◆ RS232C は、ほとんど全てのパソコンに実装され、最も汎用性の高いインターフェースです。しかし、伝送速度や伝送距離の制約が大きく、またノイズに対してあまり強くないという欠点があります(3.2.(2-C-a))。
これに対して、RS422 /RS485 は、平衡でありインピーダンスも低く、長距離/高速の伝送が可能な、汎用インターフェースです。しかも、単一 5V 電源で動作します(単一 3.3V 電源で動作するものもあります)。なお、RS422/RS485 は、電気的仕様のみの規格です。したがって、各種の伝送システムの電気的仕様として採用されています(たとえば、LAN のアークネット)。
◆ RS422 は、1 対 1 伝送用の規格です。この仕様を強化して、バスに使用できるようにしたものが、RS485 です。
◆ RS422 の回路を示します(図.30)
Rt : ケーブルの終端抵抗(使用/ 不使用は選択可能)
Vg : 接地電位差
A、B : 信号源側インターフェース点
A'、B' : 負荷側インターフェース点
C : 信号源側接地回路
C' : 負荷側接地回路
レシーバは、シュミットトリガです。
◆ RS422 は、ドライバは伝送路の端に 1 つしか設置できませんが、レシーバは最大 10 個まで置くことができます(図.31)。終端抵抗の選択可能とは、バスの途中に使用したレシーバでは、終端抵抗を使用しないということです。ドライバの反対側の端に設けたレシーバは、終端しなければなりません。
◆ 平衡回路ですから、信号線は、グラウンド線とは別に 2 本引きます。信号線も平衡であることが望ましく、ツイストペア線は平衡です。信号レベルも対等です(図.32)。
◆ 伝送速度と伝送距離との関係を図.33 に示します。RS232C の図.26は単に実力を示したものですが、この図は規格に示されいる値です。
◆ 距離が短ければ、10Mビット/秒まで可能です。また、約 90kビット/秒以下であれば、約 1200m まで延長できます。
RS422 は平衡ですから、ノイズには強いことが特徴です。レシーバは、シュミットトリガになっており、その耐コモンモード電圧も、機種によって異なりますが、±7〜±12V と大きな値です。ただし、当然ノイズがこれをオーバーすれば、誤動作します。
◆ 一般に、距離が長いと、コモンモードノイズは、これをオーバーすることが多いのです(ノイズ対策 9.図.32)。距離が短くても、大きなコモンモードノイズが存在する場所もあります。これに対応するためには、さらに絶縁と呼ばれる手段を附け加えることが必要です。
◆ 伝送波形を図.34 に示します。実験回路ですから、コモンモードノイズはゼロです。
[図.34] 伝送波形
(a) 回 路
◆ 図の(e)は、規格を大幅にオーバーしていますから、当然使用できません。
◆ RS485 は、RS422 をバス用にレベルアップした規格です(図.35)。
◆ ドライバをバスの途中に置くことができます。図から分かるように、ドライバをバスの途中に置くと、電流は両方向に流れます。したがって、2 倍の電流を流す能力が必要です。
RS422 と RS485 の比較を表.6 に示します。
_ | RS422 | RS485 |
ドライバ出力電流 | 40mA | 60mA |
ドライバ製品例 | SN75158 | SN75172 |
レシーバ入力抵抗(最小) | 4kΩ | 12kΩ |
レシーバ接続数 | 10 | 32 |
レシーバ製品例 | SN75175 | SN75173 |
◆ RS485 のドライバ出力電流は、RS422 の 2 倍はありませんが、これは RS422 の規格値に余裕があるからです。RS485のレシーバは、より多数を接続できるようにするために、入力抵抗の値が大きくなっています。
RS485 用の IC は、RS422 の場所に使用することができます。すなわち大は小を兼ねます。
◆ ドライバ/レシーバを組にしたパッケージ、トランシーバ IC もあります。また、表は規格値であり、実際の IC は、レシーバの入力抵抗を更に大きくして、接続数を多くした製品があります。たとえば、LTC1487 は、1 組のトランシーバを内蔵した、高入力抵抗の IC で、最大 256 個のトランシーバを接続することができます。
◆ 伝送波形を図.36、図.37 に示します。
[図.36] RS485 の伝送波形(その 1)
(a) 回 路
(b) 波形(1200m)
[図.37] RS485 の伝送波形(その 2)
(a) 回 路
(1) フェールセーフとは
★ インターフェース用 IC では、レシーバはシュミットトリガになっています。シュミットトリガでは、その入力がヒステリシスの中間にあると、出力のハイ/ローは不定です。入力が、ヒステリシス電圧範囲に入る直前のハイ/ローを保持します。
★ RS232C や RS485/422 では、レシーバの中点がゼロです。したがって、ドライバの電源が落ちたりして、レシーバの入力がゼロになったとき、レシーバ出力のハイ/ローが不定になります。
★ システムによっては、安全上の問題から、このように不定であることが好ましくなく、そのシステムによって決まるハイまたはローの、どちらか定まった値になって欲しいことがあります。出力が望ましい値に決まるようにすることをフェールセーフ と呼んでいます。
(2) フェールセーフ回路内蔵の IC
★ IC 自体でフェールセーフを実現できるものがあります。たとえば、RS232C の SN75189A では、外部から加える電圧によって、スレッショルドレベルを変えることができます。
★ 通常は図に示したように、単に開放します。このときは、スレッショルドレベルはプラスです。もしマイナス側にスレッショルドレベルを設けたいときは、図の Vc のところに、必要なスレッショルドレベルに応じた電圧を掛けます。
★ なお、RE232C のレシーバ入力は、ハイインピーダンスです。インターフェースケーブルは接続されれいるが、相手のドライバ側は接続されていないというとき、ケーブルがアンテナとなって大きなノイズを拾い、誤動作することがあります。
★ このような場合には、レシーバの所に、プルアップ抵抗を入れます。このプルアップ抵抗によって、インピーダンスを下げ、ノイズを低減します。また、このプルアップ抵抗は、フェールセーフ回路の役割を持たせることもできます。
★ RS485 にもフェールセーフ回路を内蔵した製品があります(たとえば、先に示した LTC1487)。
(3) フェールセーフ回路の外付け
★ RS485 における、フェールセーフ回路外付け回路を示します。
★ この回路は、入力ゼロ、オープンの両方に有効です。RS422/485レシーバのヒステリシス幅は ±200mV です。差動電圧(下図参照)を 200mV 以上にすれば、フェールセーフ動作になります。なお、この回路を附加したことによって、実効のレシーバ入力インピーダンスの値が変化します。したがって、レシーバの接続可能個数が変わります。