◆ データ伝送では、1 対 1 のやり取りだけでなく、ネットワークを
組んだ、ネットワーク伝送 が使用されています。
ネットワークとは、網状のことですが、1 本の伝送路で複数の
伝送を行っているものも、ネットワーク伝送に含めます。
ネットワーク伝送は、多数のものが、そのネットワークに参加
しますが、通常は、1 対 1 の伝送の集まりです。この点が、
同時に多数の相手に同じデータを送る、放送 と異なります。
◆ ネットワーク伝送には、特定の固定された相手とのみ通信を行う、
単純な1 対 1 の通信の集まりと、同時には 1 つの相手ですが、
多数の相手と切り換えて接続できる、交換 機能を持つもの、
とがあります (図.1)。
◆ ただし最近は、データ伝送でも、本格的な放送機能を持つものが 出てきました。通信と放送は、法律上、別扱いですが、 この垣根を取り外す必要が生じています。なお、この講座には、 放送は含みません。
◆ ネットワーク伝送は、いろいろな立場から分類できます。ネットワーク の形から分類すると、図.2 のようになります。なお、 ネットワークの形態のことをトポロジ といいます。
◆ 図中の□は伝送装置です。○は伝送利用するユーザーの装置です。
図の、バス形やループ形は、ユーザーの装置が伝送装置を
内蔵している例です。ネットワーク上の伝送装置のことを、
「ノード 」と呼んでいます。
伝送を行うユーザー側の装置を、データ端末 といいます。
しかし、この言葉は、最近はあまり使われません。そこで、
この講座では、「デバイス 」と呼ぶことにします。
スター は通常トリーに含めて、バス 、
ループ 、トリー の 3 つに分類します。
◆ ネットワークの形態は、トポロジ(物理的な形態)のほかに、
論理上の形態を考える必要がある場合があります。これについては、
具体例が出てきたときに説明します。
◆ 複雑なネットワークでは、複数のネットワークが集まって一つの
システムを構成しています。これを、インターネットワーク
といいます
。
単にネットワークと呼んで、とくに区別しないことも多いのですが、
この講座では、区別して表します。
なお、ネットワークとインターネットワークの両方を含むときで、
とくに両方を含むことを明示する必要がないときは、この講座でも、
ネットワークと呼びます。
◆ 典型的なインターネットワークのトポロジに、2 種類あります。
図.3 は、最も一般的な形で、とくに
ブロードに多く見られる形です。トリー形の変形と考えることが
できます。
◆ 幹線から支線が枝分かれする方式です。大規模なシステムでは、
支線が複数段になります。図は、2段階の例です。最近では、
大規模であっても段数は少なくなる傾向にあります。
これは、個々のネットワークの長さ、伝送容量が大きくなっているので、
少ないネットワークで大規模なシステムを構成できるからです。
また、幹線が単一ではなく、複雑なネットワークを作っている場合
もあり、色々な変形があります。
◆ 図.4は、LAN で多く見られる形です。
◆ ネットワークとネットワークとを結ぶ装置を、 ゲートウェイ (図の G)といいます。図の H は、 インターネットワークを利用するデバイスです。
◆ ネットワーク伝送は、また、ブロードとローカルとに分けられます。
ローカル は、企業の事業所(オフィス、工場)やビル
などに設置されるネットワークです。
ローカルのネットワークの代表的なものが、LAN
(ローカルエリアネットワーク)です。LAN は、比較的高度な機能
を持つローカルの代表的な機種です。ローカルには、LAN のほかにも
色々な機種が使用されています。
大規模な LAN は、インターネットワーク
を構成します。
[注] LAN の呼び名は、本文に示したように、通常は、すべてのローカルでは無く、ローカル中の特定の機種に対して使用されています。これに対して、次に述べる WAN は、ブロードと同じ意味です。
◆ ブロード は WAN (ワイドエリアネットワーク)とも呼ばれ、公道をまたがる 伝送です(図.5)。
◆ 図で (A) と (B) 間はブロードです。(C) と (D) もブロードです。
(E)、(F)間はローカルです。
これから分かるように、至近距離であっても、公道を通っていれば
ブロードです。大きな工場構内で、10km 引いてもローカルです。
ブロードの伝送は、公道を跨りますから、誰もが自由に線を
引くことはできません。ユーザーは、認可された通信事業者が
敷設し提供する回線を利用することになります。これが、ブロードと
ローカルの、最も大きな相違点です。
◆ 通信事業者には、第 1 種と、第 2 種とがあります。
第 1 種通信事業者 は、自ら通信設備を所有する事業者です。
これに対して第 2 種通信事業 者は、第 1 種通信事業者から
設備を借用して事業を行う業者です。
ただし、一般のユーザーにとっては、第 1 種、第 2 種の違いは、あまり問題になりません。また、通信の自由化に伴い、1 種/ 2 種の区分は無くなる方向にあります。
ブロードは、従来は、電話回線 が主体でしたが、最近では、
データ回線 (ディジタル回線)が多くなっています。
ブロードの多くは、幹線/支線方式のインターネットワークを
構成しています。
◆ 物理的に見て一つのインターネットワークは、一般に多くの目的用途に
共用されています。
ブロードのインターネットワークは、複雑に入り組んでいて、
色々な分け方ができます。事業者別に分けることもできますし、
目的用途によって分けることもできます。
ある一つのネットワークが、複数のインターネットワークの
構成要素になっていることも多いのです(図.6)。
◆ たとえば、電話回線は、電話網という大規模なインターネットワークを
構成しています。その電話網の末端部分の、電話局から各家庭、
事業所までの回線は、代表的なディジタル・インターネットワーク
である、インターネットを始めとする、各種のインターネットワークに
利用されています。
◆ ブロードとローカルは、歴史的に見ても、技術的に見ても、
それぞれ別のシステムとして発展してきました。しかし最近では、
LANの技術が、ブロードにも応用されるようになってきました。
なお、この講座では、ローカルを主なテーマとして解説します。
ただし、基礎的な技術はブロードにも、ローカルにも共通です。