◆ 電話番号 の体系は、図 8.2-45 のように、なっています。
◆ 一般の電話は、0ABJ と呼ばれる、10 桁の番号になっています(図 8.2-46)。0ABJ の名は、0ABCDEFGHJ からきたもので、最初に 0 が入る 10 桁を意味しています。I(アイ)が抜けていますが、これは、I(アイ)が、1(イチ)と紛らわしいから、抜かしただけのことです。
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携帯電話などは、番号が、0A0CDE〜となっており、CDE の部分が事業者により異なっています。このことから、CDE コードと呼ばれたりしています。
電話は、電話番号の最初の部分によって、その種別が識別されますから、電話番号で、宛先に振り分けられます(図 8.2-47)。
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回線交換の原理は、8.2.(3-B-a) で説明しましたが、実際の交換機では、スイッチングを行っているのでは、ありません。交換機は、実は、コンピュータです。これを、ディジタル交換機 と呼んでいます。
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電話の信号は、アナログです。ディジタル交換機は、ディジタルですから、A/D 変換と、D/A 変換が必要です(図 8.2-48)。
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交換の対象になる信号は、A/D 変換後、ディジタル交換機(コンピュータ)のメモリに、収容します。そして、D/A 変換して、出力します。交換のやり方を、図 8.2-49に示します。図は、ディジタル化された部分を示します。A/D、D/A 変換部は、示してありません。
図で、左側(大文字)が入力、右側(小文字が出力です。そして、A と a のように、同じ文字のものが、同じ回線になっています。図では、A と C、E と F とが接続され、B と D とは繋がっていません。
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A からの入力は、メモリ(A)を経て c に出力され、C からの出力は、メモリ(C)を経て a に出力されます。
このように、一旦メモリに蓄積されてから、出力されることから、この交換のやり方を、蓄積交換 とも、呼んでいます。
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さて、ディジタル交換では、アナログ信号を A/D 変換しています。A/D 変換では、サンプリング定理が、適用されます。サンプリング定理によれば、アナログ信号に対して、少なくとも 2 倍の周波数で、サンプリングすることが、必要です。電話では、細かな音質は問いませんが、少なくとも、音声を明瞭に聞き分ける必要が、あります。このために必要な周波数は、3.4 kHz です(コラム 8.2-3)。
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したがって、6.8 kHz 以上で、サンプリングしなければ、なりません。電話システムでは、サンプリング周波数を、8 kHz に取っています。
また、量子化ビット数も、音声の明瞭度に影響します。電話の量子化ビット数は、8 ビットです(量子化ビット数を小さく押さえるための技術を使用していますが、詳細に付いては触れません)。ちなみに、オーディオでは、たとえば、量子化ビット数 24 ビット、サンプリング周波数
32 kHz です。
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電話では、伝送は、直列伝送ですから、伝送速度は、64 k ビット/秒となります。
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ディジタル交換機を使用するシステムでは、電話信号は、交換機では、ディジタル化され、ディジタル信号を使用しています。であるなら、回線自体も、ディジタル化して、オールディジタルのシステムに、してしまうことが、考えられます。
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アナログの信号は、波形そのものが情報です。波形が歪むことは、品質の劣化を意味します。歪んだ波形を、回復することは、一般には、困難です。これに対して、ディジタル信号には、ノイズマージンがあります。多少波形が歪んでも、これを整形し、回復させる手段があります(たとえばシュミットトリガ)。さらに、誤りが発生しても、伝送誤り制御を行っていれば、誤りを検出して訂正することが、可能です。
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この意味で、システムをディジタル化することは、システムの信頼性を高くすることができます。コスト面を、考えても、ディジタルは、アナログよりも、安くつく傾向にあります(別の講座「自動制御の基礎と実際」1.5.(2)参照)。とくに、システムが複雑化すれば、するほど、ディジタルが、有利です。
実際に、世の中の、傾向を見ても、ディジタル化の波が押し寄せています。
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以上から、電話を含む、通信システムを、オールディジタル化しようという、考え方が、あります(図 8.2-50)。
◆ これを、具体化したシステムを、ISDN (統合化ディジタルシステム )といいます(図 8.2-51)。
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ISDN は、計画が立てられた頃は、確かに、壮大は計画でした。しかし、実際には、その一部分が実現しただけで、全体計画は、陽の目を見ませんでした。
これは、計画が壮大過ぎたのではなく、逆に、時代の進歩が速すぎて、ISDN の構想が、時代遅れになって、しまったからです。ISDN ば、電話をベースにして考えられたものです。したがって、ディジタルの伝送速度は、64 k ビット/秒が、基本です。モディファイして、128 k ビット/秒や、256 k ビット/秒で使うことは、できますが、高々その程度です。
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LAN や USB (代表的なパソコン インターフェース) などの発展と普及によって、現在では、M(メガ : 106) ビット/秒、さらには、G(ギガ : 109) ビット/秒が当たり前になっています。ISDN に代わって、インターネットや、インターネットにアクセスする、ADSL 、FTTH などが、主流になっています。ただし、主流ではありませんが、ADSL や、FTTH のバックアップとして、ISDN は、健闘しています。通信では、高い信頼性が、要求されますから、バックアップシステムが、重要です。
★ 電話の発明は、グラハム・ベルということになっています。しかし、もう 1 人、ほぼ、同時に、電話を発明した人がいます。それは、エリシャ・グレイです。そして、電話発明の特許出願は、同じ日(1876 年 2 月 14 日)の、僅か、2 時間の違いでした。
★ ベルは、同年 10 月にフィラデルフィアで開かれた万国博覧会に、電話機を出展しました。そこで、ブラジル国王ペドロ2世に認められたことが、電話普及のキッカケです。わが国における、電話普及の歴史を、示します。1876 年にベルが電話を発明した、2 年後には、国産の電話機が誕生していますから、ずいぶん速いことが、分かります。
★ 次に、わが国における、電話機の変遷と、電話普及の過程を示します。新しいサービスの出現に伴って、旧来のサービスが、減少に転じていることが、分かります。
★ 電話の交換も、昔は、人手(上図左)による、手動交換 でしたが、自動交換機 (日本初 上図右)、クロスバ交換機 (下図左)を経て、今は、電子交換機 (ディジタル交換機)(下図右)です。電子交換機は、コンピュータです。
★ 下記に示すサービスは、交換機が、コンピュータであることを、活用した、サービスです。
(1) ナンバーディスプレイは、掛けてきた相手の電話番号を、表示する機能です。
(2) ボイスワープは、かかったきた電話を指定した番号に、転送する機能です(掛かってきた電話に、応答した後に、転送することもできます)。
★ 番号が付いているものは、沢山あります。くじ の番号は、当れば、嬉しいし、外れれば悔しい番号です。入学試験の受験番号は、合格発表のときは、天に祈る気持ちになります。
★ さて、電話番号の体系は、IP 電話の出現によって、番号ポータビリティの問題が、発生しています。固定電話と、携帯電話は、互いに電話を掛けることができますが、それぞれは、独立した別のシステムです。電話番号も、別のもので、何ら問題はありません。
★ IP 電話も、従来の固定電話とは、別のシステムですから、電話番号も、050 で始まる、別の番号体系が、割り当てられています(8.2.(3-B-a))。
★ IP 電話は、いままで使っていた固定電話同じように使います。したがって、固定電話で使っていた電話番号をそのまま使い続けたいという要望が出てきます。同じ番号を、そのまま使い続けることを、番号ポータビリティ といいます。IP 電話は、固定電話と同じ番号を使う、番号ポータビリティを持たせることができます。
★ 体系化されている番号は、電話番号のほかに、郵便番号 があります。郵便番号は、以前は、5 桁でしたが、現在は、7 桁です(下図左)。
★ 国民総背番号として、騒がれた、住民基本台帳 (住基台帳 )ですが、現在では、住基ネット (住民基本台帳ネットワークシステム )として、本格稼働しています。IC チップを埋め込んだ「住基カード 」(上図右)も登場しています。カードには住所、氏名といった基本的な情報が登録され、全国どこでも住民票 の写しなどを、簡単に取ることが、できます。
★ また、これに加えて、図書館の貸し出しや公共施設の利用予約など、市区町村の独自サービスを、同一カードで提供しようとする動きも、広がっています。2004 年 11 月から、電子署名機能による個人認証サービスを利用した、オンライン申請ができるようになり、カードの普及が進み、自治体の独自利用も増えるものと、思われます。
★ 台風 にも、番号が付いています。台風の意味は、常識的には、ほとんど、誰でも知っていますが、正確に定義すると、次の通りです。熱帯の海上で発生する低気圧を、「熱帯低気圧 」と呼びます。このうち北西太平洋で発達して、中心付近の最大風速が、およそ17m/s(風力8)以上になったものを、「台風」と呼びます。
★ 気象庁では、毎年1月1日以後、最も早く発生した台風を第1号とし、以後台風の発生順に番号を付けています。また、番号とは別に、名前も、付けられています。
★ 台風委員会(日本ほか14カ国等が加盟)は、平成12年(2000年)から、北西太平洋領域で発生する台風には、同領域内で用いられている固有の名前(加盟国の言葉で動植物や自然現象に関係する名前)をつけることになりました。
★ 平成12年の台風第1号に、カンボジアで「象」を意味する「ダムレイ」の名前が付けられ、以後、発生順に、あらかじめ用意された、140個の名前を順番に用いて、その後再び「ダムレイ」に戻ります。上図右は、名前の、一部分です。
★ 台風は、強さと、大きさとによって、階級分けされています。
★ 携帯電話と類似のシステムに、PHS があります。携帯電話と同様に、通話したり、データを送受信したりできますが、携帯電話よりも、設備や仕様を簡略化して、料金を低く押さえたシステムです。
なお、PHS は、携帯電話以外に、コードレスホンや、トランシーバ としても、使用可能です。
★ ただし、携帯電話の機能充実と、通話料の低減とに伴って、PHS の特長が失われ、今後は、公衆網としては、廃止の方向に、あります。
★ PHS は、携帯電話よりも、電波のパワーが低いので、一つの基地局が、カバーするエリアは狭くなります。したがって、携帯電話よりも、基地局を、密に配置しなければ、なりません。その反面、医療機器 などに対する妨害は、少ないのです。このため、病院内などでの使用が可能です。
★ 病院 内での内線電話に、PHS を採用しているところも、あります。これに対して、携帯電話は、医療機器、医療用検査機器 に影響を与えるため、病院内では、使用が禁止されていることが、多いのです。
★ 最近では、携帯電話の低料金化が、進んだため、PHS は、一時期、利用が大幅に減少しました。しかし、最近では、PHS も、データ通信に活路を見出し、データ通信で、利用されています。下図左の、DDI ポケットは、PHS のサービスです。
★ 無線 LAN (ワイヤレス LAN )は、その名が示すように、元々は、オフィス内などで使われている、ローカルのネットワークです。下図に示すように、2 つのモードがあります。
インフラストラクチャモード は、アクセスポイントが中心になって、やり取りを行います。アクセスポイントを、有線の LAN に接続すれば、有線系の LAN ともやり取り取りを行えます。
ピアツピアモード (アドホック モード)は、直接相互間のやり取りを行います。
★ 信頼とは、信じて頼ること、または、信用して任せることです。信頼は、自然に起こることへの期待と、人の気持ちに対する期待の二つに分けられます。前者は、たとえば、「目覚し時計がちゃんと鳴る」ということの信頼です。人間関係においては、信頼は、その関係をより豊かにします。
★ 人間関係の信頼は、定量的に評価すすることは、困難ですが、物に対する信頼は、定量的に、評価することが、できます。物を、ちゃんと、使うことができる性質を、信頼性と、言います。信頼性の言葉は、常識的な意味と、用語として定義された意味とがあります。以下は、用語としての、信頼性 (リライアビリティ )の、お話です。
★ 信頼性とは、アイテムが、与えられた条件で、規定の期間中、要求された機能を果たすことができる性質をいいます。ここで、アイテム とは、信頼性の対象となる物、系、機器、部品などのことです。
★ というと、なんだか、しち面倒くさいですが、くだいて言うと、次のように、なります。信頼性には、広義の信頼性と、狭義の信頼性とが、あります。広義の信頼性は、下図に示すように、狭義の信頼性と、保全性を総合した、指標です。この、広義の信頼性を、狭義の信頼性と区別するために、広義の信頼性性のことを、アベイラビリティ (可用性 )と言います。
★ この、信頼性を、定量的に表すものが、信頼度 です。すなわち、信頼度とは、アイテムが与えられた条件で規定の期間中、要求された機能を果たすことができる確率 です。
ここで、与えられた条件で、規定の期間、要求された機能を果たすということが、重要です。たとえば、用途によって、与えられる条件が、異なります。
★ 信頼度 R は、故障 の逆です。故障する確率、すなわち、故障率 を F とすれば、
( 1 - R ) = F
の関係があります。また、よく使われる尺度に、MTTF と MTBF があります。MTTF は、修理 しない 系、機器、部品などの、故障までの動作時間の平均値です(下図左)。
★ これに対して、MTBF は、修理を行う系での、故障から次の故障までの、平均時間です(上図右)。
★ 修理を行う系では、修理などの、保全 に要する時間も、確率です。保全性 (保守性 )と、保全度 が、信頼性と同様に、定義されます。すなわち、保全性は、アイテムの保全が、与えられた条件において、規定の期間に、終了できる性質であり、保全度は、その、確率です。
★ 保全には、予防保全 (PM )と事後保全 (CM )があります。
★ 保全においても、MTBF に対応する、MTTR が使用されます。MTTR は、修理時間 の平均値です。
前述のアベイラビリティの尺度として、MTBF と MTTR とを総合した、固有アベイラビリティ が、あります。
★ アベイラビリティは、その目的に応じて、各種のものが、用いられています。たとえば、運用アベイラビリティ は、
で定義される、アベイラビリティです。
★ システムの信頼性を高くする手法に、バックアップ があります。たとえば、装置を 2 重化 しておき、1 台が故障しても、システムは、ダウンしないように、します。下図は、回線の 2 重化です。
★ しかし、単に装置を 2 重化しても、切り替え装置が故障すると、切り替えができなくなります。下図は、切り替え部分を含んだ 2 重化です。
★ ソフトウェアを含み、データを書き換えるシステムでは、2 重化されたデータの、同期を取ることも必要です(コラム 8.1-1)。