電気と電子のお話

8. インターフェース

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8.2. 各種のインターフェース

8.2.(3) ネットワーク

8.2.(3-E) オープンシステム

8.2.(3-E-d) ネットワーク層

◆  OSIネットワーク層 は、OSI 階層の、下から 3 番目の階層のプロトコルです。
ネットワーク層は、インターネットワークにおいて、2 つのネットワーク(セグメント)間の、通信を行うためのルートを選定し、フレームが、その選定した経路を辿って、相手に到着するように制御を行います。この制御を行うために、ネットワークにアドレスが付いていることが、必要です。
◆  OSI のネットワーク層は、TCP/IPインターネット層に対応します(図 8.2-84)。図で、ルータ というのは、ゲートウェイのことです。

[図 8.2-84] TCP/IP のインターネット層

TCP/IP のインターネット層

◆  TCP/IP のインターネット層アドレスを、IP アドレス といい、この IP アドレスが、現在、インターネットのアドレスとして、使用されています。
◆  IP アドレスは、世界的に、ユニークに決めれている必要があります。現在使われている インターネットのプロトコルを、IPv4 といい、この、IPv4 のアドレス体系が、現在、使われています。
IPv4 のアドレスは、32 ビットなので、将来不足することが、予想され、128 ビットの IPv6 が、開発されました。しかし、IPv4 は、アドレス不足を補うアドレス方式(次に示す、プライベートアドレス)が、考案されたため、アドレス不足の心配は、無くなりました。ただ、IPv6 には、IPv4 には無い使い方がありますから、今後も、IPv4 と IPv6 とは、共存の関係にあります。
◆  ここでは、現在、主に使われている、IPv4 について、解説します。
当初の IP アドレスを、図 8.2-85 に示します。IP アドレスは、32 ビットで、世界的に、ユニークな、アドレスです。32 ビットというと、1010 のオーダーです。十分、多いように思われますが、連番で全てを使用する、わけには、行きません。32 ビットでは、足りなくなって、しまいました。

[図 8.2-85] 当初の IP アドレス

IP アドレス

◆  現在では、アドレスは、グローバルアドレスと、プライベートアドレスという、2 つのアドレスを使用しています。グローバルアドレス は、インターネット上で使用するアドレスです(図 8.2-86)。図に示すように、3 つのクラス に分かれています。現在では、割当てて、もらえるのは、クラス C だけです。しかし、次に示す、プラーベートアドレスが、ありますから、不都合は、ありません。

[図 8.2-86] グローバルアドレス

グローバルアドレス

◆  プライベートアドレス は、企業、団体などが、その組織内部で使用する、アドレスです。
プラーベートアドレスがありますから、グローバルアドレスは、企業、団体などが、それぞれ、1 つ持てば、十分な、はずです。
◆  グローバルアドレスと、プラーベートアドレスとは、別の、アドレス体系です。したがって、企業、団体などの、個別のネットワークと、インターネットとの間には、アドレスの相互変換を行うための、ゲートウェイが必要です。
◆  グローバルアドレスは、グローバルアドレスを管理する団体(世界各国にあり、日本では JPNIC )によって割り当てられます。
私たちが、ホームページを開設する場合にも、グローバルアドレスが必要です。この場合、私たちが、直接 JPNIC に申請する必要は、ありません。グローバルアドレスの枠を、プロバイダが、持っていますから、プロバイダが、割り当ててくれます。
◆  原理的には、プライベートアドレスは、全く自由なはずです。しかし、何らかの理由で、プライベートアドレスが、インターネット上に流れ出す事態を考慮して、プライベートアドレスも、グローバルアドレスと重複しないように、アドレスを割り付けてあります(図 8.2-87)。万一、プライベートアドレスが、インターネット上に、流れ出したとしても、グローバルアドレスに影響を及ぼすことは、ありません。

[図 8.2-87] プラーベートアドレス

プラーベートアドレス

◆  私たちが、家庭で、LAN を組むときも、この、決められた、プラーベートアドレスを使用する必要が、あります。通常、家庭内 LAN が、256 を超えることは無いでしょうから、クラス C を使用します。
◆  上記のアドレスは、見やすいように、10 進数で表記し、3 桁ごとに、コンまで区切ってあります。しかし、数字自体が、決して、見やすいものでは、ありません。
この、IP アドレスは、インターネット上の、住所ですから、頻繁に利用します。IP アドレスの代わりに、もっと分かりやすい、住所に相当するアドレスがあります。これを、ドメイン (ドメイン名 )といいます。私たちは、通常、IP アドレスを使用しないで、分かりやすい、ドメインの方を、利用します。
◆  しかし、ドメインで、直接インターネットに、アクセスすることは、できません。ドメインを、IP アドレスに翻訳する、必要があります。この翻訳のシステムを、DNS と呼んでいます。
◆  ドメインも、IP アドレスと同様に、世界的にユニークでなければ、なりません。したがって、JPNIC に申請して、割り当ててもらいます。申請順に受け付けられますから、早いもの勝ちです。
◆  ホームページ(ウェブ)のアドレスは、ドメインですから、ホームページのアドレスを例にとって、ドメインの説明をします。図 8.2-88 は、ある架空の会社のホームページのアドレスです。

[図 8.2-88] ホームページのアドレス

ホームページのアドレス

◆  最初の、http は、ドメインではありません。プロトコルが、http というプロトコルであることを、示します。:// の次からが、ドメインです。住所は、英語式ですから、日本式の住所とは、順序が逆です。
◆  ドメインの、一番右の jp は、国名で、jp は、日本を表します。
その左の、co は、種別を表し、co は、種別が会社であることを、示します。種別の種類が、図 8.2-89 です。

[図 8.2-89] 種別(日本)

 go    政府や自治体
co  営利の法人
or  非営利の法人
gr  法人でない非営利団体
ne  ネットワーク関連事業者
ac  大学などの教育機関
ed  小学校、中学校など未成年対象の教育機関  


◆  種別の左が、割当られた、ドメインです。この例では、社名です。
その左の WWW は、ドメイン内の、ホスト名 です。ホスト名とは、ドメイン内のページの名前です。ホームページの場合には、一般に、ホスト名として、WWW が多く使用されていますが、とくに決まっているわけではありません。WWW 以外のものも、見かけます。
◆  ドメインの表記法は、一般には、上の通りですが、アメリカだけは、国名が無く、図 8.2-90 のように、なっています。最初、アメリカで始められ、後に世界に広がったために、ドメインが、このように、なったのです。

[図 8.2-90] 種別(アメリカ)

 gov    政府組織など
edu  大学など教育機関
mil  軍事関係
com  個人、法人とも特別な条件無く取得可能
org
net
info
biz 何らかの商業活動を行っている、または活動を予定している組織

◆  一般に、com は、会社、org はその他の組織が使っていますが、そのように決められているわけでは、ありません。com は、国を問わず、誰でも、登録できますから、日本でも、com ドメインが、かなり、使われています。
◆ 日本では、図 8.2-89 以外の、ドメインも使用できます。図 8.2-89 に示した、ドメインを、属性形 jp ドメイン といいます。このほかに、地域形 jp ドメイン と、汎用 jp ドメイン が、あります。詳細は省略しますが、宮崎技術研究所のドメインは、汎用 jp ドメインです。
◆  ドメインは、人間には、分かりやすいですが、実際にインターネットに、アクセスするためには、IP アドレスに、翻訳する必要がります。この翻訳を担当するのが、DNS と呼ばれるものです。
◆  TCP/IP のインターネット層の役割は、相手に辿りつくために、最適な経路を選定し、その経路を辿る制御を、行うことです。この経路の選定を、ルーティング といいます。ルーティングの仕事は、多くは、ルータが担っています(図 8.2-91)。

[図 8.2-91] ルータ

ルータ

◆  ルーティングのプロトコルは、TCP/IP では、限定していません。したがって、いろいろな、方式があります。たとえば、各ゲートウェイが、ルーティングテーブル を持っている方式があります。
◆  ところで、ネットワークは、固定では、ありません。変更があります。仮に、固定であっても、故障などによって、経路の変更を余儀なくされる場合があります。
ネットワークの、隣接する部分に、変化があったことを検出したゲートウェイは、ルーティングテーブルの変更を、次々に伝えます(図 8.2-92)。

[図 8.2-92] 変更を通知する

変更を通知する

◆  さて、2 点間で、互いにデータのやり取りを行う場合に、2 つのやり方が、あります。1 つは、予め、接続処理を行ってから、データのやり取りを行い、やり取りが終わったら、切断処理を行う方式です。この方式を、コネクション タイプといいます。もう 1 つは、接続処理、切断処理無しに、いきなり、データを送る方式です。これをコネクションレス タイプ(非コネクション タイプ、)といいます(図 8.2-93)。

[図 8.2-93] コネクションとコネクションレス

コネクションとコネクションレス

OSI のネットワーク層では、両方可能ですが、TCP/IP のインターネット層のプロトコルは、コネクションレスです。
◆  コネクションレスタイプでは、相手にフレームが確実に届いたか、どうかが、分かりません。この欠点を補うために、TCP/IP では、ICMP というプロトコルが用意されています。ICMP は、IP を補足するプロトコルで、おもに、IP における、異常処理のプロトコルです。
形式的には、IP のデータの形で記述されます。したがって、階層的には、IP の上位層のプロトコルです。ICMP は、IP の一部として、取り扱われています。この辺の感じを示すために、図 8.2-77 の下側の図のように、ICMP を表現してあります。
◆  きれいな体系という点から見ると、ICMP は、異物です。ICMP は、IP が、コネクションレスであることから生じた欠点を、補うために、作られたものです。TCP/IP は、使いやすいように、改良を重ねてきた、プロトコルです。
◆  IP は、多重化されます。IP の上位のプロトコル、すなわちトランスポート層には、次に示すように、TCPUDP とがあります。この、TCP、UDP と、前記の ICMP とを、多重化することが、できます(図 8.2-94)。

[図 8.2-94] IP の多重化

IP の多重化



[コラム 8.2-12] オープン

★ オープン とは、要するに開いている、と言うことですが、具体的には、いろいろな意味があります。ざっと並べてみても、下記のとおりです。
★ 形容詞 : (戸・窓が)あいている、(店が)営業している、(箱の)ふたのない、(時間が)あいている、(場所が)公開の、見通しのよい、すきまのある、公然の、周知の、率直な、気前のよい、(情に)動かされやすい、(漁猟が)解禁の、(町が)法律上の規制を受けていない、未決定の、(小切手が)持参人払いの、(気温が)温暖な、(オルガンの)先端が開いている

鮎釣り

★ 動詞 : (戸を)あける、(土地を)開発する、(道を)切り開く、障害物を取り除く、暴露する、(秘密を)漏す、(隊列を)散開させる、(店を)開く、公開する、(会議の)開会を宣言する、冒頭陳述をする、

土地を開発する       広々とした水面(霞が浦)

★ 名詞 : 開けた所、あき地、野外、露天、広々とした水面、隠しだてしないこと、周知、(就職などの)機会、勤め口、開き口、孔
★ OSI 参照モデルの、OSI は、オープンシステムインターコネクションの略です。すなわち、OSI は、オープンなプロトコルの、体系です。
★ 3 文字略語は、一般に、同じ文字で、多くの種類の略語になっていますが、OSI は、非常に少ないようです。
OSI の、少ない例の、もう一つを、紹介します。コンピュータのプログラムに関する、お話しです。
★ コンピュータが、直接実行するプログラムのことを、バイナリコード (機械語)といいます。しかし、このバイナリコードは、コンピュータ用の、言語 です。人間が、喋ったり、読み書きしている言語とは、大きく、異なります。このような、バイナリコードで、コンピュータのプログラムを、人手で作ることは、非常に、面倒な作業です。
★ そこで、人間が、理解しやすく、作りやすい形の、ソースコード と呼ばれるプログラムを、まず、人間が作成します。そのソースコードを、コンパイラという、翻訳プログラムによって、バイナリコードに、変換します。そして、この、バイナリコードで、コンピュータの、プログラムを実行します。

コンパイラで変換する

★ このように、コンピュータプログラムには、ソースコードと、バイナリコードとが、あります。バイナリコードは、自由な読み書きができませんから、プログラムを、正確に理解したり、改造したりすることは、できません。プログラムを、正確に理解したり、改造したりするためには、ソースコードで、読み書きすることが、必要です。
ユーザに配布したり、販売したり、しているプログラムは、通常は、バイナリコードです。
★ コンピュータプログラムの中には、フリーソフト と呼ばれているものが、あります。フリーソフトは、一般に、無料のプログラムと解されていますが、単に無料であるだけでなく、プログラムのコピー、配布と、改造が自由であることを、意味します。
フリーソフトであるためには、ソースコードが提供されることが必要です。
★ さて、オープンソースという、言葉があります。オープンソース は、ソースコードを公開することです。ソースコードを、公開することによって、有用な技術を共有し、世界中の誰もが、自由にソフトウェアの開発に参加することができます。その方が、素晴らしいソフトウェアが、生まれるはずだ、という思想に基づいています。
★ オープンソースの、正確な定義は、省略しますが、この、オープンソースを、推進する団体が、OSI (オープンシステムイニシャチティブ )です。



[コラム 8.2-13] ホ ス ト

★ ホストは、宴会などで、客の接待をする男の主人役のことで、ホステスに対する、言葉です。テレビ、ラジオのワイド番組などで、進行係をつとめる男性や、社交場などに勤める、男性の接客係も、ホストです。

宴会場

★ ホストコンピュータ は、略して、単に、ホスト と呼ばれています。ホストは、通常は、ネットワーク環境における、クライアント/サーバ形の、サーバ側のコンピュータを、意味します。しかし、TCP/IP では、ネットワークに接続するコンピュータを、すべてホストと、呼んでいます。ホスト名の、ホストも、後者の意味です。
★ コンピュータの周辺機器である、マウス キーボード を、コンピュータに接続するための、インターフェースに、USB インターフェースがあります。この、USB も、コンピュータ側を、ホストと、呼んでいます。USB も、周辺機器側を、クライアントといいます。
★ ホスティングサービスと呼ばれる、サービスがあります。この、ホスティングサービス は、ウェブ用の、ウェブサーバを、レンタルサーバ として、レンタル(賃貸し)する、サービスです。
★ ウェブは、何時でも、何処でも、誰でもが、見られることが、望ましいわけです。しかし、わたくし達が、自分で、年中無休のウェブサーバを持ち、それを運営するのは、大変なことです。
ホスティングサービスを利用することによって、この負担から、開放されます。筆者のホームページ(この講座など)も、ホスティングサービスを、利用しています。
★ バーチャルホスト という言葉も、あります。バーチャルホストとは、1 台のサーバ上で、複数のウェブを運用することです。
リモートホスト という言葉も、あります。リモートホストは、IP アドレスを、人間に分かりやすいように、文字列で表すことです。したがって、リモートホストとは、DNS のことです。
★ ここで、DNS のしくみを、紹介しておきましょう。
ドメインは、トリー構造になっており、ドメインツリー と呼ばれています(下図)。

ドメインツリー

◆  DNSを使って、あるドメイン名から、それに対応する、IPアドレスを引き出すことを、名前解決 といいます。名前解決の流れは、次のように、なります。図の、ネームサーバ は、その配下にあるドメイン名と、IPアドレスとの、対応関係を管理するサーバです。ネームサーバは、ドメインツリーの、各階層毎に、あります。
自組織に、ネームサーバを、持っていないときは、契約しているプロバイダの、ネームサーバを、利用しています。このときは、下図の、自組織にあるネームサーバを、プロバイダのネームサーバと、読み替えてください。

名前解決の流れ


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