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パソコン本体の お話が、一通り終わりましたので、個別の周辺機器のお話に入ります。ただし、ディスプレイは、9.1.(5-B-a) と、コラム 9.1-10 〜コラム9.1-13 で、すでに、お話しています。
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ここの お話は、ハードディスクからです。ハードディスク (HDD )(図 9.2-40)は、補助記憶装置の最も代表的な製品です。ハードディスクは、磁気ディスク の一種です。図の左側は、パソコン本体内蔵形ハードディスク 、右は、外付け形ハードディスク です。
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ハードディスクは、補助記憶装置の中では、図 9.2-41 に示す地位にあります。ハードディスクは、他の大容量ストレージ(たとえば、FD や、CDROM と比べて高速です。
なお、パソコンの記録メディアの変遷については、[ここ]をクリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」で戻ってください。)。
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メモリは、ランダムアクセスが可能であるのに対して、ハードディスクは、シーケンシャルアクセスです。
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ランダムアクセス というのは、メモリをアクセスするときの、アクセス方法です。メモリでは、メモリに、アドレスを付けておき、アドレスを指定することによって、任意のアドレスの内容を、任意の順序で、読み書き(リード/ライト)することが、できます。
これに対して、シーケンシャルアクセス は、アドレスの順(または逆順)に、アクセスします。
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ハードディスクの構造を、図 9.2-42(左側) に示します。
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磁気ディスクは、高速で、回転しています。データは、磁気ヘッドによって、読み書きしますから、磁気ヘッドが一定の位置にあるときは、データは、磁気ディスクの円周方向に沿って、書き込まれます(図 9.2-42 の右側)。すなわち、ハードディスクは、シーケンシャルアクセスのマシンです。
この円周方向の一周をトラック といいます。このトラックに沿った読み書きが、最も高速です。
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これに対して、別のトラックに移動するときは、スイングアームを回転して、磁気ヘッドの位置を変えなければ、なりませんから、時間が掛かります。この時間のことを、アクセスタイム といいます。
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ハードディスクは、メカが主体の製品です。一般に、メカ製品は、電子製品と比べ、性能アップの速度が遅いのですが、ハードディスクの性能アップは、急速です。
図 9.2-44 は、ハードディスクの、面記録密度 の向上です。
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面記録密度の向上は、年率 30 % と言われていますが、従来の技術では頭打ちの傾向があります(図の製品(青色))。
そこで、登場したのが、垂直記録 方式です(図の研究(赤色)。(図 9.2-45)。図では研究となっていますが、既に製品化されています。
◆ 以上の技術進歩に伴って、ハードディスクの容量も増加しています(図 9.2-46)。
◆ ハードディスクは、高速で回転し、しかも、ディスクと磁気ヘッドとの距離は、10〜30 ナノ m という、精密機械です。したがって、その信頼性が問題になります。ハードディスクの信頼性は、ハードディスクの周囲温度が大きく影響します(図 9.2-47)。図は、ハードディスクの周囲温度と MTBF との関係です。
◆ 磁気テープ装置 (ストリーマ )は、以前は、補助記憶装置の花形でした。図 9.2-48 の左側奥の 3 台は、1960 年代の汎用コンピュータの磁気テープ装置です。
しかし、磁気テープ は、取り扱いが面倒です。現在では、磁気ディスク装置のバックアップ装置として、使われています(図 9.2-49の左および中央)。
[図 9.2-49] バックアップ用磁気テープ装置、パンチカードと紙テープ
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紙テープ は、コンピュータの初期の頃に、使われた記録媒体で、紙テープに孔を開け、孔の位置でコードを表したものです(上図の右側、斜めの白いテープ)。紙テープは、コンピュータの記録媒体としては、現在では、ほとんど使われていませんが、NC (数値制御 )などでは、現在でも、使われています。
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パンチカード (上図の右側、黄色のカード)も、以前、コンピュータの入出力媒体、兼記録媒体として、使われました。図 9.2-50 は、パンチャー室です。キーパンチャー が、パンチカードをパンチしています。現在でも、キーパンチャーの名は残っていますが、コンピュータへの入力作業を行うのであって、パンチカードをパンチする仕事では、ありません。
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磁気テープは、現在では、コンピュータ用としては、あまり使われていませんが、オーディオ用やビデオ用として、使われています。しかし それも、主役の座は、MD(ミニディスク)、DVD などのディスクに譲っています。
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磁気テープには、オープンリールタイプ磁気テープ と、カセットタイプ磁気テープ とがあります。オープンリールタイプレコーダー を、図 9.2-51 の左側に、カセットレコーダ を中央に、コンパクトカセット を右側に、示します。通常、カセットテープ と呼ばれているのは、このコンパクトカセットのことです。コンパクトカセットをディジタル化した、DCC (ディジタルコンパクトカセット )も、あります。コンパクトカセットの誕生にについては、[ここ]をクリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」をクリックしてください)。
[図 9.2-51] オープンリールレコーダとコンパクトカセット
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ハードディスクも、磁気ディスクの一種ですが、磁気ディスクの中では、別格です。ここでは、ハードディスクの一つ下にランクされる、磁気ディスクについて、説明します(図 9.2-41 参照)。フロッピーディスク (FD )は、9.2.(1-B-d) で説明しました。
FD は、従来は、パソコンに必須のものでしたが、最近では、使う機会が、ほとんどありません。このため、最近のパソコンでは、FD ドライブを、実装しない製品もあります。
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FD と同等のものに、Zip があります(図 9.2-52)。Zip は、フロッピーディスクの大容量版です。フロッピーディスクの、1.44 メガバイトに対して、Zip は、100 または 200 メガバイトです。しかし、Zip は、普及しませんでした。
次に述べる、Zip よりも大容量のディスクが、先に普及して、しまったからです。
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FD と Zip を除くと、このランクの磁気ディスクは、純粋の磁気ディスクではなく、光を併用したものが、ほとんどです。
CDROM またはその上位互換の CD-R 、CDR-W 、DVD は、CD サイズ(直径 12 cm、厚さ 1.2 mm)の光ディスクです(図 9.2-53)。以前のパソコンは、CDROM ドライブを実装していましたが、最近のパソコンは、ほとんどが、CDR-W 以上のドライブを、実装しています。
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MO (光磁気ディスク )もあります。MO の詳細は、[ここ]をクリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用してください)。
◆ ミニディスク (MD)(図 9.2-54 の左側)や、それを容量アップした、HiMD (図の右側)もあります。
◆ ミニディスクの録音容量を、図 9.2-55 に示します。HiMD は、1 GB で、最長 45 時間の録音が可能です。HiMD は、データ用もあります。
◆ 次は、プリンタです。プリンタ は、文字や画像を、紙に印刷して出力します。パソコン以外のものと組み合わせたり、それらの機器に内蔵されたプリンタも、ありますが、多くはパソコンの周辺機器として使用します(図 9.2-56)。
◆ 図に示したように、いろいろな機種がありますが、多く使われているものを比較すると、図 9.2-57 となります。比較の詳細は、[ここ]と[ここ]をクリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用してください)。
◆ この中で、家庭などで、圧倒的に、多く使われているのは、インクジェットプリンタです(図 9.2-58)。詳細は、[ここ]をクリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用してください)。
◆ まず、インクジェットプリンタ (図 9.2-59)から、お話を始めます。
◆ インクジェットプリンタの原理を、図 9.2-60 に示します。図に示すように、2 つの方式(電気機械変換方式 と電気熱変換方式 )がありますが、いずれの場合でも、インクの液滴を、飛ばして、用紙に付着させます。
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インク室 から、インク が微細な液滴となって、飛び出し、この液滴が用紙に付着して、ドット を形成します。インク室、用紙または、インク室と用紙を、少しずつ移動させることによって、用紙の上に、線を画き、その線によって、文字または画像を画いて行きます。
ドットによって形成する文字の形のことを、ドットフォント といいます。ドット数が多いほど、きれいな文字を作ることが、できます(図 9.2-61)。
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フォント とは、印刷などに用いる書体 のことです。おもな、フォントの一覧は、[ここ]をクリックしてください。一般に多く使われているのは、明朝 の系統で、その中で、強調する部分に、ゴシック の系統が使われていることが、多いと思います。
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ウィンドウズ(ウェブ)の、デフォルトのフォントは、MS P ゴシック です。ゴシックは、太字で表されますが、MS P ゴシックは、大きさが、 中 以下のときは、普通文字(細字)で表示されます。
この「お話し」(ホームページ)は、ウインドウズのデフォルトです。なお、ウェブは、クライエント側で、フォントを指定することができ、指定した場合は、デフォルトに優先します。
フォントに関する詳細は、[ここ]をクリックしてください。個別のフォントについては、[こちら]をクリックしてください。
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英文のフォントは、日本語のフォントと異なり、歴史的な意味を持っています。フォントの選択を誤ると、とんでもない、誤解を招く恐れがあります([ここ]をクリックしてください。上記 4 つのリンクは、戻るとき、ブラウザ上部の「戻る」をクリックしてください)。
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実際に印字 される文字は、ドットが丸いので、図 9.2-62 のように、なります。
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サイズの小さいドットを密に並べるほど、細かなパターンを表すことができます。ドットの細かさは、1 インチ当りのドット数で表し、これを印字の解像度 といいます。解像度の単位は、ドット/インチ (dpi )です。
人の眼にも、解像度があります。人の眼の解像度は、視細胞によって決まります(コラム 9.1-4 参照)。印刷が、細かすぎても、意味がありません。一般的な、プリンタの解像度は、300〜1200 dpi くらいです。
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インクの色を、複数使用することによって、カラー化するることができます。原理的には、色の 3 原色のインクを使用することによって、任意の色を再現することが、できます。しかし、実際には、黒を含む、4 〜 6 色のインクを使用することによって、色の質を高めています。
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カラープリント の場合には、複数ドットで、モノクロ の 1 ドット分を表します。したがって、カラープリントの解像度は、実質上、その分だけ、落ちることになります(図 9.2-63)。逆に言うと、カラープリントの解像度は、実質的に必要な解像度の、3 〜 4 倍 無ければ、なりません。詳細は、[ここ]をクリックしてください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用してください)。
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プリンタの性能を表す、もう一つの指標が、印字速度 です。印字速度は、印字のやり方によって、表し方も、異なります。
シリアルプリンタ (たとえば、普通のインジェットプリンタ)は、1 キャラクタ(または、1 ドット)ずつ印字するので、印字速度の単位は、cps (キャラクタ/秒)と、なります。
ラインプリンタ は、一度に、1 行ずつ印字しますから、単位は、LPM (行/分)です。インクジェットプリンタにも、ラインプリンタのものがあります(図 9.2-64)。
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ページプリンタ (図 9.2-57 参照)は、1 ページ分を、まとめて、1 度にプリントします。印字速度は、ppm (ページ/分)が用いられます。
ページプリンタは、ほとんどが、電子写真式プリンタ です。図 9.2-65 は、電子写真 の原理です。図は、レーザービーム方式 と呼ばれる方式のものです。
◆ プリンタは、使用できる、用紙幅 によっても、分けられます。通常は、使用可能な最大の用紙サイズで、たとえば、A3 縦 のように、表します。用紙サイズを、図 9.2-66 に示します。図の、A 判、B 判 というのは、JIS のサイズです。
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初期のプリンタは、タイプライター (図 9.2-67の中央左側)と同様に、活字 を打ち付けて印字する方式でした。この方式を活字式 (活字インパクト方式 、デージーホイール方式 )といいます。この活字式プリンタは、シリアルプリンタです。
図の左側は、最初のタイプライタ 1 号機です。図の中央左は、最近の手動式タイプライタ、中央右の、丸く広がっている部分が、デージーホイール です。
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タイプライターは、元々は、英数字用でしたが、カナタイプライタ (図の右側)も、作られました。
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しかし、日本語では、カナだけではなく、漢字に対応することが、望まれます。漢字タイプライタ (邦文タイプライタ )(図 9.2-68)が、一時期使われました。
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、最近では、タイプライタは、あまり使用されません。ワープロ(ワードプロセッサ)や、さらには、パソコンを使用することが、ほとんどです。ワープロも CPU を内蔵していますから、パソコンと同じと、考えることが、できます。
パソコンでは、キーボードを使用します。キーボードについては、さらに、後の9.2.(1-B-l) を参照して下さい。
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パソコンは、コンピュータですから、ソフトウェアを利用して、快適に、日本語(漢字、カナ交じり文)を入力することが、できます。
日本語を発音通りに、カナ文字でキー入力し、それを、カナと漢字の混じった文章に、変換してくれる、カナ漢字変換 ソフトウェアです。カナ入力の代わりに、ローマ字で入力する、ローマ字漢字変換 ソフトウェアも、あります。この(ウィンドウズにおける)変換ソフトウェアのことを、IME といいます。
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IME の使い方は、[ここ]をクリックしてください。また、IME の使い方に関する記事は、[ここ]をクリックしてください(どちらも、戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用してください)。
日本語は、ローマ字で表すと、カナ文字よりも、平均して 1.6 倍のキー入力数を必要とします。この意味では、カナ入力の方が、効率が高いのです。
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しかし、実際には、ローマ字入力の方が、多く利用されています。日本語の文章中に、英文字が含まれないときは、カナ入力の方がていしています。しかし、日本語の文章中に、英文字が混じっているときには、変換方式の切り換えを行わなければなりませんから、手間が掛かります。カナ漢字変換と、ローマ字漢字変換とでは、それぞれ、一長一短が、あります。好みに合った方を、使用すれば良いでしょう。
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ドットインパクトプリンタ は、ドットフォントを、1 字づつプリントするプリンタです(図 9.2-69の左側)。図の中央は、プリンタヘッド 、図の右は、プリンタヘッドのピンです。プリンタヘッドのドットで、インクリボンを叩いて印字します。ドットインパクトプリンタは、以前は、プリンタの主流でしたが、最近は、あまり、使われていません。
◆ 熱転写プリンタ (昇華形プリンタ )は、フォトプリンタの形で、利用されています。フォトプリンタ (図 9.2-70 の左側)は、デジカメで撮った写真を、その場でプリントするのに使われます。図の右側は、熱転写プリンタの原理です。
◆ 熱転写プリンタは、固形インク を塗布したインクリボン に、印字ヘッド で熱を加えて、インクを昇華させ、ポリエステル系の樹脂でコートした専用の熱転写用紙に、画像を転写します。昇華 とは、固体が、液体を経由しないで、直接気体になる現象です(図 9.1.95 参照)
◆ プリンタと、逆の機能を持った、パソコン周辺機器が、スキャナです(図 9.2-71)の左側。スキャナ は、2 次元の文字や画像を、パターン として、パソコンに取り込みます。バーコードリーダー のような、1 次元入力のものも、あります(図の右側)。図のバーコードリーダーは、手動でスキャンします。2 次元スキャナも、家庭用の簡易なタイプは、手動のスキャンです。
◆ スキャナの原理を、図 9.2-72 に、その構造を、図 9.2-73 に示します。リニアイメージセンサ (図 9.2-72 の右側に示す)は、フォトダイオードなどの、光センサを、多数、直線状に、並べたものです。なお、図 9.2-72 と、図 9.2-73 とでは、形式が異なります。図 9.2-72 では、原稿が移動します。これに対して、図 9.2-73 は、センサの方が、移動します。原稿が固定のスキャナを、フラットベッドスキャナ と言います。
★ 複合とは、2 つ または、それ以上のものが結合して、1 つになることです。
スキーの複合競技は、ジャンプ競技と、距離競技の 2 種目の得点の合計によって、順位を決めます。ジャンプでは、瞬発力が、距離では、持久力が求められるために、厳しい競技です。
★ トライアスロンは、さらに厳しい競技です。水泳、自転車、マラソンを連続して行います。
★ プリンタは、単独ではなく、他の周辺機器の機能と、一体になった機種があります。これを、プリンタ複合機 と呼んでいます。下図左側は、卓上形で、家庭でも使用できます。下図右側は、本格的な製品です。ただし、複合する機能は、どちらも同等で、違いは、処理能力と耐久性です。
★ プリンタ複合機は、プリンタとコピー機とを組み合わせたものが基本ですが、さらに、スキャナや、FAX と組み合わせたものも、あります。
スキャナや FAX は、プリンタを使用する場所と、同じ場所で、使用することが、多いので、複合機になっていれば、スペースと、コストの節約になります。
★ コピー機 は、パソコンの周辺機器では無く、単体で使用する機器ですが、電子応用の事務用機器としては、古くからの製品です。コピー機の元は、カーボン紙にまで、遡ることが、できます。
★ しかし、機械と呼べるものは、ジアゾ式複写機 から、でしょう。ジアゾ式複写機で作ったコピーは、地が濃い青色をしていたことから、青焼き と呼ばれています。以前は、図面といえば、青焼きでした。
青焼きは、現在使われている、コピーとは異なり、透明な、原図 と呼ばれている、原稿が必要です。
★ 下図左側は、青焼きの図面を、見ているところです。青焼きの図面は、丈夫で、汚れ難いので、現場で使うのに、適しています。下図中央は、以前の青焼き機 です。湿式といい、現像に、水溶液を使用します。図の右側は、最近の青焼き機です。液を使わないので、取り扱いが、容易です。
★ 最近では、一般には、普通紙コピー ができる、コピー機が、使われています。コピー機の原理は、電子写真と同じです。上記の、複合機は、普通紙コピーができます。
★ コピーが簡単に取れるように、なったことによって、オフィスでの、仕事のやり方が、以前とは、大きく変わり、便利になりました。
しかし、逆に、紙の洪水 を招いています。書類が多すぎて、必要な書類を、必要なときに、取り出すことが、困難になっています。
★ 紙の洪水に、対応するためには、書類の整理と保管に、コンピュータを利用することが、効果的です。下図は、設計図面の例ですが、書類の電子化 によって、ペーパーレス オフィスを実現することが、できます。勿論、完全なペーパーレスは、不可能ですが、紙の洪水を防ぐことは、可能です。そして、必要な書類を、必要なときに、素早く、取り出すことが、できます。書庫のスペースも、少なくて、済みます。