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非接触式温度センサの代表例が、放射温度計 (輻射温度計 )です。全ての物体は、その物体の絶対温度の 4 乗に比例した放射エネルギーを放出しています。この放射エネルギーを測定すれば、非接触で、遠隔から、物体の温度を測ることが、できます。
放射エネルギーは、物体の温度と、図 9.2-213 に示す関係が、あります。温度が高いほど、短い波長の成分が、多くなります。
◆ 上図は、黒体からの放射です。物体には放射率 があります。黒体の放射率は、1 です。放射率が、1 以外の物体の、放射エネルギーは、黒体の放射エネルギーに、その物体の放射率を掛けた値になります。主な物体の放射率を、図 9.2-214 に示します。水分を多く含む食品や塗装面などの放射率は、おおよそ 0.92〜0.98 ぐらいと、比較的、似かよっています。
◆ 放射温度計の種類を、図 9.2-215 に示します。
◆ サーモパイル は、多数の熱電対を、直列接続して、起電力を高くしたものです(図 9.2-216)。
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図で、白金黒 というのは、白金の上に、白金をメッキしたもので、黒体と見なすことができる物質です。黒体は、100 % 放射を吸収します。したがって、周囲よりも、温度が高くなります。サーモパイルでは、その温度上昇から、放射エネルギーを検出します。
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焦電形温度センサ (図 9.2-217)は、焦電効果を利用した温度センサです。結晶を加熱すると、表面に電荷が発生します。この現象を、焦電効果 といいます。この焦電効果は、温度変化を検出しますから、温度が一定のときは、出力が、ありません。
◆ 量子形赤外線センサ は、図 9.2-218 に示す、3 種類のものがあります。
◆ 光起電力効果 のフォトダイオードについては、既に説明しました。フォトトランジスタ は、フォトダイオードとトランジスタとを組み合わせて、増幅作用を持たせた製品です(図 9.2-219)。
◆ フォト IC は、フォトダイオードと、IC (集積回路)とが組み合わされた受光素子 です。フォト IC の一例を、図 9.2-220 に示します。
◆ この IC は、フォトインタラプタ といい、溝のところを、物体が遮ったことを、検出します。類似のものに、フォトリフレクタ が、あります(図 9.2-221)。
[図 9.2-221] フォトインタラプタとフォトリフレクタ
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太陽電池は、6.3.(5-A) に示しました。
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光導電効果 とは、光が当たると、電気抵抗が変化する現象です。光を当てることで、半導体内に、光量に比例した自由電子が発生し、電流の流れに変化が生じ、抵抗値が下がります。光量変化に対する抵抗変化は、大きいのですが、変化追従は比較的遅いので、光量を抵抗値に変換する素子として、ゆっくりした変化の検出に利用します。
代表的な素子は、CdS セルです(図 9.2-222 の左側)。
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CdS セル は、硫化カドミウムを主成分とした光導電素子 です。一般に CdSe セル を含めて、CdS セルと総称しています。街路灯の自動点滅器(上図の右側)・カメラの露出計や、照明器具などの明るさを測定する照度測定器、などに、使用されています。
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次に、光電子放出効果 について、説明します。
光電管 は、光電効果 (金属面に光をあてると、電子が飛び出す現象)を利用して、光の強さに応じた電流を発生させる真空管です(図 9.2-223)。飛び出した電子は、コレクター で集めます。
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光電子倍増管 (フォトマル )(図 9.2-224)は、2 次電子放出効果 を利用した、光増幅器の一種です。人間の目で感じない、微弱な光の検出を、行うことができます。また、可視光だけでなく、紫外線や、近赤外線にも使うこどができます。
光電子倍増管にについては、コラム 9.2-17 を参照してください。
★ リモートは 遠隔、センスは 感じる ですから、リモートセンシング (遠隔探査 )は、センサと、その対象物とが遠く離れた観測、または、その観測方法のことです。
最近では、リモートセンシングは、航空機による観測の他、人工衛星によるものが、多くなっています。
★ リモートセンシングの利用は、多岐にわたりますが、とくに重要なものとして、地球環境 の監視があります。たとえば、森林面積や海水温・海氷などの時間変化から、地球温暖化 の兆候を監視する、といった用途があります。
このような用途には、以下に示す リモートセンシングの特徴が、活用されています。
★ 以下に、人工衛星による、リモートセンシングの画像を、いくつか示します。上段左は、気象衛星 による地球の画像です。同右は、有珠山噴火時の画像です。中段は、日本南方海域の海水温の分布です。気象だけでなく、漁業の役にも立ちます。
下段左は、精密土壌(腐植)マップ 、右側は、作物生育状況マップ です。
★ 以上のように、広域をマクロに捉えるには、人工衛星によるリモートセンシングが、有効です。
また、マクロだけでなく、ミクロな把握にも、役立ちます。下図は、人工衛星による地上の画像の例です。人工衛星の画像は、1 m の分解能があります。
★ 人工衛星は、災害時の、災害状況 の把握にも、有用です。下図は、ニューヨークの同時多発テロ 事件の画像です。テレビなどの写真(その下の画像)では、ニューヨークセンタービル倒壊の状況は、生々しく報道されました。しかし地上からの写真では、被害の全貌は、把握できませんでした。
★ 膨張 とは、膨れることです。膨れて嫌なのは、膨れっ面、これは頂けません。逆に、膨れて楽しいのは、風船 です。通常は、風船には、空気よりも軽い、ヘリウムを詰めますから、手を離すと、舞い上がります。屋外では、遠くへ飛んでいってしまいます。この風船は、何処へ行くのでしょうか。
★ ゴム風船の場合、ほとんどが、約 8,000 m の上空まで、上がるそうです。8,000 m では、気圧が低いので、約 7 倍に膨れ上がります。8,000 m の上空では、気温が約 -40 ℃ ですから、凍結して、粉々に割れて、落下します。
上昇し切らずに、そそままの形で落下したものも、直射日光や、バクテリア、雨水などによって、分解されます。
★ 飛行船 も、風船と同じで、ヘリウムを使います。ヘリウムよりも、軽いのは、水素です。昔は、飛行船に、水素を使っていました。
飛行船は、飛行機以前の、旅客輸送の花形でした。しかし、水素を使っていたが故に、爆発事故を起こしました。下の写真は、ドイツの大形飛行船ヒンデンブルグ号 が、ニューヨーク近郊で、着陸に失敗して爆発炎上した光景です。
★ 風船は、圧力によって膨張しますが、液体や固体は、温度による、熱膨張 によって、膨張します。熱膨張率 (熱膨張係数 )は、一般に、固体では線膨張率 (線膨張係数 )、液体では体膨張率 (体膨張係数 )で表します。
線膨張率 α は、元の長さを l0、温度差を t [k] (ケルビン)とすれば、
となります。
★ 体膨張率 β は、
です。
★ ただし、
の関係が、あります。
★主な物質の膨張係数を、以下に示します。図から、アルコール(エチルアルコール)の膨張係数が非常に大きいことが分かります。これが、寒暖計に、アルコールが使用されている、理由です。
★ スーパーは、超 を意味する前置詞ですが、通常は、スーパーマーケットのことを、言います。昭和 30 年代に、米国から、セルフサービスの販売手法が導入され、その後、全国各地に、スーパーマーケットが展開されました。
★ スーパーマーケットは、1 つの店舗で、あらゆる商品を購入できる、いわゆるワン・ストップ・ショッピングです。棚ラベルに、商品名や価格、容量などを明記して、商品を並べることが、主な特徴です。
★ 光電子倍増管 は、2 次電子放出効果利用した、光増幅器の一種です。
2 次電子 とは、固体に、電磁波(X線 、電子線)や粒子(電子、イオン)などを照射したときに、固体表面からとびだしてきた、電子のことです。
加速した電子線 を、物質に照射すると、下図のように、いくつかの反応が、現れます。その中の一つが、2 次電子です。
★ 電子線は、粒子線の一種です。粒子線 とは、原子、分子、あるいはそれらのイオンや原子核、中性子、電子などの粒子によるビームのことです。
★ 上記の、光電子倍増管を、11,200 個も使用した、巨大な施設が、飛騨神岡の鉱山の地下 1,000 m のところに造られた、東京大学の神岡宇宙素粒子研究施設 スーパーカミオカンデ です。
★ スーパーカミオカンデ は、小柴昌俊東京大学名誉教授の、ノーベル賞受賞研究の元となった、カミオカンデ と同じ原理で、それを、大規模高性能化した ものです。50000トンの超純水を蓄えたタンクがあり、その内部に、11200 本の光電子増倍管が、設けられています。
★ スーパーカミオカンデは、ニュートリノの観測に使用されています。
ニュートリノ とは、1933年にパウリによって理論的に存在を予言され、26年後に実験で確認された電気的に中性(電荷ゼロ)で、重さ(質量)が、ほとんどゼロの、粒子のことです。
★ 現在では電子ニュートリノ 、ミューニュートリノ 、タウニュートリノ の 3 種類の,、ニュートリノが観測されています。
ニュートリノは、他の粒子との相互作用が弱く、物質を素通りするため、宇宙 のはるか彼方や、太陽 の中心部で発生したニュートリノは、そのまま地球にやってきます。
★ そのため、観測が非常に難しく、実際には、塩素やガリウム、水素などの原子核に衝突したときに、ごくまれに起こる逆ベータ反応と呼ばれる、発光現象などにより 検出します。