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距離計 は、現在の自己位置から、対象物までの距離を測る、測長計です。
写真機に付属している距離計は、二重像合致式距離計 と呼ばれる、光学式距離計 です(図 9.2-285)。
◆ 図 9.2-286 は、超音波式距離計 です。超音波距離計は、センサから発射した超音波が、対象物で反射して戻ってくるまでの、往復時間によって、距離を測ります。対象物が透明体のものに適しています。
◆ レーザー式距離計 もあります(図 9.2-287)。レーザー式距離計は、レーザー光を使用した距離計です。直接対象物との距離を測るもののほか、図のように、ピタゴラスの定理を使って、2 点間の距離を求めることが、できる機種も、あります。
◆ 歩数計 (万歩計 )は、距離計ではありませんが、距離計に類する製品です(図 9.2-288)。人が歩くときの、腰の高さの変動を検出して、歩数を数えます。
◆ 変位 とは、物体が置かれている位置からの ずれ のことです。変位計 (変位センサ )は、この ずれ を計測します。測定原理は、各種あります(図 9.2-289)。図の接触式を除いて、多くが、非接触式変位計 です。
◆ 渦電流式変位計 は、渦電流を利用した変位計です(図 9.2-290)。
◆ 光学式変位計 は、光(レーザー光を含む)を利用した変位形です(図 9.2-291)。
◆ 共焦点式変位計 は、共焦点を利用した変位計です(図 9.2-292)。共焦点 (コンフォーカル )とは、試料を極めて小さなスポットで照明します。試料の位置が、ちょうど焦点と一致しているときは、試料で反射された光は、図のピンホールを通過し、光検出器で検出されます。これを合焦点 といいます。しかし、試料が焦点から外れているときは、反射光が遮られるため、光検出器で検出されません。この現象を利用したものが、共焦点式変位計(図 9.2-293)です。
◆ 三角測距式変位計 は、三角測量の原理を応用した変位計です。三角測量 は、地図を作るための基本的な測量の方法です(図 9.2-294)。三角測距式変位計を、図 9.2-295 に示します。
◆ 光学透過形変位計 は、光ビーム中に置いた測定対象の変位を測ります(図 9.2-296)。図に示すような、各種の状態を検出できます。
◆ 超音波式変位計 は、センサから超音波を出し、測定対象から反射して戻ってくるまでの時間差によって変位を検出します。
◆ レーザーフォーカス式変位計 (図 9.2-298)は、レーザー光を使用します。図に示すように、透明体の、厚さを測ることが、できます。
◆ 接触式変位計 (触針式変位計 )は、触針を測定対象に接触させて、その変位を計測します(図 9.2-299)。
◆ 静電容量式変位計 は、金属など、電気の導体の微小な変位を測定します(図 9.2-300)。上側写真の右側は、プローブです。プローブと測定対象との間の静電容量を測ります。図の下側は、回転体の回転ブレの測定例です。
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磁歪式変位計 は、磁歪の現象を利用した変位計です。
鉄などの磁性体は、磁場に引き寄せられる強磁性 という性質を示します。この性質は、磁石として広く利用されています。
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一方、磁性体には、磁場を加えることによって、その長さが変わります。逆に、素子に応力を加えて変形させると、その応力の速さや大きさに応じて、磁気特性が変化します。これらの現象を総称して、磁歪 と呼んでいます。
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多くの磁性体では、この磁歪の大きさは、非常に小さく、鉄 (Fe)、コバルト (Co)、ニッケル (Ni)などの強磁性体では、0.01〜0.0001 % です。
しかし、最近では、Fe と希土元素 (Tb、Dy など)を混ぜ合わせた材料が、0.1 % 程度の磁歪量を示すことが、発見され、巨大磁歪材料 として実用されています。
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磁歪式変位計を、図 9.2-301 に示します。図の左側は、原理を示します。磁歪線 上に、図の A の向きに電流パルスを与えると、磁歪線の軸方向全域に、円周方向の磁場が、発生します(図の橙色)。
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磁石を、図のように配置すると、その部分だけに、軸方向の磁場が、生じます。この磁場と、円周方向の磁場との合成で、水色で示す斜めの磁場ができ、この部分に、ねじり歪みが発生ます。このねじりは機械振動なので、磁歪線上を、超音波で、伝播します。この超音波の伝播時間を計測して、磁石の位置を求めます。
◆ 差動トランス (差動変圧器 、ディファレンシャルトランス )は、トランスの一種ですが、変位センサとして動作します(図 9.2-302)。差動トランスの鉄心 を動かすと、鉄心の変位に比例して、出力電圧が変化します。図の中段と下段は、差動トランスの鉄心の位置による出力電圧の変化を示します。
◆ 差動トランスは、各種の測定に利用されています。図 9.2-303 は変位計、図 9.2-304 は傾斜計、図 9.2-305 はテンションセンサへの応用です。
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速度は、単位時間当たりの変動を表す量です。この変動する変数は、何であっても、差し支えありません。たとえば、面積速度 、気化速度 などを、考えることが、できます。しかし、一般には、速度は、一定時間あたりに進む距離 のことを指します。
ここでも、速度 は、変位(距離)に関するものとして、お話を進めます。
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速度のことを速さと呼ぶ場合もありますが、速度(ベロシティ 、ベクトル量)と速さ (スピード 、スカラー量)とを区別して、定義することも、あります(図 9.2-306)。スカラーは大きさだけで向きを持ちませんが、ベクトルは、大きさと向きの両方を考える必要があります。図の下側は、ベクトルの加算です。互いの向きが逆であれば、加算された結果は、ゼロとなります(下段右側)。
◆ 速度の単位は、いろいろありますが、代表的なものを、図 9.2-307 に示します。多く使われているのは、時速 (km / h)です。海上では、ノット が、使われています(ノットは、海里 / 時です)。マッハ は、人工衛星の出現と共に、使われるようになりました。
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回転する物体には、回転速度 を使用します。回転速度は、一般に、rpm (回転 / 分) を用います。
速度と回転速度とは、別のものです。しかし、具体的な装置においては、速度を測るのに、回転部分を利用して測ることが、多いのです。たとえば、自動車の速度計は、本来は、対地速度ですが、実際には、タイヤの回転数から換算しています。回転数を測る方が、直線的な速度を測るよりも、簡単だからです。
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速度計 (スピードメータ )は、スカラー量の速さを測ります。自動車にも取り付けられていますから、馴染みのある、計器です(図 9.2-308)。上述のように、自動車に搭載されている速度計は、真に速度を測っているのでは、ありません。
◆ エレベータ速度計 (図 9.2-309)も、エレベータのロープが吊ってあるプーリーの表面速度を測っています。直接エレベータの速度を測っているのでは、ありません。エレベータの速度は、常時は測る必要は無く、メンテナンスのときに、測ります。したがって、図のように、ポータブルです。
◆ ライン速度計 は、線速 (リニア速度 )を測ります(図 8.2-310)。これは、本当に、速度を測っています。ただし、上述の理由によって、回転に変換して、測っています。
◆ レーザードップラー速度計 は、レーザー光の、ドップラー効果を利用した速度計です(図9.2-311)。図の右側は、その原理を示します。
◆ ドップラー効果 とは、音源と、その音を聞く受信者との、相対距離が変化するとき、音の波長(音の高さ)が、異なって聞こえる現象です(図 9.2-312)。このドップラー効果は、光においても、存在します。厳密には、音と光とでは、若干異なりますが、原理的には、同じ現象です。
◆ 空の星 (恒星 )は、地球に近付いているものと、地球から遠ざかっているものとが、あります。このことは、ドップラー現象によって確かめられています(図 9.2-312)。
◆ 回転速度計 (タコメータ )には、接触形タコメータ と、非接触形タコメータ とがあります。図 9.2-314 の左側は、ハンディタイプの、接触式タコメータです。その右側は、ハンディタイプの非接触式タコメータです。図に示した非接触式は、光学式です。回転の目印となる反射マークを、軸に貼り付けて使用します。
★ 私たち人間は、速いものに、憧れを持っています。乗り物 の歴史も、速いものへの挑戦でした。
列車を例に取ると、日本の鉄道開業 時、東京〜横浜間を、53 分で、走った(下図左側)のが、経路(したがって、実距離)は異なりますが、新幹線 では、19 分で走ります(下図右側)。
★ 競技で速さを競うのも、速いものへの憧れの現れです。男子 100 m 陸上競技 の世界記録は、9.77 秒です。
1/100 秒の単位になっているのは、この競技が、すでに極限に達していて、1/100 秒記録を縮めることが、大変なことだからです。
★ 速度が、歴史を大きく変えることも、あります。
織田信長 が、本能寺の変 で斃れたとき、羽柴秀吉 は、高松城 を水攻めによって、陥落寸前に追い詰めていました。信長の死の情報を、その翌日に入手した秀吉は、夜明けまでに、毛利方と和睦し、2 日後には、約 70 km 東の姫路城 に戻りました。
これが、「秀吉の中国大返し 」と呼ばれるものです。
★ 秀吉は、姫路で、軍備の点検に一日を費やしただけで、さらに東に進み、その翌日には、摂津 の尼崎 に到着しています。秀吉が、瞬時に下した的確な判断と、迅速な行動とが、山崎合戦 の勝利に結びつき、天下争覇の勝負を決したわけです。
★ 北大西洋航路 では、スピードが追求され、最速記録の船は、ブルーリボン 記録ホールダーとして、たたえられてきました。1952 年アメリカのユナイテッド・ステーツ号 が、ニューヨーク →ビショップ岩礁 (イギリス南西端)間を、平均 35.6 ノット/時で航海したのが、最速です。
★ ところで、人が感覚として、速いと感じるのは、何でしょうか。ドライバー (運転者 )は、速度計による速度情報とは別に、自身の印象による速度判断をを使って、車を運転しています。
★ この人間による速度判断は、メンタルスピードメーター と呼ばれています。人は、周囲の景色の流れ方、加速 や減速 による平衡感覚 の変化、エンジン音や風切り音、使用しているギヤ、アクセルペダルの踏み方など、いろいろな手がかりによって、情報を得ています。これが、メンタルスピードメーターです。
★ ドライバーが、加速、減速したりするとき、とくに、高速道路 の出入りでは、速度計よりも、メンタルスピードメーターを使うことが、多いようです。このメンタルスピードメーターが、正確であれば、問題は無いのですが、残念ながら、かなり、不正確、かつ、不安定です。
★ 下図は、8 名のベテランドライバーについて、速度計を目隠しにして、行ったテストの結果です。図から分かるように、指示よりも実際の速度の方が、大きくなる傾向があります。
★ また、ドライバーが、高速道路などを、連続走行すると、速度感が低下する、速度順応 と呼ばれる現象も、あります。時速 100 km で 1 時間走っていると、速度感は、1/2 に下がってしまいます。
★ 私たちは、常に安全運転 を、心掛けている積もりでいます。しかし、安全 に対する意識や感じ方は、一人一人異なります。ユーザーテストによると、対向車線 から、やってくる車の、大きさや車種によって、危険と感じる距離が、違います。
★ 下図は、道路の反対側にあるガソリンスタンドに入ろうとして、右折待ち をしている車が、どのようなタイミングで、スタートするかを、調べたものです。対向車 の車種は異なりますが、対向車は、いずれも、時速 30 km です。衝突 の危険度は、どれも、おなじです。
★ ところが、相手の車が小形であれば、より近距離でスタートしています。これは、自分が被害を受ける立場で、危険度を判断したということです。交通弱者 に対する思いやりは、ありません。
★ 相手は、このようなものであることを、知って行動し、自分は、安全運転を心がける必要が、あります。
★ 高速であれば、移動時間が短くて済むという、利益があります。経済性を考えれば、移動時間に費やす無駄な時間と、移動に掛ける費用との兼ね合いで、交通の手段を選ぶことになります。
★ しかし、このような経済性とは別に、スピードには、快感があります。この、スピードに対する感覚には、2 種類あります。第一は、速度を直接感じることです。
★ しかし、人は、速度そのものには、感じません。ジェット機にのって、1000 km/h の速度で飛んでいても、高速であるとは、感じません。
★ 人が直接感じるのは、速度ではなくて、加速度 です。電車やバスが、急停車したときに受けるショックが、加速度です。
★ 人が感じる速度感 には、視覚が、大きく関係しています。錯覚 の実験で、大きな円と小さな円とを並べて、大きな円の方を動かす実験が、あります。実際に動いているのは、大きい方の円ですが、小さい方の円が動いているように、見えます。
★ 月夜 に自分が歩くと、月が自分と共に動くように見える現象も、この錯覚です。視野が大きい方が静止して見え、視野が小さいほうが動くように、見えます。
★ 停車 中の電車 に乗っているとき、反対の電車が発車 すると、自分の電車が動いたような気がするのも、同様な錯覚です。錯覚(錯視 )については、ここでは説明しません。[ここ]を、参照してください(戻るときは、ブラウザ上部の「戻る」を使用してください)。
★ 動きを利用した娯楽には、いろいろありますが、速度を楽しむものと、加速度を楽しむものとが、あります。
★ 加速度は、人体に感じますが、速度は、直接、体には、感じません。速度を楽しむのは、視覚で楽しんでいるのです。ジェットコースター は、速度、加速度、高さの 3 つが、共に大きいですから、最もスリルに富んだ、遊具です。
★ 分析 とは、分け割くことです。分析の対象は、いろいろありますから、何を分析するかで、意味が違ってきます。身近ものでは、食品分析 があります。食品分析は、各種食品 に含まれている栄養分 の分析で、食品成分表 の形で、まとめられます。
★ 下図は、りんごの食品成分表です。
★ さて、分析計 は、成分 を計る計測器ですが、用途によって、2 種類に大別されます。ラボラトリ(実験室)用の分析計と、オンラインのプロセス分析計です。ラボラトリ用分析計 は、さらに、2 つに分けられます。定性分析を行うものと、定量分析を行うものの、2 つです。
★ 定性分析 は、どんな成分が含まれているかを調べます。これに対して定量分析 は、含まれている成分の種類は既知であって、その中の特定の、ある一種類の含有量を計ります。
1 台の分析計で、定性分析と定量分析の両方を行うものもあります。
★ 上述のプロセス分析計 は、生産現場などで、オンラインの定量分析を行います。
分析計の概要を、以下に示します。
★ ここでは、一例として、ガスクロマトグラフ について、簡単に説明します。ガスクロマトグラフは、ラボラトリ用、プロセス用の両方が、あります。下の写真は、ラボラトリ用です。
★ ガスクロマトグラフの原理を示します。
★ 記録計に記録された波形の、位置(上図の縦方向)によって、成分が決まり、ピーク面積によって、その成分が、定量されます。