◆ 実際に、多く使われているセンサの種類を、見てみましょう(図 9.2-225)。図は、2003 年度における、センサの生産数量の、上位 3 種類を、示したものです。図から、上位 2 つが、視覚または、視覚に関連するセンサです。これらのセンサを、視覚センサ と呼ぶことにします。
◆ 人は、視覚から、最も多くの情報を、得ています(図 9.2-226)。人が情報を処理する速度も、視覚が最速です。
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光強度センサ は、光の強さに感じるセンサです。すでに、説明した、フォトダイオード や、2 次元のセンサである、CCD 素子 が、これに属します。2 次元のセンサを、イメージセンサ と呼んでいます。
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イメージセンサは、従来、CCD 素子が多く用いられてきましたが、最近では、CMOS イメージセンサが、主流になっています。
CMOS イメージセンサ (図 9.2-227)は、単位セルごとに、増幅器を持っていますから、ノイズの発生が抑えられます。また、CMOS ロジック LSI の製造プロセスで、大量生産が可能なので、CCD イメージセンサと比較して、安価であり、素子が小さく、消費電力も少ない(CCD の約 1/5)という、特徴があります。
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CMOS イメージセンサは、安価なディジタルカメラや、ディジタルビデオカメラ、極小筐体のテレビカメラ などに、使用されています。最近、カメラ機能搭載の携帯電話が普及したことから、出荷数で、CCD イメージセンサを追い越しています。
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光束センサ は、光束を測定します。光束 は、可視光線のエネルギー量を、人の目で感じる量として表したものです。光束の単位は、lm(ルーメン)です。
人が光に感じる感度は、光の波長によって、大きく変わります。光束の測定では、国際照明委員会で決められている標準観測者のもつ視感度 を使用します。
光束センサには、全方向の光束を計る、全光束センサ が あります(図 9.2-228)。図は、積分球 と呼ばれるものです。図の上側は外観、下側は構成です。
◆ 赤外線センサ には、いろいろ あります(図 9.2-229)。これらについては、既に説明しています。すなわち、熱形センサ (熱起電力効果 、焦電効果、熱電対効果、量子形センサ (光起電力効果、光導電効果 、光電子放出効果)です。
◆ 位置・変位・角度センサは、図 9.2.230 のように、分けられます。
◆ 厚さ計 の種類を図 9.2-231 に示します。
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機械式厚さ計
ブロックゲージ は、実用的な、長さの基準として、最も精度の高いものです(図 9.2-232)。ブロックゲージは、密着する という特徴がありますから、複数のゲージを、組み合わせたときに、精度が低下しません。組み合わせによって、
、あらゆる寸法を、作ることができます。
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ブロックゲージは、各種測定器やゲージ類の精度点検に、また部品の加工や工具・刃物などの取付けに、広範囲に使用することが、できます。
◆ 接触式厚さ計 は、機械的に、測定対象を挟むことによって、厚さを直接 測ります(図 9.2-233)。針で接触するタイプを、触針形接触式厚さ計 といいます。
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空気マイクロメータ
一定圧力の空気を、小さな、ノズル (すき間)から、大気中に流出させたとき、そのノズルの前に、被測定物を置くと、ノズルと被測定物との間隔と、ノズルから流れ出す流量とが、比例する範囲があります。この事を利用して、微小厚さを計るのが、空気マイクロメータ(エアマイクロメータ ) (図 9.2-234)です。
◆ 超音波式厚さ計 (図 9.2-235)は、測定物の表面(図の(b))と、底面(図の(c))とからの、超音波の反射による時間差によって、厚さを測ります。
◆ 放射線は、厚さ計だけでなく、各種の用途に、使われています(図 9.2-236)。放射線 については、コラム 9.2-18 を参照してください。放射線は、人体に影響がありますから、取り扱いに、注意しなければ、なりません。
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放射線式厚さ計
透過形放射線式厚さ計 (図 9.2-237)と、蛍光 X 線形放射線式厚さ計とが、あります。
◆ 透過形放射線式厚さ計は、被測定物の厚さによって、透過する放射線の強さが変わることを、利用した製品です。 線源の種類によって、いろいろな測定範囲のものを作ることが、できます(図 9.2-238)。
[図9.2-238] 透過形放射線式厚さ計の線源の種類と測定範囲
◆ ベータ線透過形放射線式厚さ計 は、ベータ線 (図 9.2-238 参照)を利用した、透過形放射線式厚さ計です(図 9.2-239)。
◆ ガンマ線厚さ計は、ガンマ線(図 9.2-238 参照)を利用した、透過形放射線式厚さ計です(図 9.2-240)。
◆ X 線式厚さ計 を、図 9.2-241 に示します。X 線式厚さ計は、X 線を利用した、透過形放射線式厚さ計です
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蛍光 X 線形放射線式厚さ計 を、図 9.2.242 に示します。
コーティング面に、ガンマ線を照射すると、金属原子の電子は、強く揺さぶられます。揺さぶられた金属原子は励起し、蛍光 X 線を放出します。放射された蛍光 X 線は、金属膜の質量に比例します。したがって、厚さの測定ができます。
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赤外線式厚さ計
被測定物に、赤外線を照射すると、膜厚に応じた特定波長の赤外線吸収現象が生じます。これを利用したのが、赤外線式厚さ計です(図 9.2-243)。
図の上側の赤外線式厚さ計は、3 成分までの成分の組成も、同時に測ることができます。
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光線式厚さ計
光を利用した厚さ計です。しかし、対象物が不透明の場合には、光以外のものを、補助に使う必要があります。補助として、磁気を使用した、光磁気式厚さ計 を、図 9.2-244示します。
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電気式厚さ計
電気式厚さ計には、いくつかの種類があります。まず、静電容量式厚さ計 を示します(図 9.2-245)。測定対象が、電気の導体であるとき、センサと、測定対象との距離によって、静電容量が変わることを、利用したものです。
◆ 電磁式厚さ計 は、電磁誘導の作用を利用した厚さ計です(図 7.2-246)。渦電流膜圧計 も、電磁誘導(渦電流)の応用製品です(図 9.2-247)。
★ 放射線 は、両刃の剣です。うまく利用すれば、私たちの生活に、何かと、役立ちます。しかし、使い方を誤ると、大きな危害を及ぼします。しかも、その被害は、直ちに現れるとは限らず、何年か経ってから、現れることがあります。
兵器に使う、原子爆弾 の恐ろしさは、言うまでもありませんが、スリーマイル島 の事故や、チェルノブイリ 事故は、まだ、記憶に残っています。
★ 一方、放射線の、平和的な利用は、ますます、盛んになり、本文の図 9.2-235 にも示したように、私たちの日常生活に役立っています。医療面では、X 線写真 のX 線 も、放射線です。ガンの治療には、放射線アイソトープを使用しています。
★ アイソトープ (同位元素 )とは、元素の種類は同じですが、中性子の数が異なる元素のことです。天然に存在するアイソトープもありますが、天然には存在せず、人工的に創られたアイソトープがあります。天然に存在する元素にも、放射能を有する元素、たとえばラジウムがあります。
★ 天然には存在せず、人工的に作られたアイソトープは、不安定で、放射線を放出します。
ラジウム は、ラジウム温泉 の、温泉にも含まれています。ただし、ラジウム温泉の名で呼ばれていても、実際の主成分は、ラジウムが、放射線を出して崩壊した後の、ラドンです。
★ ラドン は、有害物質とされており、アメリカの研究では、ラドン摂取が原因で肺ガン で死亡する人が、1 年に、アメリカ国内で、21,000 人います。
ラジウムがら出るラドンは、発ガン物質です。ラジウム温泉施設は、ラドンを含んでいますから、アメリカでは、禁止されています。
★ 日本では、ラジウム温泉や、ラドン温泉 は、健康に良いとされています。放射性物質 が放射するガンマー線 や、放射線そのものが、人体に、一種のショックを与え、その人の免疫力を励起させるためであろうと、されています。
★ さて、放射線は、いろいろな役に立っています。
ここでは、その代表例として、農業 への応用について、解説します。農業における放射線利用の、経済規模は、下図の通りです。
★ 放射線照射 利用の具体例として、沖縄群島における、ウリミバエ (下図)の駆除があります。ウリミバエの幼虫にコバルト 60 ガンマ線を照射して、不妊にした幼虫を大量に野外に放ち、交尾しても、卵が孵化しないようにしました。
★ 私たち人間をはじめとして、すべての生物は、遺伝子 によって、同じ性質を、代々受け継いでいます。しかし、長期的に見ると、進化してゆきます。この進化に関わっているのが、遺伝子の突然変異 です。放射線は、この突然変異の要因になります。
★ 植物に、放射線を照射することによって、突然変異を起こさせて、新品種を開発するのが、放射線育種 です。下図は、放射線育種よって創られた、いろいろな花色の菊です。
★ 放射線育種は、病害に対して丈夫な品種を作るのにも役立ちます。下図は、放射線育種によって作られた、耐黒斑病 性を持つ、ゴールド二十世紀梨です(図の右側)。
★ 放射線は、人体に影響がありますから、その取り扱いには、注意が必要です。放射線の取り扱い に関しては、法律による規制もあります。規制の詳細は、[ここ]をクリックしてください。
★ 放射性物質を安全に取り扱うための 3 原則を示します。
  (1) 放射性物質を、狭い空間に閉じ込めて、拡げないようにする
  (2) 利用する放射性物質の量を、最小限にとどめる
  (3) 放射性物質の購入、使用、廃棄などを、きちんと管理する