電気と電子のお話

8. インターフェース

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8.2. 各種のインターフェース

8.2.(3) ネットワーク

8.2.(3-E) オープンシステム

8.2.(3-E-a) オープンシステムとは

◆  OSI 参照モデルのお話が、でましたが、OSI 参照モデルの OSI とは、オープンシステムインターコネクション の略です。
◆  ここは、その、オープンシステム のお話です。オープンシステムは、オープンな性質を持った、プロトコルの体系です。オープンシステムは、広義には、オープンな性質を持つプロトコルの体系 全てを言いますが、狭義には、OSI 参照モデルのことです。
ここの、お話は、広義のオープンシステムの、お話です。オープンという言葉の、さらに、一般的な、お話は、コラム 8.2-12 を参照してください。
◆  オープンな性質と、一口にいっても、いろいろな意味での、オープンがあります(図 8.2-75)。図の(a)が、オープンなシステムであるとします。オープンなシステムであれば、(b)(c)(d) の性質を満足する必要があります。

[図 8.2-75] いろいろなオープン

いろいろなオープン

_いろいろなオープン

◆  図で、A、B、C は、それぞれ、A、B、C というユーザを表します。イ、ロ、ハ は、伝送媒体 の種類です。
◆  真に、オープンなプロトコル は、下記の、 3 つを、全て満足する必要が、あります。
     (1) : 伝送媒体の種類が異なっていても、ユーザは、互いに通信可能である。
     (2) : そのシステムに属しているユーザは、誰であっても、互いに通信できる。
     (3) : ネットワークが複雑で、多数の伝送媒体を経由する場合でも、互いに通信可能である。
◆  この、オープンシステムは、プロトコルを、うまく、階層化することによって、実現することが、できます。プロトコルを、うまく階層化すると、うまく階層化されたシステムは、次のような、性質を持たせることが、できます。
◆  ある階層のプロトコルを、他の階層に、影響を与えないで、取り換えることが、できます(図 8.2-76)。この性質は、単に階層化されている、ということ、だけでなく、各階層が、互いに独立である、ことによって、実現します。

[図 8.2-76] プロトコルを取り換えることができる

プロトコルを取り換えることができる

◆  たとえば、電話回線は、電話網にも、ADSL にも、使用することが、できます。これは、電話回線という、物理層のプロトコルを、データリンク層である電話網と、ADSL という、2 つのプロトコルが、使用できる、ということです。
画像データは、電話網を介して、FAX で送ることが、できますが、電子メールの、添付資料として、インターネットで、送ることも、できます。
◆ このように、階層プロトコルは、自由度が高い、システムを、構成します。
以下、OSI の各階層について、説明します。
OSI は、きれいに体系化されていますから、プロトコルの体系を語るときは、OSI と対比させて、説明することが、多いのです。
しかし、先に述べたように、実際に使われているのは、多くは、TCP/IP です。
◆  したがって、以下の解説は、TCP/IP と対比しながら、説明します。TCP/IP の階層と、OSI 参照モデルとの比較、とを、図 8.2-77に示します。

[図 8.2-77] TCP/IP の階層とその OSI との比較

TCP/IP の階層


OSI との比較


8.2.(3-E-b) フィジカル層

◆  OSIフィジカル層 は、物理層 とも呼ばれ、OSI 階層の最下層のプロトコルです。
TCP/IP には、このフィジカル層と、1 対 1 で対応する層は、ありません。TCP/IP の、ネットワークインターフェース層は、OSI の、このフィジカル層と、フィジカル層の 1 つ上の、データリンク層の、2 つの階層に、対応します(図 8.2-74)。
◆  OSI のフィジカル層は、ネットワークの物理的な接続・伝送方式を定めたものです。すなわち、物理的な媒体を使って、ビット列を伝送する機能を提供する。また、物理的媒体にアクセスするための機械的、電気的、機能的および、手続き上の性質を規定します(図 8.2-78)。たとえば、RS232C や、RS485 の規定は、このフィジカル層の規定です。

[図 8.2-78] フィジカル層

フィジカル層

◆  この、フィジカル層は、多くが、電線ですが、高速の回線や、幹線では、光ファイバを使用します。
◆  電話の交換機の基本原理は、スイッチを使用して、回線を、スイッチによって接続します。この機能は、フィジカル層です。
ディジタル交換機は、交換機の内部で実行している内容をみると、次に述べる、データリンク層に、該当します。しかし、内部で実行している内容を、無視して、結果としての、機能だけに注目すれば、電話交換機は、フィジカル層です。
◆  TCP/IP の最下層である、ネットワークインターフェース層は、OSI のフィジカル層と、この次に説明するデータリンク層との、2 つの階層に、対応します(図 8.2-74)。そして、このネットワークインターフェース層は、具体的には、イーサーネットです。
◆  実態に、即しているという点では、TCP/IP ですが、体系として、きれいに、分類すると、OSI のように、なります。
◆  以下は、TCP/IP のネットワークインターフェース層のうちで、OSI のフィジカル層に対応する部分の、お話です。
伝送波形を、図 8.2-79 に示します。

[図 8.2-79] イーサーネットの伝送波形

イーサーネットの伝送波形

◆  図に示した波形は、ゼロと 1 との表現が、普通の表現方法とは、異なります(図 8.2-80)。マンチェスタ符号 (バイフェイズ符号 )と呼ばれる符号 で、ゼロと 1 とを表しています。ここで、符号とは、コラム 5.1-2 に示した符号とは、別の意味です。すなわち、符号という言葉は、2 つの意味があります。ここの符号 は、ゼロと 1 とを表現する波形の意味です。コラム 5.1-2 の符号は、文字などを表すビットパターンのことです。

[図 8.2-80] マンチェスタ符号

マンチェスタ符号

◆  図 8.2-79 で、プリアンブルというのが、あります。プリアンブル は、ビット同期を取るための同期パターンです。イーサーネットでは、フレームを送信していないときには、信号がありません。したがって、フレームの送信に先立って、プリアンブルを送り、プリアンブルによって、先ず、ビット同期を取ります。ビット同期が取られてから、データを、送り始めます。

8.2.(3-E-c) データリンク層

◆  OSIデータリンク層 は、OSI 階層の、下から 2 番目の階層のプロトコルです。上位階層のプロトコルを、カプセル化しています(図 8.2-81)。

[図 8.2-81] カプセル化している

カプセル化している

◆  データリンク層は、ネットワークの、合隣る 2 点間での、データやり取りです。合隣る 2 点間とは、同一セグメント内の、2 点間ということです。ここで、セグメント とは、単一のネットワークのことです。バス形であれば、1 つのバス、ループ形であれば、1 つのループが、1 つのセグメントです。
◆  データリンク層のプロトコルの実例は、HDLC です。HDLC では、フレームを構成し、フレーム単位で、データのやり取りを行っています。データリンク層は、HDLC の例のように、通常は、フレーム単位で、ノード間の、やり取りを行います。
◆  また、HDLC の例からも分かるように、データリンク層では、一般に、伝送誤り制御を行っています。データリンク層の役割は、合い隣る 2 点間で、間違い無いデータの、やり取りを行うことですから、伝送誤り制御を、行います。
◆  HDLC の例からも分かるように、データリンク層における、伝送誤り制御では、一般に、フレームの後の部分に、チェックコードを付加します。階層構造のプロトコルでは、一般に、制御情報を、ヘッダとして、フレームの先頭に付加します。
データリンク層のプロトコルは、ハードウエア化されていることが、多いのです。ハードウェアで、伝送誤り制御を行うと、チェックコードは、必然的に、後付けになります。
◆ TCP/IP では、OSI のデータリンク層に対応する内容と、OSI のフィジカル層に対応する内容とが、一体になって、1 つの層、ネットワークインターフェース層に、なっています(図 8.2-82)。

[図 8.2-82] ネットワークインターフェース層

ネットワークインターフェース層

◆  この、ネットワークインターフェース層は、具体的には、イーサーネットです。
イーサーネットのフレームを、図 8.2-83 に示します。

[図 8.2-83] イーサーネットのフレーム

イーサーネットのフレーム

◆  PA : プリアンブル   ハードウェアの、ビット同期を取るための、特定のビットパターンです。
◆  SFD : スタートフレームデリミッタ   フレームの開始を示す、フレーム同期信号です。ビットパターンは、(10101011)で、デリミタ (デリミッタ )と呼ばれています。
◆  DA : デスティネーションアドレス   宛先アドレスで、6 バイトです。
◆  SA : ソースアドレス   送り元アドレスで、6 バイトです。イーサーネットのアドレスは、MAC アドレス とも言い、全世界で、同じアドレスが無いように、決められて、製品出荷時に付加されています。この後に述べるように、TCP/IP には、上位のアドレスがあります。上位のアドレスで、識別されますから、このようなアドレス付けの、必要性は、無いのですが、イーサーネットを開発した当時は、当然、TCP/IP を予想できなかったわけです。
◆  LEN : 長さ   データ(次の Data + Pad)の長さです。
◆  Data + Pad : データ部長さ   データの長さですが、実データが、46 バイトに満たないときは、Pad 付け加えて、46 バイトにします。
◆  FCS : フレームチェックシーケンス   伝送誤り制御用のチェックコードで、4 バイトです。HDLCフレーム検査シーケンス(2 バイト)と比べて、チェックコードの長さが、長くなっています。
イーサーネットでは、パケットの衝突によって、データの内容が破壊されます。衝突によって、データが破壊されたときに、その破壊されたデータを、チェックしたら、チェック OK になるという、誤り見逃しを避けるために、チェックコードを強化している、と考えられます。
◆  バス形のイーサーネットでは、パケットの衝突があるので、CSMA/CD を行っていることも、特徴の一つです。

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