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汎用オペアンプ は、安価で使いやすく、広く使われている機種です(図 6.1-50)。汎用オペアンプの具体的な機種は、時代と共に、移り変わってきました。
これは、主に、オペアンプを構成するトランジスタの機種の変化によるものです。初期の製品では、741 (データシートは、ここをクリック)などのバイポーラトランジスタが使われていました。最近では、JFET オペアンプ や CMOS オペアンプが多くなっています。通常は、汎用オペアンプは、図 6.1-50 に示すような機種をいい、CMOS オペアンプは、汎用オペアンプとは、別の分類に、なっています。
◆ JFET オペアンプ LF356 の概要を、図 6.1-51 に示します(データシートは、ここをクリック)。
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CMOS オペアンプ は、低消費電力が特徴です。CMOS オペアンプには、単電源方式や、レールツレールなどの特徴を有する機能を持つ機種があります。ただし、これらの機能を、すべての CMOS オペアンプが持っているのでは、ありません。単電源やレールツレールの機能は、携帯機器などの、バッテリ駆動の機器に利用されています。
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CMOS オペアンプ LMC6044 のデータシートを示します(ここをクリック)。CMOS オペアンプが開発される以前には、低消費電力用としては、LM324 や、LM324 よりも、さらに低消費電力の LP324 が使われていました(LM324/LP324 は、バイポーラトランジスタを使用した、低消費電力オペアンプとして、現在も使われています)。
◆ その他、オペアンプの機種には、低オフセットオペアンプ /低ドリフトオペアンプ (図 6.1-52)が、あります。高精度オペアンプ とも呼ばれ、低レベルの信号を、高精度で測定する場合などに、使用されます。汎用オペアンプと比べ、オフセット電圧と、温度ドリフトが、大幅に改善されています。
[図 6.1-52] 低オフセット/低ドリフトオペアンプの例
◆ 低入力バイアス電流オペアンプ を、図 6.1-53 に示します。
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一般に、バイアス電流は、バイポーラトランジスタ形よりも JFET の方が小さいのですが、JFET のバイアス電流は、高温で大きくなります(図 6.1-54)。
また、バイアス電流が小さいだけでなく、同時に、入力インピーダンスが高いことが必要な場合が多いので、低入力バイアス電流オペアンプは、入力インピーダンスも大きくなっています(図 6.1.39 参照)。
◆ 微小信号を扱うときには、信号に対して、相対的に、ノイズが低い、低ノイズオペアンプ を使用して、S/N を押さえることが必要です。低ノイズオペアンプの例を、図 6.1-55 に示します。
◆ ここで、オペアンプのノイズについて、簡単に、説明しておきます。オペアンプは、複雑な回路ですから、ノイズは、素子内部の各所で発生します。しかし、解析を簡単にするために、オペアンプの総合ノイズ は、すべてのノイズが、入力側で発生するものとして、等価換算して表わします(図 6.1-56)。
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図で en はオペアンプの入力換算電圧ノイズ、i n はオペアンプの入力換算電流ノイズです。また、es は信号源ノイズ、Rs は信号源インピーダンスです。このときの、電圧換算の等価入力側ノイズ eN は、信号源ノイズも含めて、
となります。
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オペアンプの入力換算電流ノイズ i nは、オペアンプから流れ出すノイズです。したがって、入力換算電流ノイズ i n が、負荷インピーダンス Rs を流れることによって、電圧ノイズになります。信号源インピーダンスが抵抗であれば、この電圧ノイズは、i n ・ Rs です。
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オペアンプ出力側のノイズは、このオペアンプ入力換算ノイズ eN に増幅器の増幅率 G を掛けた、eN ・ G となります。
◆ 広帯域の交流信号や、高速のパルス信号を、増幅する場合には、高速広帯域オペアンプ を使用します(図 6.1-57)。また、大振幅の交流信号を、歪なく増幅するためには、高スルーレートオペアンプ が必要です。
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DA コンバータや、マルチプレクサ(アナログの多点切り替えスイッチ)の出力は、高速に変化します。これに追随するためにも、高スルーレートオペアンプが必要です。また、これらの用途では、セトリングタイムが問題になります。
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高速広帯域オペアンプでは、発振が問題になります。汎用オペアンプは、一般の増幅器として使用したとき、発振を起こさないように、オペアンプの周波数特性が作られています(図 6.1-58)。この周波数特性は、周波数帯域を制限することによって作られたものです。高速広帯域オペアンプでは、この制限をはずして、本来の能力一杯に使えるようになっています。したがって、発振の危険性が、あるわけです。
[注] 発振の条件は、コラム 6.1-7 では、+180 °です。コラムでは、正のフィードバック、上記は、負のフィードバックですから、同じことです。
◆ CMOS オペアンプは、低消費電力です。ここでは、CMOS 以外の,低消費電力オペアンプを示します(図 6.1-59)
◆ 一般のオペアンプの出力電流は、10 mA 以下です。したがって、同軸ケーブル、リレー、モータなどを、直接駆動するには、不充分です。対策の第 1 は、高出力電流オペアンプ を使用することです(図 6.1-60)。
◆ 対策の第 2 は、オペアンプに、出力バッファアンプ(LH0002など)を設ける方法です(図 6.1-61)。このように、基本的な素子を強化する素子のことを、ブースタ といいます。この例では、電流を増強しますから、電流ブースタ です。
◆ そして、対策の第 3 が、外付けのトランジスタを使う方式です(図 6.1-62)。
◆ 図で、クロスオーバー歪 というのは、正負両電源方式のとき、出力がグラウンドレベル付近で波形歪みが発生する現象です(図 6.1-63)。図の(a)は、図 6.1-62 の(c)の回路、図6.1-63 の(b)は、図 6.1-62 の(d)の回路です。
◆ ここで、電圧ブースタについても、示しておきます(図 6.1-64)。
◆ 以上、各種のオペアンプを眺めてきました。ここで、オペアンプ機種選択の、目安を示します(図 6.1-65)。オペアンプに要求される性能は、各種あります。オペアンプ使用の目的、用途によって機種の選択を行います。オペアンプは、機種による価格差が大きいので、価格を含めた選択が必要です。
◆ なお、オペアンプは、数値では表すことができない、特性があります。このため、機種が同じ、したがって、特性値が等しいものであっても、メーカーによる差がある場合があります。とくに、感覚的に評価される、オーディオ用のオペアンプでは、この問題を無視できないようです。