著書の紹介

パソコンで学ぶ 自動制御の応用学

〜モータ制御からアドバンスト制御までを実験する〜



本の表紙



A5判 290ページ
発行日 1992年1月(初版)
著者 宮崎誠一、宮崎仁
発行所 CQ出版




内容の紹介

● この本はフィードバック制御に関する実用書です。フィードバック制御について、すでに入門的な知識を持つ読者を対象としています。

● なお、フィードバック制御に関する予備知識のない読者や、フィードバック制御の基礎について一通りまとめをしておきたい読者は、この本の姉妹編のパソコンで学ぶ自動制御の実用学を読んでおくことをお勧めします。パソコンで学ぶ自動制御の実用学は、PID制御を中心としたフィードバック制御の入門書の役割を持ちます。

● 単純なPID制御より高度な制御をアドバンスト制御といいます。アドバンスト制御によって、PIDよりも良い制御成績を得ることができます。この本は、PID制御を基本とし、それを発展させたアドバンスト制御について解説します。
● アドバンスト制御の多くは、原理的にはアナログ制御でも実現可能です。比較的単純なアドバンスト制御は、アドバンスト制御用のアナログ・コントローラが発売されており、それらを利用して実現できます。しかし、多くは経済的な理由によって、ディジタル制御が使用されています。
● ディジタル制御はさまざまな目的で利用されています。制御成績の向上を目的としてディジタル制御を利用する場合は、単純なPID制御では不充分で、アドバンスト制御が必要です。
● 最近では、新しい制御理論(現代制御、ファジィ制御)に基づいた制御も広く使用されるようになっています。しかし、この本ではこれらの新しい制御については簡単に紹介する程度にとどめます。

● この本は、豊富な実験例による解説が特徴です。また、実例としてモータの制御に多くの紙面を割いています。しかし、モータ以外の制御の実例はあまり多く取り上げていません。
● プロセス制御の実例については、別の著書であるプロセス計装におけるディジタル制御系の設計と改善(工業技術社)をご覧ください。

目   次

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内   容

第1部 プロローグ

● アドバンスト制御の解説に入る前の、前置きの部分です。

第1章 フィードバック制御のあらまし
PID制御を中心としたフィードバック制御の基礎について、概要をまとめてあります。

第2章 モータの制御 〜制御対象の特性解析
フィードバック制御、とくにPID制御は、制御対象の特性がよくわからなくても、それなりの制御成績を得られることが特徴です。しかし、アドバンスト制御では、制御対象の特性を具体的に把握する必要性が多くなります。
制御対象の特性は、実験的に求める方法と、解析的に計算によって求める方法とがあります。この章では、DCモータを例にとって、制御対象の特性を解析的に求める手法を示します。


第2部 アドバンスト制御

● この本の中心部分です。
アドバンスト制御には、単純なPID制御を少しモディファイした程度のものから、きわめて高度なものまで、ピンからキリまであります。
代表的なアドバンスト制御について、簡単なものから順に解説します。

第3章 PID制御の変形と非線形要素の追加
PID制御を若干変形した程度のアドバンスト制御を示します。
この分類の中に、非線形要素の付加も含まれます。非線形要素の付加は、一般にPID制御を補助する程度のものが多く用いられます。

第4章 線形要素の追加とサンプリングPI制御
PID制御に線形要素を付け加えた制御です。線形要素の付加は各種あります。分類上、第5章の複合制御との境界は明確ではありません。
また、線形要素の付加とは異なりますが、サンプリングPI制御についても便宜上この章で説明しています。

第5章 複合制御/カスケード制御とモータのアドバンスト制御
本格的なアドバンスト制御の代表が複合制御です。複合制御は、一つの制御目的に対して、複数のコントローラを組合わせることによって、制御成績を向上させます。
複合制御の代表的な方式の一つがカスケード制御です。カスケード制御はアナログ制御でも多く利用されてきました。

第6章 フィードフォワード制御
フィードフォワード制御は、フィードバック制御とは別の制御方式です。フィードバック制御とは対照的な特徴、欠点を持っています。
フィードフォワード制御は、その欠点から、単独で用いられることは余りありません。しかし、フィードバック制御と複合させることによって、優れた制御方式となります。良好な制御成績を得るためには、制御対象の特性を把握することが必要です。

第7章 制御対象の多変数性
第6章までは、制御変数は一つであるとして話を進めてきました。しかし、一般に制御対象は多変数系です。一つの制御対象システムにおいて、複数の変数を同時に制御したい場合があります。
このような場合には、変数間の干渉によって、単一の制御では考えられない複雑な現象が生じ、制御がうまく行かないことがあります。この問題を取り上げて、解説します。

第8章 多変数制御の実際
多変数系の制御の実際を示します。多変数制御の代表例が非干渉制御です。非干渉制御を中心に説明します。


第3部 新しい制御技術

● この本は、従来から多く使用されている制御理論の範囲でアドバンスト制御を解説しています。
しかし、より良い制御成績を求めて、新しい制御理論に基づいた制御方式も利用されるようになってきました。
これらの新しい制御方式について、概要を簡単に紹介します。

第9章 現代制御理論による制御
第7章に示したように、制御対象は一般に多変数のシステムです。多変数システムで多変数の制御を行う場合、従来の制御技術でも取り扱うことはできます。
しかし、現代制御理論を応用することによって、より汎用性が高い取り扱いができ、より高度な制御を行うことができます。

第10章 ファジィ制御
ファジィとはあいまいのことです。あいまいさを定量化することによって、あいまいな現象を数学的に取り扱おうというのがファジィ理論です。このファジィ理論を制御に応用したものを、ファジィ制御といいます。
熟練した人間が手動で制御を行う方が、従来の制御方式による自動制御よりも、優れた制御を行うことができます。この手動制御は、一般に非線形の制御です。ファジィ制御は、非線形な制御を行うのに適した制御方式であり、熟練した人間の手動制御に近い自動制御を行うことができます。




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