電気と電子のお話

8. インターフェース

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8.2. 各種のインターフェース

8.2.(3) ネットワーク

8.2.(3-D) TCP/IP

8.2.(3-D-a) プロトコルの体系化

◆  世の中は、どんどん、複雑化しています。プロトコルも、その例外では、ありません。勿論、複雑化するのは、複雑化する、原因があるからです。
通信は、いろいろな用途に用いられます。目的、用途が異なれば、それに、最適なプロトコルは、違ったものになります。
すなわち、プロトコルの種類が多いということです。
◆  ところで、互いにデータをやり取りする場合、互いのプロトコルは、等しくなければ、なりません(コラム 8.1-2)。互いのプロトコルが異なるということは、日本語だけしか分からない人が、英語だけ喋れる人と、会話するのと同じことで、互いのやり取りは、不可能です(図 8.2-70)。図で、A、B は、プロトコルの種類です。

[図 8.2-70] プロトコルが等しくなければならない

プロトコルが等しくなければならない

◆  プロトコルが、等しくないと、互いのやり取りが、できないのですから、世の中に、プロトコルの種類が多いということは、やり取りできないものが、多いということです。勿論、互いに、関係がないものは、やり取りできる必要はありませんが。
◆  しかし、最近は、ネットワ−ク化が進んでいます。たとえば、家庭内の家電を、ネットワーク化することも、行われ、はじめています。ネットワーク化するということは、ネットワーク内で、相互のやり取りを行う、ということです。すなわち、やり取りしたい相手が、多くなっているのです。
◆  プロトコルが、体系化 されていれば、多くのものの間の、やり取りを、可能にすることが、できます。インターネットは、高い汎用性、すなわち、何時でも、どこでも、誰でも、が、要求されます。体系化されたプロトコルの、代表例が、インターネットです。
以下、インターネットを例に、プロトコルの体系化について、説明します。

8.2.(3-D-b) プロトコルの階層化

◆  プロトコルを体系化する方法は、いろいろ、あり得ますが、実際に使われているのは、階層化 する方法です。この、階層化のお話は、たとえ話しを利用します。すなわち、通信を、小包 にたとえます(図 8.2-71)。通信が、パケット化されていれば、パケットは、もともと、小包の意味すから、ドンピシャリの、たとえ話しです。

[図 8.2-71] 通信を小包みにたとえる

通信を小包みにたとえる

◆  小包を送るとき、中身を、むき出しで送ることは、ありません。包装 して送ります。通信においても、データだけを送ることは、できません。小包の包装に対応するのが、プロトコルです。小包を受け取ったら、中身を取り出して、包装は、捨ててしまいます。通信でも、プロトコルは、送るときに必要なものであり、受け取った後は、不要です。
◆  プロトコルの階層化は、小包における、多重包装 に、たとえることが、できます。
簡単な例として、パソコン間で、データを、HDLCによって、モデムを介して、電話回線で送ることを考えます(図 8.2-72)。ごく簡単な例ですが、3 重包装になっています。

[図 8.2-72] 電話回線を介して、データを送る

電話回線を介して、データを送る
電話回線を介して、データを送る

◆  この例に示すように、多重包装(階層プロトコル)になっている場合においては、実際のデータの流れは、送信側で、データが、次々と多重に包装されて行きます。最も下位(包装の外側)の階層 は、ハードウェアです。最下位の階層で、送信側から、データが送られて、受信側に到着します。以降、今度は、順次、包装が解かれて行きます。
◆  実際のデータの流れは、上記の通り(図の青線)ですが、論理的な、データのやり取りは、互いに等しい階層間での、やりとりです(図の桃線)。たとえば、データは、論理的には、データ間のやり取りであり、HDLC のやり取りは、論理的には、HDLC 相互間でのやり取りです。

8.2.(3-D-c) 包み込み形プロトコル

◆  ハードウェアないしは、ハードウェアに近い、下位の階層 (図8.2-72 に示されている範囲)のプロトコルは、必然的に、階層化されています。システムを構築するユーザが、意識して階層化する必要は、ありません。しかし、上位の、ソフトウェアレベルの階層は、意識して階層化を計らなければ、うまく階層化することは、できません。
◆  うまく階層化されたプロトコルは、便利な性質を持っています。どのように、便利なのかは、以降のお話で、次第に、明らかになって、いきます。
◆  階層化されたプロトコルは、包み込み形プロトコル構造を持っています。包み込み形 プロトコルとは、図 8.2-72 に示した、多重包装形のプロトコルのことです(図 8.2-73)。この、包み込むという作業のことを、カプセル化 といいます。包み込み形の名は、まだカプセル化の言葉が無かった時代に、筆者が、名付けた名称です。

[図 8.2-73] 包み込み形プロトコル

包み込み形プロトコル

8.2.(3-D-d) インターネット

◆  インターネット は、巨大なシステムです。インターネット自体に付いては、コラム 8.2.10 を参照してください。ここは、インターネットのプロトコルの解説です。インターネットのプロトコルは、階層化されています。インターネットのプロトコルを、TCP/IP といいます(図 8.2-74)。TCP/IP とは、図に示した、2 つの階層のプロトコル、TCP (トランスポート層 )と、IP (インターネット層 )とのことですが、通常は、この 2 つの階層だけでなく、ネットワークインターフェ−ス層 から、アプリケーション層 までの、全体に対する名称として、使われています。図の 『 OSI 参照モデル 』は、コラム 8.2-10 を参照して下さい。

[図 8.2-74] TCP/IP

TCP/IP

◆  ネットワークインターフェース層のプロトコルは、ハードウェアとソフトウェアレベルとに、またがります。インターネット層以上のプロトコルは、ソフトウェアです。ネットワークインターフェース層を、ソフトウェアレベルと呼んだのは、この層のプロトコルが、ソフトウェアで実装されている場合もありますが、ハードウェア化されている場合も、多いからです。


[コラム 8.2-10] インターネットのしくみ

★ インターネットは、地球規模の、最大のインターネットワークです。いま、この講座の読者の皆さんが、この講座を見ているのも、大部分の人は、インターネットを介して、見ているはずです。

世界地図

★ ここで、インターネットワークとは、複数のネットワークの集合を意味する、一般名詞です。インターネットは、特定のインターネットワークに対する、固有名詞です。
★ (インターネットワークを含む)ネットワークは、多くの場合、クライアント/サーバ 形と呼ばれる構成になっています。クライアント/サーバ形とは、情報を提供する側のサーバ と、情報を利用する側のクライアント (クライエント )と からなるシステムのことです。

クライアント/サーバ形

★ クライアント/サーバに対して、ピア ツ ピア (ピア トゥ ピア P2P )と呼ばれるシステムも、あります。ピア ツ ピアは、サーバとクライアントとの区別がなく、互いに対等なシステムです。すなわち、A と B とのやり取りにおいて、あるときは、A がクライアント、B がサーバとなり、別のときは、B がクライアント、A がサーバとなるシステムです。

ピアツピア

★ P2P は、一時、騒がれたシステムです。しかし、P2P 自体は、何ら問題の無いシステムです。ローカルでは、当たり前のシステムです。ただ、それが、インターネット上で、著作権 に抵触する使い方をされたために、騒がれたわけです。
★ インターネットでは、インターネット上に公開された、多くのサーバがあり、不特定多数の人が、クライアントとして、これを利用しています。そして、これらのサーバもまた、多くの不特定多数の人が、提供しています。
すなわち、インターネットは、情報に関する、公共の広場です。

日比谷公園       代々木公園

★ 公共の広場ですから、善意の人たちだけでなく、スリやヒッタクリなどの、悪人も、います。
インターネットは、悪人に対しては、無防備なシステムです。インターネット上には、コンピュータウィルス などの悪者が、うようよ しています。
★ インターネットは、大学関係者、身内の、善意の人たちだけのネットワーク(アーパネット)として、スタートしました。広く一般に利用されることは、想定していなかったわけです。それが、そのまま、広まってしまったので、無防備な まま なのです。
ウィルス対策ソフトウェア を利用するなどの、セキュリティ 対策(安全対策)が、必須です。セキュリティに関しては、インターネットを利用するユーザが、自分で、気を付けるより、しかたがありません。
★ インターネット上の主なサーバの種類は、下記の通りです。このうち、ウェブサーバと、電子メールサーバが、最も広く使われているサーバです。ドメイン名サーバは、インターネットを利用するとき、たいてい、使用しますが、縁の下の力持ちです。通常、ユーザーは、意識する必要は、ありません。

インターネット上の主なサーバの種類

★ ウェブサーバ は、ウェブ (ホームページ )のサーバです。今、読者が見ているのは、宮崎技術研究所のウェブ(WEB : ホームページ)です。ホームページの名は、元々は、ウェブの最初のページ、のことです。それが、ウェブ全体を指すように、なったのです。現在では、ホームページは、ほとんど、ウェブ全体の意味で、使われています。
★ ウェブサイトという言葉が、あります。ウェブサイトは、略して単に、サイト とも呼ばれています。ウェブサイトとは、ひとまとまりに公開されているウェブのページ群、または、そのウェブページ群が置いてある、インターネット上での場所のことを、言います。
★ ウェブ(ホームページ)は、とくに特定の人だけしか、閲覧できないようにした、特別なウェブ、を除いては、全てのウェブが、世界中に公開されます。
読者の皆さんの中には、既にウェブ(ホームページ)を開設している人や、これから開設しようという人も居ると思います。ウェブを開設する場合には、世界中に公開されることに留意して、内容を吟味してください。
★ ユーザが、サーバに、データを送り込むことを、アップロード 、ユーザが、サーバからデータを取り出すことを、ダウンロード と呼んでいます。
★ 電子メール (メール : 本来は、メールは、郵便、郵便物のことですが、日本では、通常メールは、電子メールの意味で使用されています)のしくみは、ウェブよりも、複雑ですが、単純化して示すと、メールサーバ (電子メールサーバ )が、メールの中継ぎをします。実際には、通常は、多くのメールサーバを経由します。

メール送受信のしくみ

★ ところで、私達が、インターネットを利用するためには、プロバイダISP (インターネットサービスプロバイダ )、IAPs (インターネットアクセスプロバイダ )〕と契約する必要があります。ただし、有料とは限らず、無料のプロバイダも、あります。
★ インターネットは、地球規模の、インターネットワークですが、実際には、プロバイダによるネットワークです。

プロバイダによるネットワーク

★ プロバイダには、大手も中小もあります。大手のプロバイダは、相互接続点 (IX )と呼ばれるものを介して、互いに接続されています。中小のプロバイダは、大手のプロバイダに接続されており、さらに孫、ひ孫のプロバイダもあります。
★ IX の具体例を、示します。

IX の具体例

★ インターネットに対する言葉に、イントラネット/エクストラネット が、あります。イントラネット とは、TCI/IP などの、インターネットの標準の技術を使用して構築した、企業内や組織内のネットワークです。下図は、学校におけるイントラネットの例です。

学校におけるイントラネットの例

★ エクストラネット は、複数のイントラネットを、インターネットを介して、結合したシステムです。エクストラネットは、インターネットを利用していますが、企業または組織内のシステムです。外部からのアクセスを排除する必要があります。外部からアクセスできないようにした、ネットワークのことを、VPN (バーチャルプラーベートネットワーク )といいます。

エクストラネット




[コラム 8.2-11] OSI 参照モデル

★ この講座のコラムでは、枕(落語などの冒頭の小話)を入れています。読者の皆さんに、親しんで読んで頂くためです。ところが、OSI 参照モデル には、適当な枕が見つかりません。それで、枕を枕にして、しまいました。

落語

★ TCP/IP は、体系化されたプロトコルであり、現在使われている、プロトコルです。TCP/IP が、最初に開発されてから、現在までに、改良され、TCP/IP は、使いやすいものになっています。しかし、改良の手が多く加えられてきた ために、体系として見ると、必ずしも、きれいに整ったものには、なっていません。
★ また、TCP/IP は、プロトコル全般をカバーしたものではなく、インターネットを対象とした範囲に、とどまっています。インターネットだけでなく、プロトコル全体を、体系化しようということが、考えられます。
★ このような、目的で作られた、プロトコル体系を、OSI (OSI 参照モデル ) といいます。OSI を作った当時は、TCP/IP が、まだ普及していなかったので、OSI を作って、それを、普及させようとしたのです。
★ OSI が計画された、背景には、異機種間のデータのやり取りをしたいという、要求もあります。本文で述べたように、プロトコルが等しくないと、互いにデータのやり取りをすることが、できません(図 8.2-70)。
★ ところが、当時は、コンピュータ相互間のやり取りのプロトコルは、標準化さておらず、コンピュータの機種ごとに、そのプロトコルが、違っていました。
★ コンピュータネットワークを構築する場合、同一機種だけでシステムを組むよりも、異機種のコンピュータを組み合わせた方が、より優れたシステムを構築することが、できます。
たとえば、コンピュータのハードウェアを、階層化した、システムでは、階層に応じて、コンピュータの機種を、使い分けます。
★ 下図は、階層化されたコンピュータシステムです。PLC や、DCS は、制御装置ですが、これらの制御装置も、制御用に特化した、コンピュータです。これらを含めれば、4 つの階層に、階層化されています。

_ コンピュータの階層

★ しかし、従来は、異機種コンピュータ では、そのコンピュータのプロトコルが、機種毎に異なるために、互いの接続が困難で、自由に、コンピュータネットワークを組むことが、できませんでした。
★ このような問題を、解決するために、OSI が計画されたのです。
ところが、OSI を作っている間に、インターネット、そして TCP/IP が、どんどん普及してしまいました。
★ プロトコルは、それが、一度、普及してしまうと、別の、より優れた、プロトコルが出現しても、容易には置き換わらないという、性質があります(これは、プロトコルに限らない、一般的な性質かも知れませんが)。
以上の、いきさつから、現在でも、インターネット、およびインターネットに関連したものには、TCP/IP が使われています。
★ しかし、OSI 参照モデルは、きれいに体系化されています。そして、インターネット以外の、現在、多く使用されている、下位のプロトコル(たとえば HDLC)を、多く含んでいます。
★ OSI 参照モデルは、プロトコルの体系ですが、だからといって、システムを、100% OSI 参照モデルで、組まなければならない、ということは、ありません。利用できる部分を利用すれば、良いのです。
★ OSI は、階層化されています。うまく、階層化されたプロトコルは、ある階層だけ、別のプロトコルに、取りかえることが、できます(これについては、後に説明します)。
★ さて、OSI 参照モデルを、下記に示します。図で、ゲートウェイというのが、ありますが、ゲートウェイは、中継器のことです。
OSI 参照モデルと、TCP/IP との対比は、本文の 図 8.2-74 にあります。
下図で、草色の線は、実際のデータの流れ、水色の線は、論理的なデータのやり取りを、示します。

_ OSI 参照モデル

★ 図に示すように、OSI 参照モデルは、上位から順に、アプリケーション層 (応用層 )、プレゼンテーション層 セッション層 トランスポート層 ネットワーク層 データリンク層 フィジカル層 (物理層 )の、7 つの階層に、分かれています。
★ 複雑な、システムでは、ゲートウェイは、多数あり、それを、次々と経由します。下図で、G は、ゲートウェイ、H は、ネットワークに接続されているコンピュータです。コンピュータ H は、図では、少ししか書かれていませんが、多くの場合、1 つのネットワークに、多数接続されています。

複雑なシステム

★ 一つ上の図で、合い隣る 2 点間 というのは、1 つのネットワークの中で、直接やり取りができる、相互の、2 点間のことです。したがって、同一のネットワーク内に、あります。
最終 2 点間 は、ユーザとユーザとの間です。
★ OSI 参照モデルは、階層構造ですから、包み込み形です。包み込み形プロトコルにおいて、包装するという作業は、具体的には、ヘッダを付加することを意味します。

ヘッダを付加する


★ したがって、多重包装とは、下図に示すように、ヘッダを、次々に、付け足して行くことに、該当します。

OSI 参照モデル

★ OSI 参照モデルの具体的な説明は、この後になりますが、その代わりに、OSI 参照モデルの、各階層の役割を、たとえ話しで、下記に示します。このたとえ話しは、子供を、パン屋に、お使いに出したことに、たとえています。したがって、通信手段は、紙に書いたものを、子供が手に持って歩く、ことです。
たとえ話しですから、多少、実際と異なるところがありますが、大体のことは、この、たとえ話しが、分かりやすいと思います。

たとえ話し


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