ノイズ対策技術

15. アナログ回路の基礎

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15.(4) プリント基板

15.(4-A) 概   要

◆ まず前提条件として、アナログ回路以外と、アナログ回路との分離が必要です(13.(2))。
その上で、信号レベルや周波数帯域が異なる回路を、ブロック分けします。基板上の配置上も、ブロック毎にまとめます。
電源とグラウンドも、ブロック分けにしたがって、それぞれに、供給します。また、各ブロック内の配線も、1 点アースや、ベタアースなどを、使い分けます(11.(2)参照)。
最近では、アナログ回路も単電源を使用することが多くなってきましたが、プラスマイナスの 2 電源を使用することがあります。2 電源のときのパスコンを、図.17に示します。

[図.17] 2電源のパスコン

2電源のパスコン

◆ パスコンを2段階にするなどの注意は、単電源と同じですから省略します(11.(2-B))。
信号線に関しては、一般論として、ディジタル信号は、アナログ信号に対する加害者です。
また、アナログ信号は、信号レベル、要求精度、周波数帯域がさまざまで、ノイズに対する加害性、被害性が大きく異なります。強い信号と弱い信号の分離には、とくに注意する必要があります。分離の原則は、12.(3)と同じです。

15.(4-B) シールド

◆ とくに、微小レベル信号や高精度信号については、十分に注意する必要があります。配線をできるだけ短くすること、とくにハイインピーダンスの信号は短くしなければなりません(図.18)。

[図.18] オペアンプ回路のハイインピーダンス部分

反転増幅器 非反転増幅器

◆ 非反転増幅器の場合、信号源インピーダンスがローインピーダンスであるなら、信号線はローインピーダンスです。
しかし、非反転増幅器を使用しなければならない理由の一つに、信号源がハイインピーダンスであることがあります(15.(3-B))。信号源インピーダンスが高いときに、誤差を少なくするためには、負荷インピーダンスを相対的に大きくしなければなりません。
このような配線は、長さを最小にする必要があります。
また、このような場所は、シールドが有効です。プリントパターンのシールドは、対象パターンの周りを、グラウンドパターンで囲みます。

15.(4-C) ガ ー ド

◆ 一般にノイズは、周波数が高いほど多い傾向があります。ノイズ対策に、ローパスフィルタが有効なのは、この理由です。しかし、微小レベルや高精度で、かつハイインピーダンスの信号では、直流ノイズが問題になることがあります。
プリント基板の絶縁抵抗は極めて高く、通常、基板を通しての漏れ電流が問題になることはありません。しかし、基板の表面抵抗は意外に低く、表面の漏れ電流を無視できないことがあります(図.19)。

[図.19] 基板表面の漏れ電流

基板表面の漏れ電流

◆ 表面の漏れ電流を防ぐには、基板表面をコーティングします。しっかりしたコーティングは、結露などによる絶縁低下にも有効です。しかしコーティングだけでは、必ずしも十分な漏れ電流対策ではありません。
基板表面の漏れ電流を防ぐ一つの有効な方法が、ガードです。対象となる信号パターンの周囲を別のパターンで囲みます。この別のパターンをグラウンドに落とせばシールドです。グラウンドに落とす代わりに、信号と同電位にするのがガード です。
◆ シールドの目的は、高周波ノイズを防ぐことですが、ガードは直流電流を阻止することにあります。電位が完全に等しければ、仮に、その間の抵抗がゼロであっても、電流は流れません。図.20は、反転増幅器におけるガードです。反転増幅器の入力信号レベルはグラウンドです。したがって、結果としてシールドと全く同じです。

[図.20] 反転増幅器におけるガード

回路 パターン

◆ 図.21は、バッファにおけるガードです。バッファは、入出力の電圧が等しいので、ガードには、バッファの出力を使用することができます。

[図.21] バッファにおけるガード

回路 パターン

◆ 図.22は、非反転増幅器におけるガードです。非反転増幅器ではガード電圧を作る必要があります。バッファを使用して作ります。

[図.22] 非反転増幅器におけるガード

非反転増幅器におけるガード

◆ ガードよりもさらに優れた方式として、空中配線があります。空気は、ほぼ最良の絶縁物です。空中配線の中継点を固定するためには、テフロン端子台 を使用します(図.23)。テフロンは、絶縁体として優れているだけでなく、表面抵抗も大きいという特徴があります。しかし、効果を一層高くするために、ガードを併用します。

[図.23] テフロン端子台

テフロン端子台


[コラム.1] ガードのいろいろ

★ ガードは、監視、保護するもの、または、人を意味します。しかし、別の単語である、架道橋を連想する方が、多いでしょう。架道橋は、ガーダーが詰まった言葉です。下図左はガード下の駅、右はガード下の飲食街です。

ガード下の駅       ガード下の飲食街

★ 監視、保護の方のガードも、監視、保護の対象によって、いろいろなガードがあります。下図左は、眼を守るアイガード、右は皮膚を守るスキンガードです。雷ガードもあります。これは、サージアブゾーバを内蔵した テーブルタップです。

アイガード       スキンガード

★ さて、電気のシールドですが、本文で述べたように、普通のシールド(下図左)とガード(下図右)とがあります。ガードは、アクティブシールドとも言います。

シールドとガード

★ 下図は、ガード回路の具体例です。左の回路に、ガードと入力保護回路を付け加えたものが、右の回路です。

元の回路   ガードと入力保護回路を付け加えた回路

★ 下図は、ガードパターンの例です。ただし、ガードの対象が、個々の配線パターンではなく、一つの回路ブロックを、一括してガードしている例です。

ガードパターンの例




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