★ 色にも色色あります。このお話しのテーマである色 は、カラー です。しかし、別の意味の色もあります。
★ ところで、人は、どのようにして、色を感じているのでしょうか。まず、人の眼 は、下図左のような構造になっています。カメラでいえば、レンズが水晶体 、フィルムが網膜 です。
★ 網膜には、光に感じる視細胞 が あります。その形によって、錐体と、桿体の 2 種類に分けられます(図右上)。錐体 は、さらに、L 錐体 (赤錐体 )、M 錐体 (緑錐体 )、S 錐体 (青錐体 )に分けられ、それぞれ、赤(R)、緑(G)、青(B) に感じます。すなわち、人の目は、RGB に感じますから、色光の 3 原色に対応しています。
★ 視細胞は、103 の範囲の光の強さに感じます。桿体 は、感度が高いので、薄暗いところでは、桿体が、働きます。錐体と桿体の両者を合わせると、106 の範囲に対応できます。ただし、桿体は、色に感じませんから、薄暗いところは、モノクロです。
★ さて、色は、色相 (色合い )、明度 (明るさ)、彩度 (鮮やかさ )という、3 つの属性によって、表現することが、できます。これを、色の 3 属性 といいます。なお、彩度は、赤を例として、示してあります。
★ 色は、上記の 3 属性によって決まりますが、その表現法には、いくつかのものが、あります。ここでは、代表的な、ものを、示します。
★ まず、CIE の XYZ 表色系について、説明します。CIE とは、国際照明委員会 のことです。XYZ 表色系 は、RGB を基本としていますが、人の色感覚 に合致するように、修正されています。RGB を修正したので、RGB と呼ばないで、XYZ と呼んでいます。
★ XYZ のうち、Y は、明るさの刺激に対応するようになっています。したがって、Y を明度の代表値として使うことができます。
X は主として赤色を代表する色刺激ですが、青色の波長領域の色刺激もかなり含んでいます。Y は明るさと同時に緑色を代表する刺激、Z は青領域を代表する色刺激となっています。
★ RGB と XYZ は、互いに換算することが、できます。
X=2.7689R+1.7517G+1.1302B
Y=R+4.5907G+0.0601B
Z=0.0565G+5.5943B
★ XYZ を、さらに、実用的に改良したものが、Yxy 系です。実質的には、XYZ 系と同じであり、表現方法を、変えたものです。
x=X/(X+Y+Z)
y=Y/(X+Y+Z)
z=Z/(X+Y+Z)
★ 上記の、xy を座標として、色を表した図を、xy 色度図 (CIE 色度図 、色度図 )といいます(下図)。
★ 色度図は、たとえば、ディスプレイ装置の、色再現性 を表すために、色の再現範囲を示すのに、利用されます。下図は、あるディスプレイ装置の色再現範囲を示したものです。
★ 上図で、100 % は、CRT ディスプレイの色再現範囲 です。これに対して、ある新しいタイプのディスプレイを改良して、そのタイプの従来品が、CRT ディスプレイの、約 45 % であったものを、72 % にすることが できたことを、宣伝した図です。
★ 色を表現する、もう一つの代表的な方法が、マンセル表記法 です。マンセル表記では、色の 3 属性を、下図のように、表します。
★ マンセル表記法で、互いに反対側にある色(たとえば 5R と 5BG)を、補色 といいます。
人の眼には、残像と呼ばれれる現象があります。人の眼は、光の刺激が、取り除かれても、しばらくの間、それが見えています。これを残像 といいます。たとえば、蛍光灯は、連続的に光っているように、見えますが、実際は、商用電源 周波数で、断続しています。
★ この残像を利用して、補色を見ることができます。下図左の、緑の円を、しばらく見続けた後に、視線を右側の円に移すと、左図の補色の残像が、見えます。
★ もう一つ、HTML で使われている表記法を、示します。RGB を、8 ビットの数値で表したものです(下記)。HTML では、数値を 16 進数で表します。
★ なお、HTML では、規定の色名称を、使用することも、できます。下図は、HTML 色名称 の例です。
◆ 照明を行うためには、光を出す、すなわち、発光体を、発光 させる必要が、あります。発光の原理は、大きく 2 つに分けられます(図 9.1-33)。白熱発光と、放射発光の、2 つです。
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白熱発光 は、発光体が、高温になったときに発光する現象です。
物体に、光を照射すると、一部は反射され、残りは、吸収 または透過されます。光を、100 % 吸収する物体を、黒体 (完全黒体 、ブラックボディ )といいます。天体には、ブラックホール (図 9.1-34)が、あります。ブラックホールは、周囲のあらゆるもの(物体も、光も)を、吸い込んでしまう、恐ろしい天体と、されています。
◆ ブラックボディは、ブラックホールのような、恐ろしいものでは、ありません。ただの、箱です。しかし、光を 100 % 吸収しますから、その意味では、ブラックホールに、似ています。完全な黒体は、存在しませんが、近似的に黒体と見なすことができる箱は、比較的容易に、作ることが、できます(図 9.1-35)。
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ブラックホールは別として、物体は、電磁波を放射しています(図 9.1-36)。図は、黒体の放射です。一般の物体は、黒体よりも、放射の値は、小さくなります。図から分かるように、物体の温度が上がると、放射波の波長は、短くなります。
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なお、図で、K は、温度 の単位で、ケルビン です。私達が、日常使っているのは、セッシ (摂氏 )です。摂氏の温度を、c とすれば、K = c + 273.15 です。ケルビンの零度は、この世の、最低の温度、すなわち、絶対零度 です。
◆ 発光体の温度によって、発光のスペクトル分布 (波長による放射強度の分布)が、異なります(図 9.1-37)。したがって、発光の色が、異なります。これを、色温度 といいます。太陽の表面温度は、6000 K です。ただし、天頂に、太陽があるときの、太陽の色温度は、6500 K です。太陽光は、地球の空気を通過してきますから、太陽の表面温度とは、異なります。ちなみに、朝日や夕日の色温度は、2000 K ぐらいです。
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発光の、もう一つの原理は、放射発光 です、放射発光には、エレクトロルミネセンスと、電界発光の、2 種類が、あります。
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エレクトロルミネセンス は、蛍光灯に、利用されています(図 9.1-38)。エレクトロルミネセンスとは、気体中の放電において、加速された自由電子が、気体の原子や分子に衝突することによって、光を放射する、現象です。
蛍光灯では、エレクトロルミネセンスによって、紫外線が発生し、その紫外線が、蛍光灯の管壁に塗られた蛍光体 によって、可視光線に変えられます。蛍光 とは、紫外線などにさらした際に発生する、可視光線のことです。なお、光源を切った後も僅かに持続し、消滅する光を燐光 といいます。
◆ 電界発光 は、LED(発光ダイオード)の、原理です。発光ダイオードに順方向電流を流すと、発光します(図 9.1-39)。
◆ 9.1.(4-B) で述べたように、照明は、実用性のほかに、ムードが、重要です。しかし、照明の基本は、受光体が、正しく見えることです。正しく見えること、ムードを出すこと、この両方に対して、大きく寄与するのが、照明の、色温度です(図 9.1-40)。
◆ 受光体の本来の色が、照明に照らされたときに、 どれだけ忠実に再現されるかを、そのランプ (発光体)の演色性 といいます。白熱発光であれば、演色性は、色温度で決まりますが、蛍光灯のような、エレクトロルミネセンスでは、発光のスペクトル分布が、蛍光灯の機種によって異なりますから、演色性は、一概には、言えません。メタメリズム (条件等色 )という用語もあります(図 9.1-41)。メタメリズムとは、ある与えられた観測者に対して、スペクトル分布の異なっている放射が、同じ色感覚を作り出す現象です。
◆ 光源の種類による、演色性の違いを、図 9.1-42 に示します。
◆ 図の右上の、標準光源 というのは、光学測定の標準に使う、光源のことです(図 9.1-43)。標準光源には、HA、HB、HC の 3 種類があります(図の A、B、C)。HAは色温度 2854 K のタングステンランプ、HBは昼光色、HCは一面に雲で覆われたような平均昼色光です。
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照明の明るさも、問題になります。基本的には、照明は、明るい方が、良いのです。しかし、明るさが急変することは、好ましくありません。たとえば、映画館などの、暗い暗いところから、屋外に出ると、まぶしく 感じます。
また、照明は、経済性も考える必要がありますから、明るい方が良いと言っても、限度があります。このことから、照度は、用途によって、適切とされる照度(照度基準 )が、あります(図 9.1-44)。参考までに、いろいろな場所の照度の目安(最下段)を、付記しておきます。
◆ 照明が、暗いと、ものが見難くなり、目が疲労します(図 9.1-45)。
◆ 必要な明るさは、年齢によっても、変わります(図 9.1-46)。
◆ 以上のように、各種の考慮が必要ですが、凡その目安として、部屋の広さと、必要な器具のワット数を示します(図 9.1-47)。