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インターフェースには、いろいろなものがあります。これらのネットワークは、各々が独立したものではなく、互いに交信し、複雑なネットワーク体系を作っています。
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これを分類的に眺めて見ましょう。まず、アナログ 回線と、ディジタル回線に分けることが、できます。しかし、複雑な、ネットワークでは、アナログの部分と、ディジタルの部分とが、混在しています。システムを、データ、表現、伝送とに分けて、整理してみたものが、図 8.2-22です。モデムを使用しているときは、図の DA 変換を変調、AD 変換を復調と読み替えます。
[図 8.2-22] アナログ/ディジタルによる分類と相互変換
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たとえば、アナログのデータを、ディジタルで伝送して、伝送先でディジタル表示する場合を、考えます。
この場合、アナログデータ(図の(2))から出発し、(4)で AD 変換し、ディジタルに変換されたデータが、(7)です。この(7)を(6)で伝送し、(7)を経て、(8)でディジタル表示します。
この図は、操作のシーケンスを表していますが、それを、どこで実行しているかは、示していません。
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ネットワークは、その広がりによって、ブロード (WAN )とローカル (LAN)とに、分類されます(図 8.2-23)。ブロードの代表例が、公衆電話網(私達が日常使用している最も普通の電話)、ローカルの代表例が、LAN です。
◆ ビルや事業所内部のネットワークは、距離が 10 Km でも、ローカルです。これに対して、公道を跨っていれば、たとえ、5 m であったとしても、ブロードです(図 8.2-24)。図で、E〜F はローカル、A〜B、C〜D はブロードです。
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複雑なネットワークは、単一のネットワークではなく、複数のネットワークが複合したものです。複数のネットワークからなるシステムを、インターネットワーク といいます。ただし、通常は、インターネットワークと、単一のネットワークとを区別しないで、単にネットワークと呼んでいます。この講座でも、とくに区別する必要が無い場合には、両者を区別しないで、ネットワークと呼ぶことにします。
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図 8.2-25のインターネットワークは、図 8.1-2に示した、トリー形の変形ですが、このトポロジを、幹線/支線形 と呼ぶことにします。
◆ インターネットワークでは、ゲートウェイ形と呼ばれるものも、多く使用されています(図 8.2-26)。ゲートウェイ 形は、ネットワークが、ゲートウェイと呼ばれる、中機器を介して、繋がっています。図の G が、ゲートウェイです。
[図 8.2-26] インターネットワーク(ゲートウェイ形)
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実際のシステムは、インターネットワークが、さらに複雑に絡み合った、システムです。当然、上記の、幹線/支線形と、ゲートウェイ形とが、組み合わさった形のものも、あります。
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また、ユーザは、多くの場合、複数のインターネットワークに属し、それぞれのインターネットワークを、目的用途によって、使い分けます(図 8.2-27)。
[図 8.2-27] ユーザは複数のネットワークを使い分ける
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私達に最も身近な、ネットワークが、電話回線 の公衆電話網です。ここで、公衆電話網 (公衆電話交換網 )とは、街角にある赤電話などの、公衆電話 のことではなく、私達が、最も普通に使っている電話網 (固定電話 )のことです。最近では、この電話網のほかに、携帯電話や、IP 電話などのシステムがあります。
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これに対して特定の相手と のみ 通話ができる、専用線 もあります。専用線であっても、多数間の通話を行うシステムもあります。この場合には、その専用線専用の交換機が必要です。
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ここでは、まず、普通の固定電話のお話から、始めます。
電話網は、交換機能を持っており、各電話機は、交換機 に接続されています。そして、交換機を介して、任意の相手と接続して、通話を行うことが、できます(図 8.2-28)。
◆ この交換機能は、原理的には、スイッチによって、相手と接続します。このような、交換のやり方を、回線交換 方式といいます(図 8.2-29)。回線交換方式の、基本的なトポロジは、スターで、このスターが絡み合って、複雑なトリーを作っています。ただし、後に述べるように、現在では、メカニカルなスイッチは、使用していません。
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ネットワークのお話に先立って、電話機 自体の、お話です。以前は、電話機は、お仕着せの、単機能ものが貸与され、自由に好みのものを使用することはできませんでした。
最近は、電子化され、多機能化されています。好みの機能、デザインのものを、選ぶことができます。また、親子式のコードレスホン (コードレス電話 )が多くなっています(8.2-30)。
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しかし、コードレスホンを含み、電子化された電話機では、商用電源を必要とします。停電すると、使えません。
普通の電話機は、電話回線によって、交換機から、電話機の電源が供給されています(図 8.2-31)。商用電源が停電しても、電話を掛けることが、できます。電話は、重要なインフラですから、高い信頼性を、持たせてあるのです。
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電子化された電話機も、停電時に使用できないことは、問題です。電子化された電話機も、停電時には、普通の電話機として、交換機からの給電で、使用できるように、なっています。
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ここでは、従来の、普通の電話機について、説明します。電話機の回路を、図 8.2-32に示します。図の回路は、従来の、回転ダイヤル 式電話機(通称黒電話 )(図 8.2-33)のものです。回転ダイヤルは、現在では、ほとんど使われていませんが、電話が使われ始めた、当初の、人手による手動交換が、自動交換に代わって以来、ずっと、使われてきました。
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図 8.2-32 で、(B)はベル、(T)は送話器、(R)は受話器です。HS1 と HS2 は、フックスイッチ (受話器を置くと動作するスイッチ)です。
図は、受話器を置いた状態を示しています。交換機からは、48V の電源が供給されていますが、フックスイッチがオフなので、交換機からの電流は、流れません。ここで、受話器を取り上げると、フックスイッチがオンとなり、電話機に電流が流れます。交換機側は、この電流を検出して、受話器が上がったことを知ります。
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ダイヤル を回すと、スイッチ Ds が閉じ、スイッチ Di が、ダイヤルに書かれた数字の回数だけ、オンオフして、ダイヤルパルス を発生します(図 8.2-34)。
逆に受信のときは、交換機からの、16 Hz の交流が流れ、ベル(B)を鳴らします。
◆ 最近の電話機は、ほとんどプッシュ式 です(図 8.2-35)。このプッシュ式というのは、電話機だけがプッシュ式のものと、局側の交換機を含めてのプッシュ式のものとが、あります(図 8.2-36)。
◆ プッシュ式には、ダイヤルは、ありませんが、ダイヤルの言葉は、今も、残っています。プッシュ式(ダイヤルトーン方式 )では、押しボタンダイヤル信号 として、音の周波数(通称ピポパ)を、使用しています。(図 8.2-37)。和音ですから、耳への響きも良くなっています。この信号は、電話の周波数帯域内の信号ですから、ユーザー側の、ディジタル信号としても、利用可能です。
◆ プッシュ式電話機の回路例を、図 8.2-38 に示します。
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電話は、単体では機能しません。少なくとも、2 台で、相互通話を行います。2 台で、相互通話だけができるものが、直通電話 です。しかし、電話が真に機能するためには、交換機によって、交換網 を構成し、ダイヤルによって、任意の相手と、通話できるように、なっていることが、必要です。
この交換網は、小さなビルや事業所内の、数台の電話機で構成するシステムから、各国を結ぶ国際網まで、各種あります。特定のシステム内だけを繋ぐ、閉じたシステム(たとえば、各鉄道会社が、自社の駅間などで通話を行う電話網)もあります。それらを除けば、電話網は、階層的なシステムを構成しています。NTT の例を、図 8.2-39 に示します。遠隔の地との通話ほど、上位の階層 を経由します。2 点間を結ぶ経路は、上位の階層では、複数存在します。通常は最短経路を経由しますが、混雑しているときは、迂回路を経由します。
◆ 上位の階層では、回線は、多重化 (時分割多重化)されています(図 8.2-40)。また、多重化の程度を高くすることが可能な、光ファイバなどが、使用されています。
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交換網における、交換のやり方には、2 つあります。回線交換とパケット交換です。パケット交換は、元々は、ディジタルデータの交換用に開発された方式です。パケット交換 では、データを、パケット と呼ばれるフレームに分割し、パケット単位で、伝送します(図 8.2-41)。
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なお、パケット交換に限らず、このようなフレームを、パケットといいます。パケットには、データの他に、ヘッダと呼ばれる部分があります。ヘッダ には、制御情報が入っています。ヘッダには、行き先アドレスが入っていますから、パケットを宛先に、送ることができます。
図は、回線交換と対比させて、示してあります。
◆ 回線交換とパケット交換を比較すると、図 8.2-42 のようになります。
交換回線 | 特 徴 | 通信速度 |
回線交換 | 回線に接続すると、切断するまで回線を占有する 回線利用効率が低い リアルタタイムである |
両側で同一 |
パケット交換 | 回線を占有しないで、パケット毎に回線に送り出す 回線利用効率を高くできる リアルタイム性が無い |
両側で異なる |
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図で、リアルタイム は、実時間 と訳し、要求される即時性を満たすとき、これを、リアルタイム性がある、といいます。たとえば、電話は、リアルタイムであることが、要求されます。時間が ばらつけば、音の周波数が変化してしまいます。これに対して、ディジタルのデータは、一般には、リアルタイムの要求は、厳しく無いものが多いのです。
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最近 IP 電話 が、利用され始めています(図 8.2-43)。IP 電話は、図に示すように、インターネットを利用することができます。
◆ ただし、インターネットは、伝送品質の保証がありませんから、信頼性に欠けます。信頼性の高いことが要求される場合には、インターネットでは、不充分であり、IP 電話用のネットワークが、必要です。
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IP 電話では、音声をディジタル化し、そのディジタルデータを、パケット方式で、伝送しています。リアルタイム性が厳しい音声に、パケット方式が、使われています。これは、IP 電話の伝送速度が、音声に対して、十分に速いからです。要求に対して、実際が十分に速ければ、伝送速度の保証が無くても、リアルタイム性は、ほぼ満足されます。
インターネットの、ブロードバンド化が、IP 電話の普及に寄与しています。
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伝送速度が十分に速ければ、パケットを送る、時間的ばらつきを押さえて、音声の歪みを、無くすことができます。また、バッファ (バッファメモリ )を使用することによって、入力の速度がばらついても、出力の速度を一定にすることができます(図 8.2-44)。図のバッファは、FIFO と呼ばれる機種で、FOFO に格納した順に、データを取り出します。