中和された状態です。
◆ (b) 2 つの物体が互いに接触すると、その境界面を通して、電荷が移動します。
◆ (c) この結果、物体 A は、マイナスの電荷が過剰になります。すなわち、負に帯電します。物体 B は、プラスの電荷が過剰になり、正に帯電します。このとき、後に述べるように、プラスの電気とマイナスの電気は、互いに引き合います。したがって図のように、過剰な電気は、境界の所で、相対して並びます。
◆ (d) この状態で、物体を引き離したときは、図のように、それぞれの物体は、帯電した状態です。
このとき、2 つの物体の、どちらがプラスになるかは、その物質の種類によって決まります。これを順番に並べたものを摩擦電気系列 と言います(図 1.2-2)。図が長くなるので、ジグザグに並べてあります。左上が、最もプラスです。色は、単に半数づつに分けただけで、特別な意味はありません。
アスベスト | 人毛・毛皮 | ガラス |
ウール | ナイロン | レーヨン |
鉛 | 絹 | 木綿 |
麻 | 木材 | 人の皮膚 |
アセテート | アルミニューム | 紙 |
鉄 | 銅 | ニッケル |
ゴム | ポリプロピレン | ポリエステル |
アクリル | ポリウレタン | ビニール |
★ 静電気のショックは、嫌なものです。静電気ショックが多いのは、車を降りるときと、金属のドアのノブに触るときでしょう。この静電気ショックは、個人差が大きいのです。
★ ドアのノブは、家庭であれば、ノブを布でカバーするのが、良いでしょう。外出先などでは、鍵などの金属製品を握って、その先で、ノブに触れて、放電させてから、ノブを握ります。
★ 車を降りるときは、要領があるようです。ショックに悩まされている人は、試して見てください(下図左)。
1. クルマから降りる準備をする。
2. ドアを開く ( この時点では、まだ足を地面に降ろさない) 。
3. ドア内側の「金属部」を触りながら(写真参照)、足を地面につける。
4. クルマから降り、ドアを閉める。
★ 上図右は、電子機器の組立て時の対策です。IC などの半導体部品は、静電気に弱く、静電気放電によって、容易に破壊されてしまいます。このため、床、作業机などのアースを取って、静電気の帯電を防ぎます。それだけでなく、作業する人も、アースを取ります。
★ さて、人体の帯電 は、2 つの意味を持っています。1 つは、帯電した人体が、電子機器や電子部品に触れることによって、電子機器や電子部品に静電気放電して、電子機器や電子部品を損傷することです。とくに、電子機器を組み立てるときに、問題になります(上図右、別の講座、ノイズ対策3.(4-B)参照)。もう 1 つは、ドアのノブに触ったりして、人が受けるショックです(上図左)。
★ 次に、人体がどの程度帯電するのか、および、どの程度感じるのかについての、データを示します。なお、帯電は、空気中の湿度の影響が大きいので、日本では、乾燥した冬が問題になります。
★ なお、ショックを受けるのは、ノブが金属だからです。プラスチックや木材のノブを使用すれば、問題ありません。何故でしょう? 考えてみてください。
◆ 静電気と言うと。とかく、静電気の害を思い浮かべます。しかし、その静電気も、いろいろな、ところで役に立っています。その、2〜3 の例を挙げてみましょう。
比較的身近なものに、レーザー形の、プリンタやコピー機があります。これは、静電気の応用です。レーザー形のプリンタやコピー機では、光導電性 の感光体を使用します。光導電性物質は、光を当てないときは絶縁体ですが、光を当てると電気を通すようになります。
◆
コピーの原理を、図 1.2-3 に示します。図の(d)では、次に示すクーロンの法則を応用しています。
◆ おもしろい例では、サンドペーパーの製造があります(図 1.2-4)。通常は、正に帯電した粒子が、負に帯電した紙(板)に吸い付けられると、粒子は、紙から負の電荷を受け取って、負に帯電し、今度は逆に、紙から反発します。しかし、紙には糊が付いていますから、粒子は紙に付いたままです。
◆ 電荷は、互いに力が働きます。符号が等しい電荷は互いに反発し、符号が異なると、互いに引き合います(図 1.2-5)。
◆ 電荷が互いに反発し、または引き合う力( F )は、双方の電荷(電気量 Q1、Q2 )の積に比例し、距離( r )の 2 乗に反比例します(式 1.2-1)。ここで、k = 9 × 109、[N ] は力の単位で、ニュートン (1 kg の質量の物体に対して、1 m/s2 の加速度を与える力の大きさ) です。なお、これは、真空中または空気中の値です。
これを、クーロンの法則 と言います。
◆ クーロン は、図 1.2-6 に示す装置で、クーロンの法則を実証しました。最初 a b の球に帯電させない状態で、その距離を計ります。次に帯電させた後、a b 間を帯電させないときと、同じ距離になるように図の「つまみ」を調整し、このときの力を計ります。
◆ 当時は、電気に関する、定量的な研究は、力学に比べて著しく遅れていました。クーロンの法則の価値は、電気どうしで働く力を、実験によって、直接的に計ったことにあります。クーロンの法則は、電気に関する、新しい発展の道を切り開いたのです。
◆ 以上のことから、帯電した物体、帯電体があるときに、その帯電体の周囲の空間に、別の帯電体をおくと、この帯電体に、力が働くことが分かります。このような、帯電体に力を及ぼす、空間のことを、電界 (または電場 )といいます。
◆
この考え方を、さらに一歩進めると、電界が存在するところには、「何か」がある、と考えることができます。この「何か」の状態を、分かりやすく表現する手段として、電気力線というものを、考えます。
◆
電気力線 は、次の性質を持っています。
(a) ある点における電気力線は、その位置における、電界の方向を示します。
(b) 電気力線の密度は、その位置における、電界の強さ、電界強度 E の大きさを示します(図 1.2-7)。
(c) 電気力線は、プラスの電荷から発生し、マイナスの電荷に集まります。
(d) 電気力線の中には、無限遠方から発生し、または無限遠方に発散するものも、あります。
このように書くと、分かり難いかも知れませんが、次に示す具体例を見れば、すぐに分かると思います。
◆ 孤立した(周囲に何も無い)信号線上に、均一に電荷が分布しているときの、電気力線を、図 1.2-8 に示します。(a) は 1 線だけのとき、(b) は平行 2 線で電荷は片方がプラスで他方がマイナスのとき、(c)は平行 2 線で両方が同符号のとき、です。平行 2 線のとき、2 線を結ぶ間の線上に近いところでは電気力線が密になっていることが分かります。
◆ ちょっと話題が変わって、今度は、磁気のお話です。電流には、磁気 作用があります。すなわち、電流が流れると、その周りに、磁力 が発生します(図 1.2-9)。図で、磁力線 は、磁気において、電気の電気力線に対応するものです。
電流と磁気の関係は、一方通行ではなく、交互作用があります。
◆ ここでは、まず、磁気そのものから、お話をはじめます。磁石 は鉄 を吸い付けます。鉄を吸い付ける性質を、磁性 といい、磁性を持った物体が磁性体 です。そして、強い磁性を持つものが、磁石です。最も典型的な、棒磁石 を、図 1.2-10 に示します。磁石にも、プラス/マイナスがあります。北を指す方を N 極 (プラス)、南を指す方を S 極 (マイナス)と呼んでいます。
◆
通常、磁極 は、両端にあります。磁石も、電荷と同様に、異種の磁極は、引き合い、同種の磁極は反発します。
◆ クーロンは、実験によって、静電気と同様に、磁気にも、クーロンの法則が成立することを、確かめています。すなわち、磁気力 を F、磁極の強 さ(磁気量 または磁荷 とも言います)を m1、m2、2 極間の距離を r とすれば、
です。ここで、k = 6.33 × 104 です。
★ 岩石には、酸化鉄でできたものがあります。酸化鉄固有の赤い色をしています。
★ これらの岩石の中には、磁気を帯びたものもあります。その磁気には、太古の昔、地上に噴出した溶岩が固まるときに、そのときの地磁気 の方向が、記憶されています。地磁気とは、地球自体が大きな磁石になっていて、その磁気とそれによって生じる磁場を総称したものです。
★ その後の地殻の変動によって、岩石は褶曲しますが、溶岩の磁化の方向から、元の噴出したときの向きが、分かります。
このことから、日本列島は、今のように折れ曲がっておらず、はじめは、まっすぐだったことが証明されます。
◆ 電気に電気力線があるのと同様に、磁気にも磁力線 があります(図 1.2-11)。
◆ 磁力線の性質は、電気力線とは異なります。
(a) ある点における磁力線の接線方向は、その位置における磁界 (磁場 )の方向を示します(電気と同様)。
(b) 磁力線の密度は、その位置における磁界強度 H の方向を示します(電気と同様)。
(c) 電流によって発生する磁界の磁力線は、円状となり、右ネジの進む方向に電流が流れると、磁界の方向は右ネジの回転方向になります(右ネジの法則 )。
(d) 電流によって発生する磁界の磁界強度 H は、流れる電流に比例し、電流からの距離に反比例します。
◆ 孤立した、信号線、および平行 2 線に電流が流れているときの磁力線を、図 1.2-12 に示します。図で、信号線の × 印は、電流が画面から奥に向かう方向、◎ 印は、電流が画面の奥から飛び出す方向を表します。