◆
測長計 は、長さ を測ります。厚さ計も、広義には長さを計りますが、厚さ計の測定対象は、シート状の ものです。
測長計は、物差し (図 9.2-248 の上側)、メジャーや、スケールの名で、広く使われています。メジャー とスケール は、本来は、長さだけでなく、たとえば、メジャーカップ (図の右下)は、容積を計ります。しかし、日本では、メジャーの言葉は、測長器、とくに、巻尺 (図の左下)の意味で。多く使用されています。
◆
図の物差しは、竹製です。竹 は、強さ・弾力性・寸法安定性に優れており、物差しの材質として、優れています。しかし、最近では、金属製、安価なものは、プラスチック製が多くなっています。
古くから使われてきたものに、曲尺 (カネジャク 、サシガネ )があります(図 9.2-249)。
◆ やや精度が高いものに、ノギス があります(読み取り 0.05 mm)(図 9.2-250)。図の右側は、ディジタル指示計付きのものです(読み取り 0.01 mm)。
◆ ノギスよりも、高精度のものに、ダイヤルゲージ (読み 0.01 mm)(図 9.2-251 の左側)、さらに高精度のものに、マイクロメータ (読み 0.01 または 0.001 mm)が、あります(図の右側の 2 つ)。
◆ 比較測長器 を、図 9.2-252 に示します。比較測長器では、まず、被測定物と、類似の長さの既知の長さのものの長さを、比較測長器で計ります。そして、その長さを基準として、被測定物の長さを、計ります。
◆ 広く使われているのは、レーザー光を利用した、レーザー測長計 (レーザー距離計 )です(図 9.2-253)。レーザー光が、対象物との間を往復する時間によって、距離を測ります。レーザー距離計は、地表から、人工衛星までの、距離の測定にも、使われています。
◆ レーザー墨出し器 もあります(図 9.2-254)。
◆ 元々の墨出し は、墨壷 を使います(図 9.2-255)。図の左上は 昔からの墨壷、左下は 最近のプラスチック製墨壷です。プラスチックには、なりましたが、いまでも、墨壷は、健在です。
◆
歪み計 は、歪みの大きさを測ります。物の歪み(ヒズミ、ユガミ) は、その対象によって、いろいろあり得ますが、ここで、歪み は、応力などによる、物理的変形のことを、いいます。応力 (ストレス )とは、物体に作用する力のことです。
◆
このストレスは、私たちが、日常使っている、ストレスが溜まる という ストレスの言葉とは、別のものです。日常使っているストレスは、外部からの刺激を受けて、生体に起こる反応のことです。こちらのストレスは、好ましくありませんが、応力そのものには、好ましい応力もあれば、好ましくない応力も、あります。
◆
さて、物体に加わる応力は、図 9.2-256 のように考えることができます。
◆ 物体に、応力が加われば、歪みが発生します。金属の、応力(引っ張り応力 )と歪みとの関係は、図 9.2-257 のようになります。これを、応力歪み特性 といいます。
◆
応力と歪みとが、図の弾性限界 以内のときは、応力 σ と歪み ε は、比例します。すなわち、
  ε = σ / E
ここで、1/E は、比例係数です。E のことを、ヤング率 といいます。また、歪み ε は、絶対値ではなく、相対地で定義されます。物体の長さを L、伸縮を 儉 とすれば、
  ε = 儉 / L
です。
◆
弾性限界を超えて、さらに引っ張れば、破断 します(引きちぎれ)。
逆に材料を圧縮した場合には、その材料が 細長いときは、圧縮応力が、ある値を超えると、急に がっくりと曲がります。この現象を、座屈 といいます。薄い板でも、同様な現象があります。
◆
引っ張り試験 を行う 引っ張り試験機 を、図 9.2-258 の左側に、圧縮試験 を行う 押し込み試験機 を、右側に示します。
◆
この、引っ張り試験機と押し込み試験機は、引っ張り または 押し込みを行う装置です。歪み自体の測定は、歪み計を取り付けて行います。しかし、歪み測定は、専用の歪み計を使用するほかに、ストレーンゲージ (歪みゲージ )を測定対象に貼り付ける方法が、広く使われています。
◆
電気抵抗の抵抗値は、歪みが加えられると、変化します。この現象を利用したものが、ストレーンゲージです(図 9.2-259)。図の左側は 白金式ストレーンゲージ 右側は、ストレーンゲージの抵抗値変化を測定する、ブリッジ回路です。図の例では、ストレーンゲージが、ブリッジの 2 辺になっています。ストレーンゲージをブリッジの 2 辺に使用することによって、ストレーンゲージの温度特性などを補償することができ、精度の高い測定を行うことが、できます。
◆
ストレーンゲージは、白金式のほかに、半導体ストレーンゲージ があります。精度の点では白金式が、感度の点では半導体式が、優れています。
◆ 歪み測定装置の形に、仕上げた製品もあります(図 9.2-260)。図は、熱応力歪み測定測定装置 といい、資料を加熱することによって、高温時の歪みを測定することが、できます。
◆ 図 9.2-261 は、非接触伸び歪み計 です。試験片にマークを付け、そのマーキングされた標線を、CCD カメラ で取り込み、パソコンでデータ処理することによって、歪み値を計測します。
◆
面や立体の、歪みの分布を、グラフィカルに表示したい場合が、あります。このようなときは、モアレ縞を利用するのが、便利です。
◆
モアレ とは、画像などにおいて、規則正しい模様を重ね合わせたとき、その模様が、互いに干渉することによって できる 周期的な縞状のパターンのことです。縞になることから、モアレ縞 ともいいます(図 9.2-262の左側)。右側の写真は、モアレを利用した、体形の検査です。モアレを使用することによって、体形の歪みの様子が、よく分かります。
◆
光の偏光 を利用した歪み計測も、あります。
光線がある種の物質(例えば方解石 )を透過したときに、 その偏光の状態によって、 2つの光線(通常光線と異常光線)に分けられる現象が、あります。この現象を、複屈折 といいます(図 9.2-263)。この、複屈折した光は、偏光しています。
◆ 偏光(複屈折)を利用して、歪みを検出することができます。エポキシ樹脂などは、美しい偏光を見せるので、応力を観測するときの材質として、よく用いられています。この応力による、歪みの観測を、光弾性 といいます(図 9.2-264)。図の上側は、光弾性観測装置 、下側は、観測例です。歪みが、図に示すように、縞模様で観測されます。
◆ 図 9,2-265 の上側の図は、偏光式歪み検査機 、下側は、ガラスの歪みを、偏光板 を使って検出した写真です。
◆ 角度計 で、最も簡単なものは、直角定規 と、三角定規 です(図 8.2-266)。図の左側が直角定規、右側が三角定規です。三角定規には、30 °、60°、90°(直角 )の 3 つの角があります。
◆ 直角専用の定規が、直角マスタ (図 9.2-267 上側)や、真直マスタ (図の下側)です。
◆ スコヤ と呼ばれる製品もあります(図 9.2-268)。スコヤも、基本的には、直角定規です。
◆ 任意の角度を測れるのは、分度器 です(図 9.2-269)。図の右側は、身体計測用に、モディファイした製品です。
◆ 分度器を進化させたのが、角度計(プロトラクタ )です(図 9.2-270)。また、水平からの、傾斜角を測るものが、傾斜計 (スラントルール )です(図 9.2-271 の左側)。
◆
水平(垂直)に特化した角度計が、水準器 (水平器 、ハンディレベル )です(図 9.2-271 の右側)。図は、ハンディレベルです。
◆
水準器には、2 つの種類があります(図 9.2-272)。どちらも、鉛直線を利用します。図の左側は、錘をつるした糸が、鉛直線になることを、利用したものです。鉛直とは、重りを糸で吊り下げたとき、糸が示す方向です。図の右側は、円の最高点が、円の中心を通る鉛直線上にあることを、利用したものです。
◆ 水準器を、図 9.2-273 に示します。
◆ レーザー光を併用して使いやすくした水準器(レーザーレベル )もあります(図 9.2-274)。
◆ 自動ローラ形傾斜計 は、土木用の傾斜計です(図 9.2-275)。
◆
回転角度計 は、回転しているものの 回転軸 が回転した 角度を測ります。シンクロ や、レゾルバ は、アナログ形の回転角度計です。ロータリエンコーダ は、回転角度をデジタル量に置き換える装置です。すなわち、ロータリエンコーダは、ディジタル式回転角度計 です。
◆
ロータリエンコーダには、インクリメンタルエンコーダとアブソリュートエンコーダと があります。インクリメンタルエンコーダは回転角度の相対値を、アブソリュートエンコーダは回転角度の絶対値を表示します(図 9.2-276)。
◆ インクリメンタルエンコーダ を、図 9.2.277 に示します。インクリメンタルエンコーダは、相対的な角度の計測です。絶対位置が必要な場合には、絶対位置を示すための、ゼロ信号用の受発光素子と、ゼロ信号スリットとを、別に設ける必要が、あります(図参照)。
◆ インクリメンタルエンコーダでは、回転の方向を識別するために、A 相 、B 相 と呼ばれる2 つの相(位相)の信号を使用します(図 9.2-278)。図に示すように、2 つの信号の位相関係によって、回転方向を判定します。
[図 9.2-278] A 相と B 相の 2つの信号を使う
◆ アブソリュートエンコーダ を、図 9.2-279 に示します。アブソリュートエンコーダは、角度の絶対値を測ります。
◆
アブソリュートエンコーダでは、角度をコードで出力します。コードに、グレイコードを使用するものが、あります(図 9.2-280)。
◆
グレイコード は、数が、1 だけ変化するとき、必ず、1 文字だけ変化するコードです。この性質があるので、センサの入力が変化する、過渡状態においても、コードは、その直前か、直後か、どちらかのコードを出力します。したがって、とんでもない値を、出力することは、ありません。
◆ ポテンショメータ は、位置を電気抵抗に変換します(図 9.2-281)。図の中央は回転形ポテンショメータ 、右側はリニア形ポテンショメータ です。ポテンショメータは、図の(1)〜(2)間のまたは(2)〜(3)間を、可変抵抗器として利用することの他、(1)〜(3)の電圧や電流をを変えることなく、(1)〜(2)間と(1)〜(3)間の電圧比を変えることにも利用されます。ただし、このためには、(2)に接続する負荷抵抗が、十分に大きいことが必要です。
◆ ポテンショメータの出力を絶縁する、絶縁形ポテンショメータ もあります(図 9.2-282)。ポテンショメータそのものは小さいのですが、絶縁のために、図体が大きくなってしまいます。
◆
ポテンショメータには、このほかに、トリマ (トリマポテンショメータ )が、あります(図 9.2-283)。正しくは、トリマには、トリマコンデンサ も含みますが、一般に、単にトリマというと、トリマポテンショメータを指すことが、多いようです。
トリマは、抵抗値を調整する必要はあるが、一度調整すれば、再調整の必要が、ほとんど無い用途に、用いられます。
◆
図の右側は、10 回転トリマポテンショメータです。10 回転トリマポテンショメータは、精密な調整が必要な場所に、使用されます。
トリマ(その他の分圧用途の抵抗を含む)は、その抵抗素子によって、図 9.2-284 のように、使い分けられます。分圧調整 とは、抵抗値の比によって分圧して、分圧された電圧を取り出して利用するものです。したがって、抵抗の比が正確であれば、その絶対値の精度は低くても、問題は、ありません。
電流調整 は、抵抗値の大きさによって電流値を決めて、その電流値を利用するものです。抵抗値の絶対精度が、影響します。
◆ サーメット は、セラミクス (陶磁器)と金属の性質を併せ持った材料です。サーメット抵抗素子は、カーボン抵抗素子よりも、熱や湿度による抵抗値変化が小さいことが、特徴です。また、耐磨耗性に優れ、この意味でも、褶動部分を持っている、可変抵抗に、適した材料です。
_