◆ データ伝送では、短距離のインターフェースは、たとえばセントロニクスインターフェースなどの、並列伝送も用いられていますが、多くは直列伝送です。
インターフェースは、その仕様が互いに一致していないと、やり取りを行うことができません。インターフェース、とくに汎用インターフェースは、互いに別のシステムや、異なったメーカーの機器とのやり取りがあります。
◆ このため、規格化されたインターフェースを使用することが有効です。ここでは、広く使用されている、直列インターフェースについて、解説します。
インターフェースは、次に示す内容を規定する必要があります。
電気的仕様 : たとえばゼロと 1 の電圧レベルなどを規定します。
機械的仕様 : コネクタを使用するものでは、コネクタの仕様です。
信号線仕様 : 信号線の種類と、各信号線の使い方を規定します。
ただし、ある 1 つの規格が、この 3 種類をすべて含むとは限りません。このような場合には、複数の規格を組み合わせて使用します。
◆ RS232C は、EIA (米国電子工業会)の規格です。しかし、同じ内容のものが、国際規格(CCITT (国際電信電話諮問委員会)の V24)およびJIS(日本工業規格の X5101)として規格化されています。しかし、RC232C の名が広く用いられています。
なお現在、RS232C と称して広く使用されているものは、RS232C そのものではありません。そのバージョンアップ、RS232C の規格を拡張し、レベルアップされた内容、および規格外の使い方を含んでいます。
◆ この意味では、RC323C は、規格名称ではなく、現在使用されている仕様に対する一般名称と考えた方が良いでしょう。このことは、逆にいうと、RS232C と称していても、互いの接続が保証されない恐れがあるということです。
[注] 仮に、厳密に或る規格に従っていたとしても、その規格で、たとえば複数の方式を規定している場合、異なった方式相互のやり取りは、保証されるとは限りません。
◆ RS232C は、本来は、ブロードで使用されている電話回線用モデム のインターフェースに関する規格として制定されたものです。
しかしその後、パソコンなどの機器相互を結ぶ汎用インターフェースとして広く使用されるようになりました。当初は、パソコンとモデムとを繋ぐ本来の用途に使用されたのですが、次第にパソコン相互や、パソコンとその他の機器とを結ぶ、汎用インターフェースとして使用されるようになりました(図.21)。
[図.21] RS232C 用途の拡大
(a) RS232C 本来の用途
(b) 拡大された用途
◆ そして、パソコンの性能アップと共に、RS232C の規格を上回る伝送速度が要求され、それに対応するために、仕様アップして、現在に至っています。
最近では、パソコンインターフェースとして、USB インターフェースが普及し、広く使用されるようになってきました。したがって将来的には、RS232C は、USB に置き換わってゆくものと考えられます。
[注] USB は、3.3.で解説する予定です。
◆ 先ず、元々の RC232 の規格について説明します。EIA の規格は、当初は、RS XXという番号が付けられていました。現在では、EIA の規格番号は、EIA XXです。また、規格番号の最後に付けられている英文字は、改訂されたときのバージョンを表します。
現在では、EIA232 は、さらにバージョンアップされて、EIA232F になっています。しかし、先に述べたように、規格外の使い方も含めて、RS232C の呼び名が流通しています。
◆ RS232C は、電気的仕様/機械的仕様/信号線仕様の 3 つを共に含んだ規格です。
電話回線用モデムは、非同期式/同期式の両方を含んでおり、伝送速度も各種にものがあります。RS232Cは、これらの各種モデムに共通のインターフェース規格です。ただし、パソコン相互等のインターフェースには、非同期式が使われています。
◆ 電話回線用モデムの伝送速度は、現在では 56k ビット/秒までありますが、当時としては、将来の進歩を考えても 19.2k ビット/秒が限度と考えられていました。したがって、規格は、最高 20k ビット/秒となっています。
◆ 伝送距離は、規格では、15m 以内です。長距離の伝送はモデムが引き受けてくれ、RS232C は、そのインターフェースですから、長く引く必要が無いからです。しかし実際には、伝送速度が遅ければ、長距離の伝送が可能です。
◆ 電気的仕様を規定するための、相互接続の等価回路を図.22 に示します。
◆ インターフェースでは、信号線による電圧降下や伝送の遅れがありますから、厳密に規定するためには、図のような分界点を明示する必要があります。
主な電気的仕様を、表.2 に示します。
◆ RS232C 用のドライバ/レシーバ IC がありますから、これを使用すれば、電気的仕様を意識する必要はありません。たとえば、ドライバ : SN75188、レシーバ : SN75189、があります。
なお、表から分かるように、出力電圧は、プラス/マイナスに大きく振れます。これは、ノイズに強くすることには有効ですが、そのための±12V の電源を必要とします。RS232C だけのために電源を用意するのは、コストアップになります。
◆ これを解決するために、IC の内部に電源回路を内蔵し、外部からは、単一 5V または、単一 3.3V 電源を供給すればよい IC が発売されています(たとえば、MAX3160〜3162)。
[注] MAX3160〜3162 は、後述する RS422/485 にも使用できる IC です。
◆ RS232C 用コネクタを図.23 に示します。
◆ このコネクタは、D サブコネクタ といい、広く各所で使用されているコネクタです。直列伝送なのにピン数が多いのは、モデムとの間の制御信号線数が多いからです。必要な制御信号の本数は、同期式の場合に多く、非同期式では、それほどではありません。非同期式専用の 9 ピンのコネクタがあります(RS232C の規格外)(3.2.(2-B-e))。
◆ RS232C の信号線を表.3 に示します。
◆ グラウンド線(信号用接地)を共通の戻り線にしていますから不平衡です。
交換回線の場合は、モデムのほかに、NCU と呼ばれるダイヤル機能が必要です。電話回線用のモデムは、ほとんどが交換回線で使用します。したがって、通常モデムと呼ばれている製品は、NCU を内蔵しています(図.24)。
◆ この場合も、コネクタは、RS232C 用コネクタを使用します。NCU として使用したときの信号線を、表.4 に示します。
◆ 最近のパソコンでは、モデムは、ほとんどがパソコンに内蔵されています。この場合は、RS232C を介さないで、電話回線に直結します。したがって、パソコンの RS232C インターフェースは、本来のモデムとの接続に使用することは、ほとんどありません。
◆ 非同期式で使用する信号線を表.5 に示します。
図中のコネクタは、非同期式専用の 9 ピンコネクタです(RS232C の規格外)。
◆ 非同期式(ダイヤル無しで直接相手と繋がる場合)の、信号のやり取りを、図.25に示します。
◆ 図において、
(a) 互いに動作可能であることを確認します。これは、相手が動作中であることが確実でないときに行う、一般的な制御手順です。これを接続処理といいます。ここの接続処理は、デバイスとモデムとの間の接続処理です。
(b) これも接続処理の 1 種です。モデムは CS がオンである期間、SD(伝送路中)に搬送波を送出します。上記の(a)が、単なる動作可能かどうかの確認であるのに対して、この接続処理は、接続のための動作を行います。
(c) デバイスは 要求 RS に対する返事 CS を受けてから、データを SD から送信します。ここで送信とは、既に送出している搬送波に、データを載せることです。送信終了後、RS を落とします。
(d) モデムは、相手側のモデムからの搬送波を受信したことを、CD によって、デバイスに通知します。
(e) 受信データ RD を受け取ります。受信データは、一方的にモデムから送り込まれます。デバイス側から待ったを掛けることはできません。
ただし、このことは、RS232C におけるハードウェア上のやり取りであって、ソフトウェアのやり取りでの確認は、別途取ることができます。
◆ RS232C の規格上の伝送速度(20k ビット/秒)と伝送距離(15m)は、ハードウェアが持っている能力ではなく、当時のモデムの性能と、そのインターフェースとして必要な性能から決められたものです。実際の伝送速度/伝送距離の能力は、使用するドライバ/レシーバ IC によって決まります。
◆ 初期のドライバ/レシーバ IC が持っている実力の例を、図.26 に示します(IC による差が、かなりあります)。
◆ 図には、短距離/高速の部分が入っていませんが、距離が 1m 以内であれば、100k ビット/秒程度出ます。
伝送速度が遅ければ長距離が可能で、逆に短距離であれば高速が可能であるという性質は、伝送路の周波数特性に起因するもので、伝送系一般の性質です。RS232C に固有の性質ではありません。
◆ 伝送波形の例を、図.27に示します(伝送速度 : 20k ビット/秒、伝送距離 : 15m と 150m)。
◆ RS232C は非終端です。信号の立ち上がりを遅くすることによって、反射による波形歪の影響を抑えています(ノイズ対策 6.(3))。このことが、省エネに繋がりますが、高速の伝送を不可能にしています。また、伝送路のインピーダンスが高いので、耐ノイズ性は劣ります(ノイズ対策 (3-E-b))。不平衡であることも耐ノイズ性を低くしています(ノイズ対策 4.(2))。
◆ 図.26 に示した伝送距離は、ノイズがない場合という条件付きです。しかし、一般に距離が長いと、大きなノイズが載ってきます。たとえば、離れたところの大地の電位は等しくはありません(ノイズ対策 9.(3-D 図.32)
実際に RS232C で長距離伝送を行っている例は、あまりありません。
◆ RS232C は本来デバイスとモデムとのインターフェースです。したがって、デバイス相互を単に接続しても、互いのやり取りはできません(図.28)。
◆ デバイス相互間のやり取りを行うためのモディファイが必要です。具体的には、幾つかの方式があります。代表的な 4 つの方式を示します(図.29)。
(a) 3 線式(その 1)
やり取りを可能にするためには、先ず、自分の出力を相手が受け取ることが必要です。コネクタを細工することは実用性がありませんから、データ線をクロスさせます。
最も単純には、データ線を介してデータの授受ができれば、それで十分です。制御信号線のやり取りは行いません。制御のためのやり取りが必要なときは、データ線を利用して、制御情報をやり取りします。
(b) 3 線式(その 2)
データ線はクロスさせます。制御線は、自分が出したものを自分が受けます。擬似的に、相手とやり取りしているのと、同じやり取りを行うことができます。
本当に相手とやり取りしているのではありませんから、実用上の意味はありません。しかし、相手と制御信号のやり取りをするソフトウェアを、そのまま利用することができます。
(c) 7 線式(その 1)
データ線はクロスさせます。制御線も、対応する信号線をクロスさせて接続します。RS232C と同じ意味でのやり取りは不可能ですが、やり取りする信号の種類を最大に活用することができます。各システム毎に、制御の意味を定義して使用します。
(d) 7 線式(その 2)
データ線はクロスさせます。RS232C の制御信号の中で、最も汎用性と必要性が高いのは、送信要求(RS)に対する送信許可(CS)のやり取りです。この方式では、RS/CS のやり取りを行います。
送信要求を発行する側が決まっているシステムでは、発行側が、送信要求を出します。両者が対等の場合にも、送信要求が発生した側から、送信要求を出します。
要求側は、RS を発行します。相手側は、その RS 信号を、DR によって受け取ります。そして、ER から要求側の CS に対して送信許可を出します。