ノイズ対策技術

QAROOM

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[投稿No]  41

[関連投稿No] [関連章節No] 5.(2)5.(3) [種別] 質問
[ 名 前 ]  池田 [ 題 名 ]  ノイズの質
[ 質 問 ]
前回にすこし的を外したような質問をしてしまいましたので改めまして 質問させていただきます。
先ず当ノイズ対策につきましては、大変興味深くまた非常に分かりやす い解説で感激しています。今まで知りえなかったことが数多く出てきま すし、学生の頃に勉強したことが思い出されてきます。
それで、質問ですが、私は3.5Mhzのハムバンドを楽しんでいます が大阪市の近くで都市ノイズが多くて困り果てています。そんなときに 磁界型スモールループ(アンテナの一種)を知りまして、作って(使って)みたのですが案外効果があり、実用に供しています。
今(使っている)のはアンテナ本体は裸の電線を1.5m径 に巻いて作っていますが、更にそれをシールド(一部2cm位の隙間を 作ります)すると、近場のノイズが遮蔽できると、無線関係の書物で知 りましたが、実際にはあまり効果がないのですが、これは静電遮蔽にな るのでしょうか。
また本来このアンテナは磁界成分を主に受信できるという原理を応用し ていますが、近場に存在するノイズは電界成分が多いということなので しょうか。その辺りについてお尋ねします。
[ 回 答 ]
(1) 磁界型スモールループは、ループアンテナの一種と思われます。ループアンテナは、送信時は、ループに流れる電流によって、磁界を放射します。その状況は 5.(2)図.7 のようになります。受信時には到着した電波(電磁波)の磁界成分を受け、それによってループに電流を発生します。
(2) しかし、これはループアンテナの主作用です。ループアンテナも、ロッドアンテナの作用も持っています(世の中に完全(100%)なものはありません)。ロッドアンテナは、到着した電波(電磁波)の電界成分を受け、それによってアンテナに電圧を発生します。
(3) シールドには、その作用から、静電シールド、磁気シールド、電磁シールドの3種があります。
ご質問のシールドが、どのようなものか、はっきりしませんが、結果として、静電シールド(静電遮蔽)の効果を期待しているものと考えられます。すなわち、ループアンテナとしての効果を活かし、ロッドアンテナとして働くことを抑制することです。
ただし、静電シールドは、グラウンドされていることが必要です(この場合のグラウンドは接地であることが必要です)。
(4) 質問の中で「近場」という言葉が使用されていますが、これは、普通の言葉として付近という意味と解します。用語としてのニアフィールドのこととすると、文意が不明になります。
付近に存在するノイズに電界成分が多いということは、そのノイズの発生源がごく近くにあって、そのノイズ発生源のニアフィールド領域に、貴方のループアンテナが存在することを意味します。
(5) 多分そのような状況では無いと思われます。したがって、そのノイズは、貴方のループアンテナの場所では、ファーフィールド領域であり、電磁波(電界と磁界とがバランスしてる)と考えられます。しかし、ロッドアンテナは、電界に感じるアンテナですから、電磁波中の電界成分を捕捉します。
(6) 貴方の場所が、都市ノイズが多いので、相対的にハムバンドのパワーが低く、ノイズの電磁波が強いということです。したがって、主作用としてのループアンテナで受けるハムバンドの磁界よりも、副作用のロッドアンテナとして受けるノイズ電磁波の、電界の影響の方が強いということです。
(7) 主作用としてのループアンテナでも、ノイズ電磁波も受けている筈です。しかし、ループアンテナをハムバンドに同調してあれば、共振現象によって、ハムバンドを選択的に受けますから、ノイズ電磁波の影響は相対的に弱くなります。


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[投稿No]  42

[関連投稿No] [関連章節No] 5.(2)8.(5) [種別] 質問
[ 名 前 ]  安藤光芳 [ 題 名 ]  電気機器から漏洩する電磁波の測定
[ 質 問 ]
このサイトは非常に分かりやすく、たびたび参考にさせていただ いています。
初歩的な質問で申し訳ないのですが、パソコンなどの電気機器か ら漏洩する電磁波の測定について、質問をさせていただきます。
(1)ロッドアンテナで電磁波を測定する場合、感知された信号の発 生源は、アンテナを中心とした同心円上にあるのでしょうか、そ れともアンテナの延長線上にあるのでしょうか。同心円上にある 場合、発生源はアンテナの先端にあるのでしょうか、それとも、 中心付近にあるのでしょうか。また、アンテナの向きは、穴の向 きと一致していると考えてよいのでしょうか。
(2)講座の中で、「半波長が、穴の長さよりも短い電磁波は、穴を 通過し、それよりも波長が長い電磁波は穴を通ることができませ ん」とありますが、例外はないのでしょうか。具体的には、パソ コン本体から100MHz付近の電磁波が漏洩していると思われるので すが、100MHzの場合半波長は1.5mとなり、このような大きな穴は どこにも見当たりません。これは、穴が開いていること以外が原 因だということなのでしょうか。
初歩的な質問で申し訳ないのですが、よろしくお願い致します。
[ 回 答 ]
(1) 質問に回答する以前の問題として、あなたが、自分で自分のパソコンの放射ノイズを測定しようとしているのであれば、そのこと自体が困難です。放射ノイズの測定は、22.(2-B) に示されているような、大げさな測定装置を必要とします。これらの測定装置で使用しているアンテナは、ロッドアンテナではありません。また、周囲に存在するノイズ電磁波を防ぐために電波暗室等を使用する必要があります。
(2) 簡易な方法ノイズサーチプローブ があります。値を知ることはできませんが、相対的に、どこから多く放射されているかを知ることができます。これを試してください。
(3) 例外は無いと考えて差し支えありません。
質問の状況から、次に示すことが原因と考えられます。
電磁波が漏れているのは穴ではなく、パソコンから出ている各種配線(電源配線、インターフェースケーブル等)です。ノイズが配線に漏れ出し、さらに配線から放射されます。電源配線の場合は、22.(3)に示されています。インターフェースケーブルも同様です。
(4) 対策は、ケーブルのパソコン出口のところに、ノイズフィルタを設けることです。通常フェライトビーズを使用します。具体的な方法は、たとえばインターネットに公開されたものがあります。この例は、ADSLを対象としてものです。一般向きとしては、やや過剰です。ページの終わりから2番目の写真の上側(電源)が、適切な見本です。


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[投稿No]  43

[関連投稿No] [関連章節No] 14.(2-C) [種別] 質問
[ 名 前 ]  大橋 [ 題 名 ]  ラッチアップについて
[ 質 問 ]
いつも参考にさせて仕事をしています。とてもわかりやすいです。
さて、質問があるのですが、
1) ラッチアップについて
ICの入出力に電源電圧よりも高い電圧がかかるとラッチアップを起こす とありますが、このメカニズムがわかりません。「不要トランジスタ」 とはなんでしょうか?
2) 電源異常時について
デバイス(A,B)にLV244Aを考えているのですが、仮にデバイスAがDRで デバイスBがReceiverとし、電源供給が別になっているとした場合、デ バイスBの電源だけがOFFした場合、デバイスAが"H"を出力すると、電源 電圧よりも超えた電圧がデバイスBに入力することになり、この場合デ バイスBはラッチアップするのでしょうか?
仮にデバイスBの入力にラッチアップ防止用にダイオードがあると、そ こに電流が流れ込んでしまうので、デバイスAが壊れてしまうような気 がするのですが、どうでしょうか?
3) その他
ノイズとは関係ないのですが、9枚のボードにバス信号を一筆で接続す る仕様にしようとしています。(20Mbps)
レジスタからのREADのデータをバスラインに出力する場合、READ信号を 負論理で出力するとし、あるボードの電源だけがOFFした場合に、その ボードからの出力が0Vになると思うのですが、これは常に"1"がREADさ れてしまい、不良箇所のボードを特定することができません。そのた め、READ信号は正論理にするのがいいのではないかと思います。
その場 合にプルダウン抵抗を代表ボードにつけると思いますが、あまりプルダ ウン抵抗をバスラインにつけるという話は聞いたことがありません。な ぜ、世の中はバスラインにプルアップ抵抗をつけるのでしょうか? (Wired ORにしたいということならわかるのですが、今回は20Mbpsの速 度ですと、オープンドレインは厳しいと思います) すいませんが、ぜひいいアドバイスをお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
[ 回 答 ]
(A) 正論理と負論理について
(1) この質問は、正論理/負論理に関連しています。正論理/負論理は、ノイズ対策とは直接関係がありませんから、講座では解説していません。この欄を利用して、まず、正論理 /負論理 について解説します。正論理/負論理について、既に知っている読者は、ここを読み飛ばして (B)解答に進んでください。
ディジタル IC は、論理を実行する IC です。論理 (論理演算)は、大きく 2 種類に分かれます。組合わせ論理と、順序論理です。組合せ論理 は、たとえば、AND、OR が代表例です。入力の論理値が決まると、それに対する出力の論理値が決まります。
ここで論理値とは、たとえば 2 進数が"0"と"1"との 2 つの値を持つように、2 つの値を持ちます。論理は、論理値表の形で表現できます。倫理値を"0"と"1"とで表わしたときの AND の論理値表は、

  入力   出力 
  0、0  0
  0、1  0
  1、0  0
  1、1  1

です。この例からも分かるように、論理値は、1 が積極的な性質、0 が消極的な性質を持っています。1 は積極的な意味を持つことからアクティブ 、0 は消極的な性質を持つことから非アクティブ と言います。
順序論理 は、時間的に先に行った論理操作が、後に影響を及ぼします。代表例がフリップフロップです。
(2) ディジタル IC では、論理値の 0 と 1 とを、電圧のハイ/ローに対応させて表わします。電圧のハイ/ローは 2 値ですが、ハイとローとは対等な立場であって、論理のような区別はありません。しかし、電圧のハイ/ローに論理を割り当てることができます。このとき、電圧のハイに論理の 1 を割り当てたときを正論理、電圧のローに論理の 1 を割り当てたときを負論理と呼んでいます。
すなわち、正論理はハイがアクティブですから、これをハイアクティブ と呼びます。負論理は同様に、ローアクティブ と呼びます。

(B) 解答
(1) 講座で、「C-MOOSは、製造上の都合から、ICの内部に、回路動作には関係の無いトランジスタが、作り込まれています。」と述べています。この回路動作に関係の無いトランジスタのことを、回路動作に関係が無いという意味で、不要トランジスタという言葉を用いました。
(2-a) 上記の不要トランジスタ(複数)がある特定の回路を構成している部分があります。この回路は、フリップフロップのような動作をします。この回路は、異常電圧が掛かることによって動作します。動作して電流が流れ始めると、掛かった異常電圧が無くなっても電流が流れ続けるという現象です。しかも、この電流値が大きいために、電流が流れ続けると、素子を破壊する恐れがあるということです。
ご質問の場合、レシーバには電源電圧が掛かっていませんから、電流が流れつづける原因が存在しません。すなわち、ラッチアップは、起こしません。
(2-b) 図.7 (b) のように、ラッチアップ防止用ダイオードのところに、抵抗を設けます。このようにすれば、過電流を防止することができます。
(3-a) 正論理と負論理とは、電圧のハイとローとが逆になっているだけで。電圧のハイとローとを逆にして考えれば、動作的には同じことになります。したがって、単に負論理を正論理に変換するだけであれば、論理的に同じ動作をしますから、ご質問のような、性質の違いは無いはずです((A)参照。
ご質問のように、動作に違いが生じているのであれば、単に負論理を正論理に変換したのではなく、論理を変えた回路にしている筈です。
(3-b) 以上のことから、原理的には、プルアップを使用するシステムの代わりに、プルダウンを使用するシステムを作ることが可能です。このとき特別な回路を構成しているなら別ですが、単にプルアップとプルダウンとを変換しているのであれば、動作に違いは生じません。
(3-C) 現実にプルダウン方式が使用されていない原因は、下記の3つと考えられます。
 (a) 一つは、歴史的に、オープンコレクタの習慣が受け継がれたことにあると思われます。あえて、逆にする理由も無かった訳ですから。
 (b) 現在では、CMOS が主流ですが、それ以前は TTL が主流でした、TTL は、ハイ/ローが非対象で、ロー側の電流駆動能力がハイ側よりも大きくなっています。したがって、プルアップに適しており、プルアップが使用されています。
 (c) CMOS は、その名(conplementary MOS)が示すように、原理的にはハイとローが対等です。しかし、TTL がハイ/ロー非対称であったことから、TTL を使用した回路と互換性を持たせる方が、後発である CMOS の普及を加速します。この理由から、CMOS でも(とくにドライバ IC では)ロー側の電流駆動能力を高くした製品が発売されました。これを使用するなら、プルアップが適しています。
ハイとローとが対等の素子を使用する場合であっても、統一のために、プルアップの使用が望ましいのです。


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[投稿No]  44

[関連投稿No] [関連章節No] 19.(3-B) [種別] 質問
[ 名 前 ]  浦井 [ 題 名 ]  パルストランスのセンタータップの処理について
[ 質 問 ]
1.5MHzのAMI信号の平衡伝送において絶縁のためのトランスの伝送 路側コイルのセンタータップをFGに落とした方が良い場合と落と さない方が良い場合が有ると聞いております。送信側、受信側の どちらか片方のみFGに落とすべきだというのは、送信側、受信側 のFG電位差によってDC電流が流れてトランスを飽和させてしまう ことが有ると言うことで理解しております。しかし片側のみFGに 落とすべきか(通常信号レベルの低い受信側と聞いておりま す)、送信側、受信側のセンタータップを共に開放とすべきか は、どの様な条件を考慮して決めたらよいのでしょうか?線路の 平衡度やクロストークが関係していると言う話は聞いているので すがその原理が分からないため理由もお聞かせ願います。
[ 回 答 ]
(1) まず、ご質問のシステムの接地方式について考えます。FG とありますから、機器側は、フレーム接地していると思われます。以下、フレーム接地していることを前提にします。
  [ケースa] 機器側のシグナルグラウンドが、FG に接続されているならば、同時にシグナル接地も、されていることにもなります。これを [ケースa] と呼ぶことにします。
  [ケースb] 機器側のシグナルグラウンドが、FG から浮かせてあるなら、シグナルグラウンドは、接地されていません。これを [ケースb] と呼ぶことにします。
(2) [ケースa] において、トランスの伝送路側のセンタータップを FG に落とすと、伝送路とシグナルグラウンドとが接続されるので、トランスで絶縁した意味が無くなってしまいます。
[ケースb] においては、トランスの伝送路側のセンタータップを FG に落としても、相互は絶縁されていますから、この意味では問題はありません。
なお、ご質問は、センタータップがあるトランスですが、センタータップが無い機種もあります。この場合は、直接接地すると、平衡性を失います。接地する場合は、抵抗を介して接地します。抵抗値は、終端する場所では終端抵抗の値とし、終端しない場所では、十分に大きな値とします。

抵抗を介して接地する

(3) 上記の、問題が無い場合について、接地すべきかどうかに関しては、ご質問の、「線路の平衡度やクロストークに関係している」かどうかに関しては、よく分かりません。別の問題として、伝送路が高電圧に帯電する恐れがある、ということは聞いています。しかし、実績としては、接地しないで使用していますが、問題が起きたことは、ありません。
(4) 一般論として、グラウンドや接地の問題は、一応の原則はありますが、実際には、原則と反対の方が良いこともあり、ケースバイケースです。
たとえば、シグナルグラウンドが、FG から浮かしてあっても、フレームとシグナルグラウンドとの間には、ストレキャパシタンスがありますから、高周波では、繋がっているとみなされる場合もあります。また接地も、直接導線で接続しないで、抵抗やコンデンサを介する場合もあります。
まず、最初は原則に基づいて施工しますが、それで思わしくない場合には、色々と試みて、その場所、その条件でうまく行けば、それが良いのです。


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[投稿No]  45

[関連投稿No] [関連章節No] 4.(3-A)7. [種別] 質問
[ 名 前 ]  西田 [ 題 名 ]  クロストークの受け方について
[ 質 問 ]
初めて質問させて頂きます。
「10chのセンサー(信号源インピーダンス=10kΩ、周波数=100kHz 程度)からの平衡信号(HOTとCOLD)を、約10mのケーブルを経てトラ ンスで受け、100Ω程度に変換する」という回路を考えてます。
この時、ケーブルとしては、 「10ペアのツイスト線を作って、シールドスリーブの中を10ペア分、 通す」というのを考えています。 これだと、外部からのノイズはシールドスリーブで一括にガードで き、4.(3-A)にあるように、ツイスト線なのでch間のクロストーク も良くすることができる、と思います。
しかし、10ペアなので合計20本の線が必要です。 そこで、もっと線を減らすために、 「10ch分のCOLDを共通線(1本)にして、その線の周り に10ch分のHOTをはわせ、これらの11本をシールドスリーブの中に 通す。(作業自体、難しいですが…!)」とした場合、やはりch間 のクロストークは拠り線の時と比べて、悪化してしまうのでしょう か?
COLDを共通線にしているとはいえ、各HOTからみれば、COLDは最短 の距離にあるので、ノイズ(他のchからの信号)を受けにくいよう な気もしますし…。しかし、拠り線でないので、やはり受けやすい ような気もしますし…。 恐縮ですが、このような場合のクロストークの受け方についての考 え方をお教え願えるでしょうか? よろしくお願いします。
[ 回 答 ]
(1) 質問された方は、多分キーワード検索によって、4.(3-A) を開いたと思われます。クロストークに関しては、別の第7章に記載されています。以下の回答は、第7章をも参照していますが、まず、第7章を通読することをお薦めします。その上で、下記の回答を読んだ方が、理解が早いでしょう。
(2) 並行して走る線間のクロストークを、互いにシールドすることなく防止するためには、単にツイストペア線を使用しただけでは不十分です。講座の 7.(3) 図.11 に示すように、互いのピッチを変えたツイストペア線を使用する必要があります。ピッチが等しいツイストペア線は、クロストークに対しては十分な効果がありません。
(3) しかし、ピッチが等しいツイストペア線であっても、非ツイスト線と比較すれば、やはり、ツイスト線の方が優れています。これは往復の線が密着していることによって、往復の線が作る面積が最小になるからです。平行線は、何らかの物理的手段(たとえばケーブルに加工する)を講じない限り、往きと復りの密着性はありません。往きと復りの線が作る面積は、加害/被害共にマイナスに働きます。
(4) コールドを共通線にすることは、往きと復りの対等性を失いますから、平衡性を無くします。しかし、往きの個別線と復りの共通線とを密着させれば、相互の面積を最小にすることは、できます。したがって、クロストークの面では有利になります。ただし、ご質問の配線方法では、線の密着性が得られるとは考えられません。
複数の線を密着して引くことができるのは、下図から分かるように、最大 7 本までです。

7芯線

しかも、物理的に相互を密着させる手段が無ければ、図の形を保つことができません。この複数の線が一括してツイストしてあれば、このツイストが、密着させる手段になります。
ご質問のケースでは、共通のコールド線を 2 本とし、ホット線を 5 本づつに分けて、2 組にすれば良いでしょう。
(5)  以上、配線方法による、クロストークの相対的な大きさについて、考察してきました。クロストークの絶対値についても、考える必要があります。ノイズ電圧(クロストーク)は、信号の受け側のインピーダンスが大きいほど大きくなります(1.(3-E-b))。その具体例は、7.(2-A) に示されています。
ノイズ対策の基本は、ノイズを受け易いところをできるだけ短くし、ノイズを受け難いところで延ばすことにあります。この意味で、伝送路は、インピーダンスを低くすることが望ましいのです。ご質問の構成では、高インピーダンスのところ(信号源インピーダンス 10kΩのところ)を延ばしています。
(6) ご質問では、クロストークにのみ、関心があるようです。しかしノイズ対策は、クロストークだけではありません。その他のノイズ問題と総合的に考えることが必要です。


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