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既に述べてきたように、コンピュータは、完全な単体で、使用されることは、少なく、何らかの意味で、ネットワークを組んで、コンピュータネットワーク の形で、利用されています。
自宅で、1 台だけパソコンを使用している場合であっても、インターネットに接続するときが、あります。インターネットに接続する目的は、様々ですが、その接続先は、ハードウェア的には、全て、コンピュータです。
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使用されているコンピュータは、数の上では、圧倒的に、パソコンが多いのですが、ミニコンもあります。そしてさらに大形の、メインフレーム もあります(図 9.2-143)。
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メインフレームとは、企業の基幹業務システムなどに用いられる、汎用大形コンピュータ のことです。基幹業務 は、財務・給与計算・販売仕入管理、といった、企業の中心となる仕事のことを、いいます。
基幹業務は、企業などには、必ず存在する業務です。そのソフトウェアも、パッケージ化されています(詳細は、[ここ]をクリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」をクリックしてください)。
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メインフレームも、最近では、その、プロセッサは、コンパクトな、パッケージに、なっています(図 9.2-144)。ただし、その回路規模は、膨大です(図の右側)。
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汎用大形コンピュータは、基幹業務に使用しますから、信頼性が重要です。汎用大形コンピュータでは、電源やCPU、記憶装置を始めとする、ほとんどのパーツが、多重化されており、並列処理による処理性能の向上と、耐障害性 の向上が図られています。
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汎用大形コンピュータでは、ネットワークを介して、端末機 が接続されています。汎用大形コンピュータの利用者は、端末機を通じて、コンピュータを利用します(図 9.2-145)。図で PC は、端末機です。最近では、端末機は、多くが、パソコンなので、PC と書いてあります。ネットワークは、通常、LAN です。ただし、異なる地区に跨るシステムでは、WAN になります。
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図のシステムでは、データの処理や保存は、すべて汎用大形コンピュータが、行ないます。すなわち、中央集権的な構造に、なっています。
汎用大形コンピュータが、開発される以前の、コンピュータは、特定の用途ごとに、特注で製造されるのが、一般的でした。
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これに対して、汎用大形コンピュータでは、ソフトウェアや機器構成を、柔軟に変更することが、できます。このことは、当時としては、画期的なことだったのです。
ワークステーション やパソコンなどの、安価で小形なコンピュータが登場する、1980 年代頃までは、コンピュータといえば、メインフレームのことでした。
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ワークステーションとは、パソコンよりも、一段高機能なコンピュータのことです。しかし、最近では、パソコンが、高機能化しています。パソコンで、システムを組むことが、多くなっています。
◆ 最近では、分散形システムが多くなっています。分散形システム は、メインフレームを持たないで、複数のパソコンだけで、構成したシステムです。パソコンは、ネットワークを介して、相互に接続されます。分散形システムでは、プリンタやハードディスクなどを、共用資源 として、ネットワークに配置します。(図 9.2-146)。図で PC は、端末機です。
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分散形システムの例として、分散形計装システム があります(図 9.2-147)。上側の図で、DDC とは、制御装置のことで、DDC は、パソコンクラスのコンピュータです。計装 とは、プラントなどにおいて、測定装置、制御装置などを装備することです。
そして、プラント とは、石油、化学、鉄鋼などの、製造工場 のことです。計装についての詳細は、[ここ]をクリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用してください)。
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下側の図も、分散計装システムですが、制御対象が、機械工場 のものです。
上記の、分散形計装システムのような、特定のシステムは、それぞれのシステムの特徴に合わせて、分散処理と集中処理とを、使い分けます。
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これに対して、汎用システムにおいては、メインフレームを持つ、集中処理 と、メインフレームを持たない、分散処理 (図 9.2-148)とが、歴史的に、交互に盛衰を繰り返して、きました(図 9.2-149)。「歴史は繰り返す」ということです。
◆ ただし、単なる繰り返しでは、ありません。螺旋階段のように、スパイラルに、進歩しながらの、繰り返しです(図 9.2-150)。
◆ モバイルデータ通信において、一般の回線におけるモデムの役割を担うものが、データ通信カード です(図 9.2-151)。データ通信カードには、携帯電話や、PHS の規格に合わせた、いくつかのカードがあります。図の右側は、ノートパソコンに、データ通信カードを、装着した ところ です。
◆ モバイルデータ通信 の概要を、図 9.2-152 に示します。図は、KDDI の例ですが、他も凡そは同じです。モバイルのデータ通信カードについては、[ここ]をクリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」をクリックしてください)。
◆ モバイルデータ通信は、高速化が進んでいます。その変遷を、図 9.2-153 に示します。現在(2005 年 7 月)は、3G から 3.5G への移行期です。
◆ 無線インターネットの接続方式を、図 9.2-154 に示します。携帯電話、PHS、無線 LANは、既に、一応 説明しました。
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第 1 世代携帯電話 (1G )は、主に自動車電話として1979 年 12 月にスタートした、アナログ方式による、サービスです。
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第 2 世代携帯電話 (2G )は、1993 年 3 月にスタートした、デジタル方式によるサービスです(国内は PDC 方式です、PDC 方式は、[ここ]をクリックしてください)。iモードなど、通話以外のサービスが付加された以降を、第 2.5 世代(2.5G)とも呼んでいます。iモード については、[ここ]をクリックしてください。どちらも、戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用してください
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第 3 世代携帯電話 (3G): 高効率な W-CDMA 方式による高速通信サービスです。W-CDMA については、[ここ]をクリックしてください(戻るときは、)。国内では2001年10月にスタートした、NTT ドコモの FOMA が最初です。現在の伝送速度は、348kビット/秒ですが、現在の 3G 技術を発展させ、3 Mビット/秒以上の速度を実現する 3.5G といわれる、高速通信技術をベースにした携帯電話が、近日製品化されます。
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PHS は、携帯電話には存在しない、定額料金制があるので、常時接続が、容易なことが特徴です。
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無線 LAN は、基地局を置くのに、免許が要らないことが、特徴です。しかし、そのために、将来の混雑が、予想されます。
PHS と無線 LAN とを組み合わせたサービスもあります(図 9.2-155)。無線 LAN が使える場所では、無線 LAN を利用し、その他の場所では、PHS を使用します。
[図 9.2-155] PHS と無線 LAN とを組み合わせたサービス
◆ 無線 LAN の規格は、既に示した、IEEE802.11b、IEEE802.11a、IEEE802.11g の他に、IEEE802.11n が作成中です。IEEE802.11n は、MIMO の技術を使用します。MIMO では、送信するデータを細かく分けて、それぞれのアンテナから同時に送信します。受信側では受け取った信号を分離する計算処理をして、元のデータに戻します(図 9.2-156)。下側の図は、原理を示す図なので、アンテナは、2 本に省略してあります。
◆ 3.5 世代(3.5G)の、HSPDA は、端末が受信する、下り方向のデータ通信を、高速化する技術です(図 9.2-157)。ただし、図に示すように、電波状況に応じて、伝送速度を変化させます。これに対して、W-CDMA の伝送速度は、一定です。
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改良型 PHS は、32 k ビット/秒の PHS を、最大 1〜2 M ビット/秒に、高速化するものです。
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WiMAX は、IEEE 802.16 規格の、使用周波数帯を変更したものです。IEEE 802.16 規格は 10〜66 GHz の周波数帯を使用していましたが、802.16a 規格では 2〜11 GHz を利用するよう改められています。IEEE 802.16 規格は、見通しのきかない範囲にある端末とも、通信できるように、改良されています。通信速度や最大距離は、1 台のアンテナで、半径約 50km(30マイル)をカバーし、最大で、70Mbps の通信が可能です(図 9.2-158)。
◆ iBurst は、すでに、オーストラリアのシドニーで、試験運用が開始されています。誰でも、いつでも、どこからでもアクセスできる、インターネットの、ワイヤレスブロードバンドです。iBurst は、1 基地局が、半径 10 数 km をカバーします(図 9.2-159)。
◆ モバイル WiMAX は、高速無線通信技術である、IEEE802.16e に準拠した方式です。時速 120 km で走る社中でも、ADSL 並みの通信ができます。この、モバイル WiMAX は、現在、実験の段階です。
◆ 携帯電話 は、大きく分けて、将来を含めて、4 世代に分けることが、できます(図 9.2-160)。携帯電話の起源は、1953 年からの、船舶電話 (港湾電話 )にまで、遡ります(図 9.2-161)。
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携帯電話それ自体についても、歴史的には、1970 年が、最初です。大阪で開かれた日本万国博覧会 では、入館者は受付で携帯電話機を借り、会場内のブースから、全国に電話することができました。ちょうど、愛知万博の入場券が、IC タグになっていることが、目玉であるのと同様に、これが、大阪万博の目玉でした(図 9.2-162)。
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そのときの携帯電話機は、長さが21cm、幅6.6cm、重さが600gです。
なお、IC タグについては、[ここ]を、クリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用してください)。
◆ 携帯電話が、実用化されたのは、1985 年のショルダーホン です(図 9.2-162の左側)。その後、小形化し、名前も、携帯電話になりました(図の右側)。そして、さらに、小形化と、高機能化とを重ねて、現在に至っています(図 9.2-163)。
◆ 携帯電話の、現在使われている方式を、図.9.2-165 に示します。
◆ 携帯電話の加入数を、図 9.2-166 に示します。図から分かるように、固定電話を、追い越しています。しかも、携帯電話の増加に伴って、固定電話は、減少し始めて、います。図の移動電話は、PHS を含む数ですが、ほとんどが、携帯電話です。
◆ 携帯電話は、多機能化が、進んでいます。図 9.2-167 は、携帯電話の、附加機能の利用状況の調査結果です。機能が豊富であっても、実際には、全ての機能が、多く使われている訳では、ありません。しかし、使う人も、使い方も、多種多様ですから、それらの要求を満たすために、多機能化する傾向があります。逆に、通話だけに徹した、シンプルなものも、あります。
[図 9.2-167] 携帯電話の附加機能利用状況の調査結果
◆ 携帯電話による、インターネットの利用に関する、調査結果も、あります(図 9.2-168)。
[図 9.2-168] 携帯電話によるインターネットアクセスの調査結果
★ ポータブル は、持ち運びができる ということで、ポータビリティ は、その名詞です。衣類は、折りたたみができますから、もともと、ポータビリティがあります。それを、さらに一歩進めると、ポケットに入る、ポケッタブル に、なります。
★ 不意の雨に備えて、携帯する雨具は、ポータビリティが必要です。コートは、ポケッタブルの製品があります。傘は、ポケッタブルは無理ですが、折りたたみ傘は、十分なポータビリティが、あります。
★ パソコンに、ポータビリティを持たせた製品が、ノートパソコン(下図左)です。ノートパソコンを、さらに、ポケッタブルにしたのが、ポケット PC (ポケコン)(下図右)です。そして、その中間が、PDA (下図中央)ということに、なります。
★ 固定電話においては、電話番号は、地域とリンクして いますから、同じ局番の地域内では、移転してしても、同じ番号が、使えます。しかし、局番が異なる地域への、ポータビリティは、ありません。
★ 携帯電話の電話番号は、当然ながら、地域とのリンクは、ありません。その代わり、電話会社とリンクしています。電話会社を変えると、電話番号が、変わってしまいます。しかし、これは、ユーザーにとっては、不便です。
★ これを避けるために、電話会社を変えても、同じ電話番号を使い続けることができるように、番号ポータビリティ が、2006 年から、導入されることになっています。
★ ソフトウェアにおける、ポータビリティも、あります。ソフトウェアの、ポータビリティとは、あるプログラムを、他の OS や、コンピュータの上で動かそうと思ったときに、どのくらい簡単に、プログラムを改造できるかと、言うことです。
★ 一般にプログラムは、CPU や OS などの、基礎的な部分に、ある程度依存するように、作られています。このため、たとえば、ウィンドウズ上で動いていたプログラムを、Mac OS 上にコピーしても、そのままでは、全く動作しません。
この、基礎的な部分のソフトウェアのことを、プラットフォーム といいます。
★ このソフトウェアに依存している部分を書き換えて、違った環境でも、プログラムが、同じ動作をするように改造することを、移植 する といいます。この移植が、どの程度簡単にできるかを示す言葉が、ソフトウェアにおける ポータビリティ です。
★ ポータビリティの高いプログラムは、僅かな改造で、異なったプラットフォーム上で、動作する、ことができます。ポータビリティの低いプログラムは、複雑な改造を施さないと、違ったプラットフォームに、対応できません。
★ 全く別の、ポータビリティがあります。年金 のポータビリティです。企業の年金は、企業毎に、別のものです。この企業の年金を、確定拠出年金 制度によって、ポータビリティを持たせることが、できます。
★ 軽薄短小 という言葉が、一時流行しました。これに対する言葉が、重厚長大 です。軽薄短小が、もてはやされたのは、中身が同じで、外形が小さいからです。同じ内容のものが小さくできる、このことが最も端的に現れたのが、エレクトロニクスの製品です。エレクトロニクス製品の開発が、盛んになったときと、軽薄短小の言葉が流行したのとは、期を一にしています。
★ 下図は、携帯電話の、軽薄短小化の歩みです。
★ さて、コンピュータシステムは、クライアント/サーバ システムになっている場合が多いのです。サーバは、1 台ないしは少数ですが、クライアントは、一般に多数です。システム全体のコストを考えると、クライアントを、軽薄短小にすることが、重要です。
★ この、クライアントを軽薄短小にしたシステムのことを、シンクライアント といいます。
すなわち、企業の情報システムにおいて、社員が使うコンピュータ(クライアント)に、最低限の機能しか持たせないで、サーバ側で、アプリケーションソフトやファイルなどの、資源を管理するシステムのことを、シンクライアントと、いいます。
★ また、そのようなシステムを実現するための、機能を絞った低価格の、クライアント用コンピュータのことも、シンクライアントといいます。
★ シンクライアントには、もう 1 つの特徴があります。それは、パソコンを、盗難や紛失しても、情報漏洩 の心配がないことです。最近、個人情報保護法 が、施行されました。このため、本人の同意を得ない情報の開示についは、罰則があります。シンクライアントなら、クライアントマシンを紛失しても、この問題は、発生しません。
★ シンクライアントには、次の、3 つの方式があります。
★ 図の(a)は、画面表示、計算処理、記録装置の 3 大リソースが、サーバ側にあって、クライアントには、画面を転送する方式で、画面転送形 といいます。
図の(b)は、ディスクレス形 といい、ハードディスクだけを、サーバ側に置き、他はクライアント側にある方式です。
図の(c)は、KVM スイッチ形 といい、KVM スイッチと呼ばれるスイッチを設けることによって、ディスプレイ、キーボードおよびマウスの信号を、100 m 延長できる方式です。
★ トリプルプレイは、元々は、野球における、3 重殺のことです。ダブルプレイですら、少ないのですから、トリプルプレイは、珍しい でき事です。
★ この、野球のトリプルプレイをもじって、光ファイバや xDSL 上で、従来から行っている、高速データ通信に加えて、IP 電話と、動画像の配信サービスとを取り入れた、コンシューマー向けのサービスのことを、トリプルプレイ と、呼んでいます。
★ トリプルプレイは、比較的新しいサービスで、通信事業者や、サービスプロバイダ、地方自治体などにおける、新たな収益源として注目されています。
特に音声(電話)については、各電話会社は、次世代ネットワークへの、移行を始めています。
★ 次世代ネットワーク (NGN )とは、従来のサービスごとに、構築されていたネットワークを、IP に、統一する作業です。この NGN の 1 つとして、FMC があります。
FMC は、愛知万博で、実証実験が、行われました。
★ FMC の代表的なサービスが、ワンフォンです。ワンフォン とは、1 台の電話機を、屋外では、携帯電話として使用し、家庭内では、ブルートウースや無線 LAN 経由で有線を通して通話するものです。ただし、ワンフォンが、普及するかどうかを、危ぶむ向きも、あります。